メトトレキサート(MTX)が無効の関節リウマチ患者の治療では、MTXとの併用における各種の生物学的製剤の有益性および有害性の差はわずかであり、長期的な直接比較試験がないことが分析を困難にしていることが、ドイツ・医療品質・効率性研究機構(IQWiG)のKirsten Janke氏らの検討で示された。関節リウマチの疾患活動性のコントロールについては、メタ解析で、MTX単剤に比べほとんどの生物学的製剤とMTXの併用療法が優れることが示されているが、各生物学的製剤の相対的な有益性および有害性については議論が続いている。この主題に関する既報のネットワークメタ解析では、患者集団の異質性や、主要なアウトカム(臨床的寛解、低疾患活動性など)の定義が最新でないなどの問題があり、結論には至っていないという。BMJ誌2020年7月7日号掲載の報告。
個々の患者データの再解析の総計結果を含むネットワークメタ解析
研究グループは、十分な類似性のある患者集団において、主要なアウトカムの現在の定義に基づいて、関節リウマチの治療における生物学的製剤の有用性を比較する目的で、系統的レビューを行い、再解析された個々の患者データの総計結果を含むネットワークメタ解析を行った(IQWiGの助成による)。
データの収集には、2017年までに実施された研究の治験総括報告書と、研究スポンサーから提供された関節リウマチの主なアウトカムに関する個々の患者データの再解析から得られた総計結果、および2017年2月までに発足したデータベースとレジストリーが使用された。
解析には、試験期間が24週間以上で、MTXが無効となった後、MTXとの併用で生物学的製剤による治療を受けた成人(年齢18歳以上)の関節リウマチ患者を対象とし、患者関連アウトカムを評価した無作為化対照比較試験が含まれた。
各併用療法間で、有意差のあるアウトカムはほとんどない
MTX治療の失敗後に生物学的製剤とMTXの併用療法が行われた45件の研究が同定された。治験総括報告書と、個々の患者データの再解析の総計結果データを統合することで、ネットワークメタ解析において十分な類似性のある患者集団と、均質な研究結果をもたらす広範な解析が可能となった。
解析には、8つの生物学的製剤(アバタセプト、アダリムマブ、anakinra、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、トシリズマブ)とMTXの併用に関する35件の研究が含まれた。
これらの解析では、各併用療法間に、アウトカムに関して統計学的に有意な差はほとんど示されなかった。たとえば、anakinraは他の7つの製剤に比べ、臨床的寛解(臨床的疾患活動性指標[CDAI]≦2.8)や低疾患活動性(CDAI≦10)に関する有益性が少なく、セルトリズマブペゴルは他の7つの製剤に比し、重篤な有害事象や感染症に関する有害性が大きかった。
また、いくつかのアウトカムは、95%信頼区間(CI)がきわめて広く、これは8つの生物学的製剤間に未確認の差が存在することを示唆している可能性があるが、低疾患活動性や重篤な有害事象、感染症については、95%CIの広さはさほど顕著ではなかった。
さらに、直接比較試験がないため、結果は主に間接比較と限られた数の研究に基づいており、最近、承認されたヤヌスキナーゼ阻害薬を解析に含めることはできなかった。
著者は、「長期的な直接比較が行われていないことが、分析の妨げとなっていた」とし、「個々の患者データの再解析によって重要な情報が増加したことから、個々の患者データを日常的に活用できようにすることが求められる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)