ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんは、PD-1阻害薬のみの治療で治癒する可能性が高いことが、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏らが行った、前向き第II相試験の結果、示された。局所進行直腸がんは、術前化学療法と放射線療法、その後の手術療法が標準治療となっているが、ミスマッチ修復機能欠損を有する局所進行直腸がんでは、標準的な化学療法では十分な奏効を得られないことが示されていた。一方で、転移を有する患者および治療抵抗性の患者における免疫チェックポイント阻害薬のみの客観的奏効率は33~55%と、第一選択薬として非常に有効であることが報告されており、研究グループはこれらの知見に基づき、PD-1阻害薬の単剤投与が、ミスマッチ修復機能欠損の局所進行直腸がんに有益であるとの仮説を立て、dostarlimabによる術前化学療法の奏効率を調べる試験を行った。NEJM誌オンライン版2022年6月5日号掲載の報告。
dostarlimabを単独投与しCRを評価
試験は、ミスマッチ修復機能欠損を有するStageIIまたはIIIの直腸腺がんの患者を対象とし、抗PD-1モノクローナル抗体dostarlimab単剤を3週ごと6ヵ月間(9サイクル)投与した。
患者は本治療後に、標準化学放射線療法と手術療法が行われたが、dostarlimab療法で臨床的完全奏効(cCR)を示した患者には、その後の治療は行われなかった。
主要評価項目は、dostarlimab療法後12ヵ月の持続的cCR、または化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab療法後の病理学的CR、および化学放射線療法の有無を問わないdostarlimab術前療法の全奏効(OR)であった。
治療完遂12例全例でCRを示し、フォローアップ25ヵ月時点で進行/再発例なし
計16例の患者が登録された。年齢中央値は54歳(範囲:26~78)、女性62%、臨床Stageは15例がIII、腫瘍StageはT3が9例(56%)、T4が3例(19%)で、腫瘍遺伝子変異量は37.9~103.0/Mb(平均60.0)と高値であった。
このうち12例がdostarlimab療法を完遂し、少なくとも6ヵ月時点のフォローアップを受けた。
全12例がCRを示し(100%、95%信頼区間[CI]:74~100)、MRI、
18F-FDG PET、内視鏡評価、直腸指診または生検で、腫瘍は認められなかった。
本報告時点で、化学放射線療法または手術を受けた患者はおらず、追跡期間中(範囲:6~25ヵ月)に進行または再発が報告された症例はなかった。
Grade3以上の有害事象の報告はなかった。
なお、今回の試験の結果を踏まえて著者は、「さらなる追跡を行い、奏効の期間を評価する必要がある」と述べている。
(ケアネット)