院外心停止患者に対する低体温療法の、至適施行時間を検討する国際多施設共同無作為化試験が、デンマーク・オーフス大学病院のHans Kirkegaard氏らにより行われた。国際的な蘇生ガイドラインで推奨される標準の24時間と、より長時間の48時間施行を比較した結果、長時間の施行としても6ヵ月後の神経学的アウトカムは、改善を示したが有意差は認められなかった。しかしながら結果について著者は、「本試験は、臨床的に意味のある差の検出能に限界があり、さらなる検討を行うことが是認される結果であったと思われる」と述べている。JAMA誌2017年7月25日号掲載の報告。
6ヵ国10ヵ所のICUで無作為化優越性試験
国際的な蘇生ガイドラインが推奨する院外心停止・意識消失患者への低体温療法は、摂氏33~36度で少なくとも24時間施行するとされているが、至適施行時間は不明である。研究グループは、33度48時間の施行で、現行推奨されている標準時間の24時間施行と比べ、神経学的アウトカムがより良好になるかを調べた。
検討は、欧州6ヵ国にわたる大学病院10施設の集中治療室(ICU)10ヵ所において、並行群プラグマティックに行われた優越性試験。研究者主導でアウトカム評価者は盲検化がなされた。2013年2月16日~2016年6月1日に907例を登録後、試験適格であった355例の成人患者が、低体温療法(33±1度)48時間施行群(176例)または24時間施行群(179例)に無作為に割り付けられた。施行後は両群とも0.5度/時ずつ37度まで復温した。
主要アウトカムは良好な6ヵ月神経学的アウトカムとし、Cerebral Performance Categories(CPC)スコア1または2で定義した。副次アウトカムは、6ヵ月死亡率、死亡までの期間、有害事象の発生、ICUリソース使用であった。最終フォローアップは2016年12月27日。無作為化を受けた355例(平均年齢60歳、男性295例[83%])のうち、試験を完遂したのは351例(99%)であった。
48時間としても改善の有意差は示されなかったが試験結果は限定的
6ヵ月神経学的アウトカムが良好であったのは、48時間群69%(120/175例)、24時間群64%(112/176例)であった(差:4.9%、95%信頼区間[CI]:-5~14.8%、相対リスク[RR]:1.08、95%CI:0.93~1.25、p=0.33)。
6ヵ月死亡率は、48時間群27%(48/175例)、24時間群34%(60/177例)(差:-6.5%、95%CI:-16.1~3.1%、RR:0.81、95%CI:0.59~1.11、p=0.19)。死亡までの期間について両群間で有意な差はなかった(ハザード比:0.79、95%CI:0.54~1.15、p=0.22)。
有害事象は、48時間群(97%)が24時間群(91%)よりも頻度が高かった(差:5.6%、95%CI:0.6~10.6%、RR:1.06、95%CI:1.01~1.12、p=0.04)。
ICUの滞在期間は、48時間群が24時間群よりも有意に長かったが(中央値151 vs.117時間、p<0.001)、入院期間は、24時間群のほうが長かった(11 vs.12日、p=0.50)。
なお試験の限界の1つとして著者は、主要アウトカムの6ヵ月神経学的アウトカムに関する群間の絶対差を事前に15%と設定したことを挙げている。今回の試験結果で示された95%CI値から、15%の差がつく可能性は低く、群間差の5%超値には臨床的に意味のある可能性があると指摘。ただし、それには約3,000例の大規模試験規模の実施が必要だとしている。また、ICU入室時の脳幹反射の有無についてなど重要データが施設間でばらついていた可能性があり、CPCスコア1または2を良好とした評価指標についても厳格さに乏しく、介入の潜在的効果について結論付けができないと述べている。