DPP-4阻害薬シタグリプチンをタクロリムスおよびシロリムスと併用することにより、骨髄破壊的同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後100日目までのGradeII~IVの急性移植片対宿主病(GVHD)の発生が減少することが明らかとなった。米国・インディアナ大学のSherif S. Farag氏らが、医師主導の非無作為化第II相臨床試験の結果を報告した。DPP-4はT細胞に発現する膜貫通型受容体で、CD26としても知られ、T細胞活性化における共刺激分子としての役割を有している。マウスモデルでは、CD26の発現低下によりGVHDが予防され移植片対腫瘍効果が維持されることが示されているが、シタグリプチンによるDPP-4阻害により、allo-HSCT後の急性GVHDが予防されるかどうかは不明であった。NEJM誌2021年1月7日号掲載の報告。
タクロリムス+シロリムスに、シタグリプチンを移植前日から2週間併用
研究グループは、18~60歳で急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群(国際予後判定システム改訂版でスコアが3以上)または慢性骨髄性白血病(2レジメン以上のチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性など)の患者を対象に、骨髄破壊的前処置療法後に末梢血幹細胞移植を行った。急性GVHDの予防として、移植3日前よりタクロリムス(0.02mg/kg/日)およびシロリムス(4mg/日)の投与を開始し、GVHDを認めない場合は100日目より漸減し約180日で中止した。また、シタグリプチン(12時間ごとに600mgを経口投与)を移植前日から移植後14日目まで投与した。
主要評価項目は、移植後100日目までのGradeII~IVの急性GVHDの発生であった。登録期間は2016年1月~2018年11月で、2019年10月1日まで追跡調査を行った。
移植後100日目までのGradeII~IV急性GVHD発生率は5%
評価対象症例は36例(年齢中央値46歳、範囲20~59歳)で、血縁者または非血縁者ドナーから移植を受けた。
移植後100日目までに急性GVHDの発生を認めたのは、36例中2例であった。GradeII~IVのGVHD発生率は5%(95%信頼区間[CI]:1~16)、GradeIIIまたはIVのGVHD発生率は3%(95%CI:0~12)であった。
1年非再発死亡は認められなかった。再発の1年累積発生率は26%(95%CI:13~41)、慢性GVHDの1年累積発生率は37%(95%CI:22~53)であり、1年無GVHD/再発生存率は46%(95%CI:29~62)であった。
有害事象については、allo-HSCTを受けている患者にみられるものと同様であった。
(ケアネット)