サル痘を疑う閾値を低くする必要も、多様な症状/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/08/19

 

 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのEloy Jose Tarin-Vicente氏らは、同国サル痘患者について臨床およびウイルス学的特性を明らかにする前向き観察コホート研究を行い、サル痘は性器、肛門周囲および口腔の病変と直腸炎や扁桃炎などの合併症を引き起こしており、病変部でウイルス量が多いことを示した。著者は、「症状はさまざまであり、臨床医はサル痘を疑う閾値を低くする必要がある」と述べている。また、「罹患者の性的接触歴や病変の分布から、現在起きている集団発生は濃厚接触が主要な感染経路と考えられる」とも報告した。サル痘は、2022年5月に欧州の複数の国で発症例が報告されて以降、急速に世界中に広がったが、初期の報告では非定型的な症状が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2022年8月8日号掲載の報告。

サル痘患者181例を前向きに観察、臨床・ウイルス学的特性を解析

 研究グループは、2022年5月11日~6月29日の期間に、スペインのマドリードおよびバルセロナにある性の健康クリニック3施設において、検査で確定診断されたサル痘患者を全例連続登録した。PCR検査のため病変部、肛門および中咽頭スワブを採取するとともに、皮膚科医または性感染症専門医が問診により患者データを収集し、標準的な症例報告書に記録した。

 評価項目は、人口統計学的事項、天然痘ワクチン接種歴、HIVの状況、他のサル痘患者との接触、旅行、大集団への参加、性感染症のリスク因子、性行動、初発の徴候と症状、複数の身体部位でのウイルス学的結果、他の性感染症の同時感染、および発症14日後の臨床アウトカムである。臨床アウトカムについては2022年7月13日まで追跡調査を実施した。

 サル痘と確定診断を受け、本研究に登録された患者は181例であった。

92%はMSM、潜伏期間中央値は7日、肛門性器部病変が78%などの特性が判明

 181例中166例(92%)がゲイ、バイセクシャル男性を含む男性同性間性的接触者(MSM)で、9例(5%)が異性愛の男性、6例(3%)が異性愛の女性であった。また、年齢中央値は37.0歳(IQR:31.0~42.0)で、32例(18%)は天然痘ワクチン接種歴があり、72例(40%)がHIV陽性、8例(11%)がCD4細胞数500個/μL未満、31例(17%)が他の性感染症の同時感染と診断された。

 サル痘の潜伏期間中央値は7.0日(IQR:5.0~10.0)であった。全例に皮膚病変があり、141例(78%)が肛門性器部、78例(43%)が口腔および口周囲部に確認された。70例(39%)で治療を要する合併症が確認され、直腸炎45例(25%)、扁桃炎19例(10%)、陰茎浮腫15例(8%)、膿瘍6例(3%)、発疹8例(4%)であった。

 皮膚病変部スワブ180検体のうち178検体(99%)が陽性であり、咽頭スワブ117検体中82検体(70%)も同様に陽性であった。PCRサイクル閾値(Ct値)(平均±SD)は皮膚病変検体群が23±4、咽頭検体群が32±6で、皮膚病変検体群のほうが有意に低く(群間絶対差:9、95%信頼区間[CI]:8~10、p<0.0001)、皮膚病変部でウイルス量が多いことが示された。

 MSMの166例中108例(65%)が肛門性交(アナルセックス)を報告し、肛門性交を行ったMSM群は肛門性交を行わなかったMSM群と比較し、直腸炎(38%[41/108例]vs.7%[4/58例]、群間絶対差:31%、95%CI:19~44、p<0.0001)、発疹前の全身症状(62%[67/108例]vs.28%[16/58例]、34%、28~62、p<0.0001)を高頻度に認めた。扁桃炎を有していた19例中18例(95%)が口腔性交(オーラルセックス)を行ったと報告した。

 病変発生から痂皮形成までの期間の中央値は10日(IQR:7~13)であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 寺田 教彦( てらだ のりひこ ) 氏

筑波大学 医学医療系 臨床医学域 感染症内科学 講師

筑波メディカルセンター病院臨床検査医学科/感染症内科