合併症のない小児虫垂炎において、抗菌薬療法のみの非外科的治療戦略の初回治療成功率は67.1%であり、外科的治療戦略と比較して、1年後の障害日数は統計学的に有意に少なかったことが、米国・オハイオ州立大学医学校のPeter C. Minneci氏らによる検討の結果、示された。ただし、フォローアップの完遂率が75%と低く、許容可能な非外科的手術成功率は、事前規定の閾値との比較では統計学的に有意ではなく、仮定した障害日数の群間差には未到達であったという。現在、小児および青少年の虫垂炎の大半は外科的治療で行われているが、研究グループは、抗菌薬療法のみの非外科的治療は、患児および家族への悪影響を少なく治療できる可能性があり、患児と家族に好まれるのではないかとして本検討を行った。JAMA誌オンライン版2020年7月27日号掲載の報告。
1年時点で、障害日数と抗菌薬療法群の成功率を評価
合併症のない小児虫垂炎における、非外科的治療の成功率を明らかにし、非外科的治療群と外科的治療群間の治療関連の障害、満足度、健康関連QOLおよび合併症の差を比較する検討は、多施設非無作為化対照介入試験にて行われた。
被験者は2015年5月~2018年10月に、合併症のない虫垂炎を呈し米国7州の3次小児病院10施設で治療を受け、1年間の追跡(最終2019年10月)を受けた7~17歳の小児であった。
対象患児と家族による選択で、抗菌薬療法のみの非外科的治療(抗菌薬療法群)、または入院12時間以内の腹腔鏡下虫垂切除術(手術群)のいずれかを受けてもらい追跡評価した。
主要アウトカムは2つで、1年時点で評価した障害日数(虫垂炎関連の二次的ケアのためにすべての通常の活動に参加できなかった全日数で定義[予想した差異は5日間])と、抗菌薬療法群の成功率(初回抗菌薬療法のみで1年時点まで虫垂切除術を受けなかった患者の割合と定義[最低許容成功率70%以上])であった。逆確率治療重み付け(IPTW)法を用いて、すべてのアウトカム評価の治療群間差を補正した。
抗菌薬療法群の障害日数の平均群間差は-4.3日、成功率は67.1%
1,209例が試験適格のスクリーニングを受け、1,068例(年齢中央値12.4歳、女児38%)
が試験に登録され、370例(35%)が抗菌薬療法を選択、698例(65%)が手術を選択した。
フォローアップ完遂は全体で806例(75%)、抗菌薬療法群は284例(77%)、手術群は522例(75%)であった。抗菌薬療法群のほうが患児の年齢が低く(年齢中央値12.3歳vs.12.5歳)、黒人(9.6% vs.4.9%)やその他の人種(14.6% vs.8.7%)が多く、学士号を有する保護者の割合が高く(29.8% vs.23.5%)、超音波診断を受けた割合が高かった(79.7% vs.74.5%)。
IPTW後、1年時点の抗菌薬療法群の成功率は67.1%(96%信頼区間[CI]:61.5~72.3、p=0.86)であり、手術群と比較して1年時点の障害日数は統計学的に有意に短縮した(補正後平均日数:6.6日vs.10.9日、平均群間差:-4.3日[99%CI:-6.17~-2.43、p<0.001])。
事前規定のその他16項目の副次エンドポイントのうち、10項目について有意差は示されなかった。
(ケアネット)