症候性骨盤臓器脱患者において、周術期の腟エストロゲン投与は、自家組織による経腟的修復術後の骨盤臓器脱再発を改善しない。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのDavid D. Rahn氏らが、米国の3施設で実施した無作為化優越性臨床試験の結果を報告した。膣尖部/前壁脱の外科的修復では、一般的に子宮摘出後の膣断端固定として自家組織の骨盤靭帯が用いられる。骨盤臓器脱の再発抑制を目的に臨床医は膣エストロゲンを推奨することがあるが、膣エストロゲンが骨盤臓器脱の外科的管理に及ぼす影響は不明であった。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。
膣エストロゲンクリームを術前5週以上、術後12ヵ月投与
研究グループは2016年12月~2020年2月に米国内3つの3次医療施設(テキサス州、アラバマ州、ロードアイランド州)で、症候性膣尖部または膣前壁脱を有し、自家組織を用いる経腟的修復術を希望する48歳以上の閉経後女性206例を登録し、膣エストロゲンクリーム1g(結合型エストロゲン0.625mg/g含有)群(膣エストロゲン群)またはプラセボクリーム群(プラセボ群)に1対1に無作為に割り付けた。手術前に毎晩2週間、その後は週2回、計5週間以上、腟内の塗布が行われた。患者は腟式子宮摘出術後(子宮がある場合)に、膣断端固定術(仙骨子宮靭帯固定術または仙棘靭帯固定術のいずれか)を受け、術後12ヵ月間、週2回の塗布を継続した。
主要アウトカムは、術後12ヵ月以内における修復失敗までの期間。修復失敗は次の3つのアウトカムのうち少なくとも1つによって定義した。(1)前壁または後壁が膣口を超える解剖学的/客観的脱出または膣尖部の膣長3分の1以上の下降、(2)自覚的な膣の膨隆感、(3)再手術。副次アウトカムは、排尿機能および性機能、泌尿生殖器萎縮の症状と兆候、有害事象であった。
術後12ヵ月以内の修復失敗率は膣エストロゲン19%、プラセボ9%
206例のうち、199例(平均[標準偏差]年齢65[6.7]歳)が無作為化され(膣エストロゲン群102例、プラセボ群97例)、186例が手術を受けた。
術後12ヵ月時の修復失敗率は、膣エストロゲン群19%(20例)、プラセボ群9%(10例)で(補正後ハザード比[HR]:1.97、95%信頼区間[CI]:0.92〜4.22)、主要アウトカムについて、膣エストロゲン群とプラセボ群で有意差は認められなかった。最も多く認められた修復失敗は、解剖学的/客観的脱出または膣尖部の下降であった。
手術当日における盲検下での外科医による膣組織の評価は、膣エストロゲン群で有意に良好であった。ベースラインで中等度以上の膣萎縮症状を有する患者集団(109例)では、12ヵ月後に膣エストロゲン群で膣萎縮スコアの有意な改善が認められた。
(ケアネット)