非コンセンサスTIAの脳卒中リスクは典型症例と同等/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/18

 

 一過性神経症状のうち典型的な症状(運動麻痺、失語症、片側視野欠損、単眼視力低下)を伴う一過性脳虚血発作(TIA)ではなく、単独の複視、構音障害、めまいや運動失調、感覚消失、両眼視力低下といった「非コンセンサス」TIAの発症も、その後の短期・長期の脳卒中リスクが典型的TIAと同等に高いことが明らかにされた。10年主要血管イベントリスクについても同等だった。英国・オックスフォード大学のMaria A. Tuna氏らが、人口9万人超のコミュニティーを対象に前向きコホート試験を行い明らかにした。TIAの診断は困難を伴い、非コンセンサスの症状については、調査や治療に大きなばらつきがあった。結果を踏まえて著者は「非コンセンサスTIAを明確に脳血管イベントとすることで、全体的にTIA診断率はおよそ5割増しになるだろう」と述べている。Lancet誌2021年3月6日号掲載の報告。

軽度虚血性脳卒中、典型的TIA、非コンセンサスTIAに分け追跡

 研究グループは2002年4月1日~2018年3月31日に、英国オックスフォードシャーの住民(9万2,728人、年齢問わず)で一過性神経症状を呈し、プライマリケア診療所、またはJohn Radcliffe病院で診察を受けた患者を対象に前向きコホート試験を行った。
 対象患者は、軽度虚血性脳卒中(NIHSS<5)、典型的TIA、非コンセンサスTIAに分類され、2次予防を目的としたガイドラインに沿った治療を受けた。

 脳卒中リスク(7日、90日、10年リスク)と、すべての主要血管イベントリスク(初回イベントからの期間、医師の診察を受けた時からの期間)を対面による追跡で判定し、試験対象集団における年齢・性別の脳卒中罹患率に基づく予測リスクと比較した。

90日脳卒中リスク、典型的TIA群11.6%、非コンセンサスTIA群10.6%

 対象患者は2,878例で、うち軽度虚血性脳卒中は1,287例、典型的TIAは1,021例、非コンセンサスTIAは570例だった。追跡は、2018年10月1日まで行われた(追跡期間中央値5.2[IQR:2.6~9.2]年)。

 1万7,009人年の追跡期間中、初回の脳卒中再発は577件発生した。

 非コンセンサスTIA群の90日脳卒中発症リスクは、典型的TIA群と同等だった(10.6%[95%信頼区間[CI]:7.8~12.9]vs.11.6%[9.6~13.6]、ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.64~1.19、p=0.43)。また、非コンセンサスTIA群の90日脳卒中発症率は、一過性黒内障発症後の同発症率(4.3%[95%CI:0.6~8.0])より高率だった(p=0.042)。

 一方で、症状発症時点で医療サービスを受けた患者の割合は、典型的TIA群は75%(768/1,021例)だったのに対し、非コンセンサスTIA群は59%(336/570例)と低率だった(オッズ比[OR]:0.47、95%CI:0.38~0.59、p<0.0001)。医療サービスを受ける前に脳卒中再発が起こる割合も、典型的TIA群5%(47/1,021例)に対し非コンセンサスTIA群8%(45/570例)と増大する傾向がみられた(OR:1.77、95%CI:1.16~2.71、p=0.007)。

 これらの再発脳卒中を除外後、非コンセンサスTIA群の受診後の7日脳卒中リスク(発症率2.9%、95%CI:1.5~4.3)も、予測リスクと比べてきわめて高かった(相対リスク[RR]:203、95%CI:113~334)。とくに、発症当日に受診した患者で高かった(発症率5.0%[95%CI:2.1~7.9]、RR:300[137~569])。

 10年主要血管イベント発生リスクも、非コンセンサスTIA群と典型的TIA群で同等だった(27.1%[95%CI:22.8~31.4]vs.30.9%[27.2~33.7]、p=0.12)。

 心房細動、卵円孔開存、および動脈狭窄のベースライン有病率も、非コンセンサスTIA群と典型的TIA群で同等だったが、後方循環狭窄は非コンセンサスTIA群で頻度が高かった(OR:2.21、95%CI:1.59~3.08、p<0.0001)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 森本 悟( もりもと さとる ) 氏

慶應義塾大学医学部生理学教室 特任講師

東京都健康長寿医療センター 脳神経内科

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