中等症~重症のアトピー性皮膚炎の治療において、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブと副腎皮質ステロイド外用薬の併用は、プラセボと同外用薬の併用と比較して忍容性および有効性が優れ、ベネフィット・リスクのプロファイルが良好であることが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが実施した「AD Up試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月20日号で報告された。
22ヵ国171施設のプラセボ対照無作為化試験
本研究は、日本を含む22ヵ国171施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2018年8月~2019年12月の期間に参加者の無作為化が行われた(米国・AbbVieの助成による)。
対象は、発症から3年以上が経過し、Hanifin/Rajka基準で診断された中等症~重症の慢性アトピー性皮膚炎の成人(18~75歳)および青少年(12~17歳)であった。中等症~重症は、アトピー性皮膚炎が体表面積の≧10%、湿疹面積・重症度指数(EASI)のスコアが≧16点、担当医によるアトピー性皮膚炎の全般的な重症度の総合評価(vIGA-AD)のスコアが≧3点、最悪のかゆみの数値評価尺度(WP-NRS)のスコアが週平均値で≧4点と定義された。
被験者は、ウパダシチニブ15mg、同30mgまたはプラセボを1日1回経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。全例が、副腎皮質ステロイド外用薬を使用した。投与期間は16週であった。担当医、試験施設職員、患者には、試験薬の割り付け情報が知らされなかった。
主要複合エンドポイントは、16週の時点におけるEASIスコアのベースラインから75%以上の低下(EASI-75)を達成した患者の割合と、vIGA-ADの奏効(スコア0[消失]または1[ほぼ消失]かつベースラインから2点以上の改善)を達成した患者の割合とされた。
EASI-75達成:65%、77%、26%、vIGA-AD奏効達成:40%、59%、11%
901例(成人785例、青少年116例)が登録され、ウパダシチニブ15mg群に300例(平均年齢32.5歳[範囲13~74]、18歳未満13%、男性60%)、同30mg群に297例(35.5歳[12~72]、12%、64%)、プラセボ群には304例(34.3歳[12~75]、13%、59%)が割り付けられた。
16週時に、EASI-75を達成した患者の割合は、15mg群が65%(194/300例)、30mg群は77%(229/297例)であり、プラセボ群の26%(80/304例)との補正済み群間差は、15mg群で38.1%(95%信頼区間[CI]:30.8~45.4)、30mg群では50.6%(43.8~57.4)と、双方の用量とも有意に改善した(いずれもp<0.0001)。
また、16週時に、vIGA-AD奏効を達成した患者の割合は、15mg群が40%(119例)、30mg群は59%(174例)であり、プラセボ群の11%(33例)との補正済み群間差は、それぞれ28.5%(95%CI:22.1~34.9)および47.6%(41.1~54.0)と、2つの用量とも有意な改善が認められた(いずれもp<0.0001)。
青少年の集団における有効性は、全集団で観察されたものと一致していた。
二重盲検期におけるウパダシチニブの2つの用量と副腎皮質ステロイド外用薬との併用は、いずれも良好な忍容性を示した。全体で最も頻度の高い治療関連有害事象は、ざ瘡、鼻咽頭炎、上気道感染症、口唇ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ値上昇、頭痛、アトピー性皮膚炎であった。
ざ瘡は、15mg群(10%)および30mg群(14%)が、プラセボ群(2%)に比べて多かった。また、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(15mg群:1%、30mg群:1%、プラセボ群:2%)および重篤な有害事象(2%、1%、3%)の発生は、3群で同程度であった。死亡例の報告はなかった。
著者は、「これらのデータは、15mgと30mgの双方とも、ベネフィット・リスクのプロファイルが良好であることを示している。2つの用量で統計学的な比較は行われなかったが、すべての重要なエンドポイントについて、30mgは15mgよりも、奏効例の数が一貫して上回っていた」としている。
(医学ライター 菅野 守)