経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を受ける大動脈弁狭窄症患者において、脳塞栓保護デバイス(CEP)の使用は、周術期脳卒中の発生に有意な効果が認められなかったことが、米国・クリーブランドクリニックのSamir R. Kapadia氏らによる無作為化試験の結果、示された。ただし、95%信頼区間値の結果に着目して著者は、「TAVR中のCEPのベネフィットについて必ずしもルールアウトできない可能性も示唆された」と述べている。大動脈弁狭窄症治療のTAVRはデブリ等による塞栓の発生につながる可能性がある。CEPデバイスの使用でデブリを捕捉し脳卒中リスクを軽減する可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2022年9月17日号掲載の報告。
TAVR後72時間以内・退院前脳卒中発生についてITT解析
研究グループは、大動脈弁狭窄症の患者を無作為に2群に分け、一方にはCEPを用いた経大腿動脈TAVRを(CEP群)、もう一方にはCEPを用いない経大腿動脈TAVRを行った(対照群)。
主要エンドポイントは、TAVR後72時間以内または退院前(どちらか早いほう)の脳卒中発生で、ITT解析で評価した。後遺障害を伴う脳卒中、死亡、一過性脳虚血発作(TIA)、せん妄、CEPアクセス部位の重大/軽微な血管合併症、急性腎障害についても評価した。
ベースラインとTAVR後に、神経学専門医が全患者の診察を行った。
TAVR後脳卒中発生率、CEP群2.3%、対照群2.9%で有意差なし
北米、欧州、オーストラリアで計3,000例を対象に無作為化が行われた(CEP群1,501例、対照群1,499例)。CEPデバイスは、留置が試みられた1,489例中1,406例(94.4%)で成功した。
TAVR後72時間以内または退院前の脳卒中発生率は、CEP群2.3%、対照群2.9%で有意差はなかった(群間差:-0.6ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.7~0.5、p=0.30)。
後遺障害を伴う脳卒中の発生率は、CEP群0.5%、対照群1.3%だった(群間差:-0.8、95%CI:-1.5~-0.1)。死亡の発生率はそれぞれ0.5% vs.0.3%、脳卒中・TIAまたはせん妄のいずれかの発生率は3.1% vs.3.7%、急性腎障害は両群とも0.5%で、いずれも両群で有意差はなかった。
CEPアクセス部位の合併症の発生は1例(0.1%)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)