心不全のうっ血解除、アセタゾラミド追加で改善/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/09/21

 

 体液過剰を伴う急性非代償性心不全患者の治療において、標準化されたループ利尿薬療法に炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミドを追加すると、3日以内のうっ血解除(decongestion)の成功率が改善され、尿量やナトリウム利尿が増加して利尿効率が高くなり、有害事象の増加は認められないことが、ベルギー・Ziekenhuis Oost-LimburgのWilfried Mullens氏らが実施した「ADVOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号に掲載された。

ベルギーの医師主導無作為化プラセボ対照比較試験

 ADVOR試験は、ベルギーの27施設が参加した医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年11月~2022年1月の期間に患者のスクリーニングが行われた(Belgian Health Care Knowledge Centerの助成を受けた)。

 対象は、急性非代償性心不全で入院した成人で、少なくとも1つの体液過剰の臨床的徴候(浮腫、胸水、腹水)が認められ、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値>1,000pg/mLまたはB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値>250pg/mLの患者とされた。

 被験者は、標準化されたループ利尿薬の静脈内投与(経口維持量の2倍に相当)に加え、アセタゾラミドの静脈内投与(500mg、1日1回)を受ける群またはプラセボ投与群に無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、うっ血解除の成功とされた。その定義は、体液過剰のない状態であり、無作為化から3日以内に達成され、うっ血解除療法の増量の適応がない場合とされた。

入院期間も短縮、効果は退院時にも維持

 519例(平均[±SD]年齢78.2±8.9歳、男性62.6%、白人99.0%)が登録され、アセタゾラミド群に259例、プラセボ群に260例が割り付けられた。患者はすべて臨床的に重大なうっ血の状態で、NT-proBNP値中央値は6,173pg/mL(IQR:3,068~1万896)、うっ血スコア(0~10点[浮腫:0~4点、胸水:0~3点、腹水:0~3点の合計]、点数が高いほど病態が悪い)中央値は4点(IQR:3~6)だった。

 うっ血解除成功率は、アセタゾラミド群が42.2%(108/256例)と、プラセボ群の30.5%(79/259例)に比べ有意に優れた(リスク比:1.46、95%信頼区間[CI]:1.17~1.82、p<0.001)。アセタゾラミド群はプラセボ群に比し、3日間を通じてうっ血スコアの低下の程度がより顕著だった。また、生存退院時のうっ血解除成功率も、アセタゾラミド群で良好だった(78.8% vs.62.5%、リスク比:1.27、95%CI:1.13~1.43)。

 副次エンドポイントである3ヵ月以内の全死因死亡または心不全による再入院の複合は、アセタゾラミド群が29.7%(76/256例)、プラセボ群は27.8%(72/259例)で発生し、両群間に差はなかった(HR:1.07、95%CI:0.78~1.48)。一方、初回入院の期間の幾何平均は、アセタゾラミド群が8.8日(95%CI:8.0~9.5)、プラセボ群は9.9日(9.1~10.8)と、アセタゾラミド群で良好だった(群間差:0.89、95%CI:0.81~0.98)。

 無作為化から2日目の朝の平均(±SD)累積尿量は、アセタゾラミド群が4.6±1.7L、プラセボ群は4.1±1.8L(群間差:0.5L、95%CI:0.2~0.8)、平均(±SD)ナトリウム利尿はそれぞれ468±234mmolおよび369±231mmol(群間差:98mmol、95%CI:56~140)であり、いずれもアセタゾラミド群で多く、利尿効率が高かった。

 投与期間中に、重度の代謝性アシドーシスは両群とも発生しなかった。腎臓の安全性の複合エンドポイント(血清クレアチニン値のベースラインからの倍加、推算糸球体濾過量の持続的な50%以上の減少、初回入院中の腎代替療法)(アセタゾラミド群2.7% vs.プラセボ群0.8%、p=0.10)、低カリウム血症(5.5% vs.3.9%、p=0.39)、低血圧(6.6% vs.3.5%、p=0.11)の発生は両群で同程度であった。また、3ヵ月の追跡期間中の重篤な有害事象(48.0% vs.47.9%、p=1.00)、治療関連有害事象(3.1% vs.1.2%、p=0.14)、心血管系の有害事象(44.1% vs.47.1%、p=0.53)の発生はいずれも、両群で差はなかった。

 著者は、「うっ血の残存が有害なアウトカムと関連することを考慮すると、これらのアセタゾラミド治療の有益な効果は重要である。今回の知見は、うっ血を標的とする早期かつ積極的な治療の重要性を強調し、利尿反応の指標としてのナトリウム利尿を支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)