寒冷凝集素症患者において、sutimlimabの投与によって古典的補体経路の活性化が選択的に上流で阻害され、速やかに溶血が停止し、ヘモグロビン値が上昇し、疲労が改善したことが示された。ドイツ・デュイスブルク・エッセン大学のAlexander Roth氏らが、sutimlimab静脈内投与の有効性および安全性を評価した26週間の多施設共同非盲検単群試験「CARDINAL試験」の結果を報告した。寒冷凝集素症は、古典的補体経路の活性化により引き起こされる溶血を特徴とする、まれな自己免疫性溶血性貧血で、現在、承認されている治療薬はない。sutimlimabは、活性化経路の第1段階にあるC1複合体に含まれるセリンプロテアーゼを標的としたヒト化モノクローナル抗体である。NEJM誌2021年4月8日号掲載の報告。
sutimlimabの有効性/安全性を26週間で評価
研究グループは、最近の輸血歴を有する特発性寒冷凝集素症患者を対象に、ベースラインの体重が75kg未満の患者にはsutimlimab 6.5gを、75kg以上の患者には7.5gを、0日目(治療初日)および7日目、以降は2週ごとに26週間静脈内投与した。
主要評価項目は、第5週から第26週まで輸血が不要、またはプロトコールで禁止されている他の寒冷凝集素症関連治療を受けることなく、ヘモグロビン値がベースラインから2g/dL以上増加(23週、25週および26週時の平均)または12g/dL以上まで増加した患者の割合とした。
sutimlimabは寒冷凝集素症に有効、軽度~中等度の有害事象あり
24例が登録され、全例少なくとも1回のsutimlimab投与を受けた。
24例中13例(54%)が主要評価項目を達成した。治療評価時(23週、25週および26週時)におけるヘモグロビン値のベースラインからの増加の最小二乗平均値は2.6g/dLであった。平均ヘモグロビン値は、3週目から試験終了時点まで11g/dL超が維持された。平均ビリルビン値は3週目までに正常化した。
また、17例(71%)が、5週から26週目まで輸血を受けなかった。1週目には疲労の改善(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy[FACIT]-Fatigue Scale 25による評価で、臨床的に意味のある改善:ベースラインからスコアが3~7ポイント増加)が認められ、試験期間中維持された。
機能アッセイの結果、古典的補体経路の活性は速やかに阻害されたことが示され、ヘモグロビン値上昇、ビリルビン値低下、疲労の改善は、古典的補体経路の阻害と一致した。
なお、投与期間中に有害事象は22例(92%)に発現した。7例(29%)で重篤な有害事象が確認されたが、治験責任医師によりsutimlimabとの関連は否定された。髄膜炎菌感染症の報告はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)