日本人重症脳梗塞、血管内治療+薬物療法は薬物療法単独より有益/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/02/17

 

 日本で行われた試験で、主幹動脈閉塞を伴う梗塞が大きい患者に対する血管内治療と薬物療法の併用は薬物療法のみに比べ、90日アウトカムが良好であり、修正Rankinスケールスコア0~3の患者の割合が約2.4倍に上ることが示された。頭蓋内出血の発生率は、血管内治療併用群で高率だった。兵庫医科大学の吉村 紳一氏らが、国内203例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。急性虚血性脳卒中に対する血管内治療は、梗塞が大きい場合は一般的に回避されるが、これまで薬物療法単独と比較した血管内治療の効果について、十分な検討は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2022年2月9日号掲載の報告。

ASPECTS評価で3~5の患者を対象に試験

 吉村氏らは、主幹動脈閉塞があり、画像上かなり大きな脳卒中が認められる、ASPECTS(Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score)評価で3~5の患者を対象に、日本国内で多施設共同非盲検無作為化比較試験を行った。

 被験者を無作為に2群に分け、症状が認められてから6時間以内またはFLAIR画像で早期の変化が認められない場合には24時間以内に、一方の群には血管内治療と薬物治療を(血管内治療群)、もう一方の群には薬物治療のみを行った(対照群)。両群に対し、必要に応じてアルテプラーゼ(0.6mg/kg)を投与した。

 主要アウトカムは、90日後の修正Rankinスケールスコア0~3とした。副次アウトカムは、90日後の同スコア改善の大きさと、48時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの8ポイント以上の改善であった。

NIHSSスコア8ポイント以上改善、血管内治療群31%に対し対照群9%

 計203例の患者が無作為化を受けた(血管内治療群101例、対照群102例)。アルテプラーゼを投与した患者は両群ともに約27%だった。

 90日後の修正Rankinスケールスコア0~3の該当被験者割合は、血管内治療群31.0%、対照群12.7%だった(相対リスク:2.43、95%信頼区間[CI]:1.35~4.37、p=0.002)。

 スコア別にみた修正Rankinスケールスコアの改善は、全般的に血管内治療群のほうが良好だった。

 48時間後にNIHSSスコアの8ポイント以上改善が認められたのは、血管内治療群31.0%、対照群8.8%だった(相対リスク:3.51、95%CI:1.76~7.00)。あらゆる頭蓋内出血の発生は、それぞれ58.0%、31.4%に認められた(p<0.001)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 高梨 成彦( たかなし しげひこ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 脳神経外科医長