血友病A/Bのconcizumab予防投与、年間出血回数が大幅減/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/11

 

 concizumabは、組織因子経路インヒビター(TFPI)に対するモノクローナル抗体で、血友病の全病型で皮下投与の予防治療薬として検討が進められている。名古屋大学病院の松下 正氏ら「explorer7試験」の研究グループは、インヒビターを有する血友病AまたはBの患者において、concizumabの予防投与はこれを行わずに出血時補充療法(on-demand treatment)のみを行う場合と比較して、年間出血回数(ABR)が大きく減少し、長期的なアウトカムを改善する可能性があることを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌2023年8月31日号に掲載された。

4群の非盲検第IIIa相試験

 explorer7試験は、2つの無作為化群(グループ1、2)と2つの非無作為化群(グループ3、4)から成る非盲検第IIIa相試験である(Novo Nordiskの助成を受けた)。バイパス製剤による出血時補充療法を受けているインヒビターを有する血友病AまたはBの患者133例(血友病A患者80例、血友病B患者53例)を対象とした。

 このうち52例を、少なくとも24週間は出血の予防治療を行わず、出血時補充療法を継続する群(グループ1[非予防治療群]、19例)、またはconcizumabの予防投与を32週間以上行う群(グループ2、33例)に無作為に割り付けた。

 残りの81例のうち、21例はexplorer4試験でconcizumabの投与を受けていた患者(グループ3)で、60例はバイパス製剤の予防投与を受けている患者または出血時補充療法を受けている患者(グループ4)であり、いずれのグループにもconcizumabの予防投与を24週間以上行った。

 進行中の臨床試験でconcizumabの投与を受けていた3例(本試験の1例を含む)に非致死的血栓塞栓イベントが発生したため、投与を中断し、用法を変更して再開した(4週の時点でのconcizumabの血漿中濃度に基づき用量は調節可能)。

 主要エンドポイントは、治療の対象となった自然出血および外傷性出血のエピソードであり、グループ1とグループ2で比較した。

投与再開後に血栓塞栓イベントの報告はない

 主要エンドポイントの年間出血回数(ABR)の推定平均値は、グループ1の11.8回(95%信頼区間[CI]:7.0~19.9)と比較して、グループ2は1.7回(1.0~2.9)と有意に低かった(率比:0.14、95%CI:0.07~0.29、p<0.001)。また、concizumabの予防治療を受けた全患者(グループ2、3、4)のABRの中央値は0回だった。

 自然出血、関節出血、標的関節出血のABRも、グループ1に比べグループ2で低く、率比はいずれも主要エンドポイントとほぼ同様であった(率比:自然出血0.14[95%CI:0.06~0.30]、関節出血0.15[0.07~0.32]、標的関節出血0.12[0.02~0.84])。また、治療の対象となった出血と治療を必要としなかった出血を合わせた全出血の解析でも、ABRはグループ2で低かった(率比:0.33、95%CI:0.17~0.64)。

 血友病の病型別の解析では、これらの知見と同様の傾向を認めたが、病型別の優位性を示すほどの検出力はこの試験にはなかった。

 concizumab投与の再開後に血栓塞栓イベントの報告はなかった。また、血漿中concizumab濃度は経時的に安定して推移した。

 患者報告アウトカムのうちSF-36 v2の「体の痛み」、「身体機能」や「日常役割機能(身体)」はグループ1に比べグループ2で良好な傾向を認めたものの有意な差はなかったが、「全体的健康感」や「活力」はグループ2で優れた。また、Hemophilia-Patient Preference Questionnaireに回答した83例のうち77例(93%)が、前の治療よりもconcizumabが好ましいと答えた。

 著者は、「本試験は非盲検デザインで、投与中断期間が結果に測定不能な影響を及ぼした可能性があり、患者報告アウトカムに関する十分なデータの収集が困難であったことなどから、統計学的な検出力が低く、バイアスの可能性がある点に留意する必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 長尾 梓( ながお あずさ ) 氏

医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科