新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者の院内心停止の発生は、とくに高齢者で頻度が高く、心肺蘇生(CPR)後の生存率は不良であることを、米国・ミシガン大学のSalim S. Hayek氏らが、米国68病院のICUに入室した5,000例超のCOVID-19重症患者を対象に行ったコホート試験で明らかにした。院内心停止を呈したCOVID-19重症患者は転帰不良であるとの事例報告により、同患者集団へのCPRは無益ではないかとの議論が持ち上がっている。このため研究グループは速やかにデータを集める必要があるとして本検討を行った。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。
18歳以上の重症患者5,019例についてコホート試験
研究グループは、地理的に多様な米国68病院のICUで、COVID-19が検査で確認された18歳以上の重症患者5,019例を対象に、多施設共同コホート試験を行った。
主要アウトカムは、ICUへの入室14日以内の院内心停止発生率と院内死亡率だった。
CPR後の生存退院率、45歳未満21%、80歳以上2.9%
COVID-19重症患者5,019例において、院内心停止の発生率は14.0%(701例)で、そのうちCPRが施行されたのは57.1%(400例)だった。
院内心停止発生患者は非発生患者と比べて、高齢(平均年齢63歳[標準偏差:14]vs.非発生患者60歳[15])で、併存疾患が多く、どちらかというとICU病床数が少ない病院に入院していた。
CPR施行患者は非施行患者と比べて、年齢が若かった(平均年齢は61歳[標準偏差:14] vs.67歳[14])。心肺蘇生時に最も多かった心リズムは、無脈性電気活動(PEA)が49.8%、心静止が23.8%だった。
CPR施行患者のうち、生存退院した患者は12.0%(48例)で、退院時の神経学的状態が正常または軽度障害だった割合は7.0%(28例)だった。
CPR施行患者の生存退院率は年齢により異なり、45歳未満では21.2%(11/52例)だったのに対し、80歳以上では2.9%(1/34例)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)