透析治療を受けている貧血を有する慢性腎臓病(CKD)患者において、ダプロデュスタットは赤血球造血刺激因子薬(ESA)と比較し、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、非劣性であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAjay K. Singh氏らが実施した、無作為化非盲検第III相試験「ASCEND-D試験」で示された。CKD患者において貧血治療として用いられる遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤およびその誘導体は、脳卒中、心筋梗塞などの有害事象のリスクを高める可能性があるが、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬)はヘモグロビン値の増加においてESAと同等の効果があることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2021年11月5日号掲載の報告。
ヘモグロビン変化と初回MACE発生を評価
研究グループは、90日以上透析を受けているCKD患者で、ESAを6週間以上投与され、ヘモグロビン値が8.0~11.5g/dLの患者を、ダプロデュスタット群またはESA群(血液透析患者はエポエチン アルファ、腹膜透析患者はダルベポエチン アルファ)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。
主要評価項目は、ベースラインから主要評価期間(28週~52週)までの、ヘモグロビン値の平均変化量(非劣性マージン:-0.75g/dL)、および主要心血管イベント(MACE:全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生(非劣性マージン:1.25)であった。
主要評価項目についてESAに対する非劣性を確認
2016年11月23日~2018年8月10日に、35ヵ国431施設で計2,964例が無作為化された(ダプロデュスタット群1,487例、ESA群1,477例)。ベースラインのヘモグロビン値(平均±SD)は、全体で10.4±1.0g/dLであった。
ベースラインから28週~52週までのヘモグロビン値の平均変化量(平均±SE)は、ダプロデュスタット群0.28±0.02g/dL、ESA群0.10±0.02g/dLであり、群間差0.18g/dL(95%信頼区間[CI]:0.12~0.24)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。
追跡期間中央値2.5年において、初回MACEはダプロデュスタット群で374/1,487例(25.2%)、ESA群で394/1,477例(26.7%)に発生し、ハザード比は0.93(95%CI:0.81~1.07)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージンを満たした。
他の有害事象の発現頻度は、両群で類似していた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)