eplontersen、遺伝性ATTRvアミロイドーシスに有効/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/17

 

 ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型(ATTRv)アミロイドーシス患者の治療において、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるeplontersenはプラセボと比較して、血清トランスサイレチン濃度を有意に低下させ、ニューロパチーによる機能障害を軽減し、良好なQOLをもたらすことが、ポルトガル・Centro Hospitalar Universitario de Santo AntonioのTeresa Coelho氏らが実施した「NEURO-TTRansform試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月28日号で報告された。

historical placeboと比較する単群第III相試験

 NEURO-TTRansform試験は、過去の臨床試験のプラセボ群(historical placebo)との比較を行う非盲検単群第III相試験であり、2019年12月~2021年6月に日本を含む15ヵ国40施設で患者のスクリーニングを実施した(米国・Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

 対象は、18~82歳、Coutinhoの病期分類でステージ1または2のATTRvポリニューロパチーと診断され、Neuropathy Impairment Score(0~244点、点数が高いほど身体機能が不良)が10~130点で、TTR遺伝子配列のバリアントを有する患者であった。

 本試験と類似の適格基準およびエンドポイントが設定されたNEURO-TTR試験(inotersenの二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験、2013年3月~2017年11月)でプラセボの投与を受けた患者をプラセボ群(週1回、皮下投与)とした。eplontersen群は本薬45mgを4週ごとに皮下投与した。

 有効性の主要エンドポイントは次の3つで、ベースラインから65週目または66週目までの変化量を評価した。(1)血清トランスサイレチン濃度、(2)修正Neuropathy Impairment Score +7(mNIS+7)の複合スコア(-22.3~346.3点、点数が高いほど身体機能が不良)、(3)Norfolk Quality of Life Questionnaire-Diabetic Neuropathy(Norfolk QoL-DN)の総スコア(-4~136点、点数が高いほどQOLが不良)。

 eplontersen群144例(平均年齢53.0歳、男性69%)のうち136例(94.4%)、NEURO-TTR試験のプラセボ群60例(59.5歳、68%)のうち52例(86.7%)が66週のフォローアップを完了した。

有効性の副次エンドポイントも良好

 65週の時点で、血清トランスサイレチン濃度のベースラインからの補正後平均変化量は、プラセボ群が-11.2%であったのに対し、eplontersen群は-81.7%と有意に優れた(群間差:-70.4%、95%信頼区間[CI]:-75.2~-65.7、p<0.001)。

 また、mNIS+7の複合スコアのベースラインから66週までの補正後平均変化量は、プラセボ群の25.1点に比べ、eplontersen群は0.3点と有意に低かった(群間差:-24.8点、95%CI:-31.0~-18.6、p<0.001)。

 さらに、Norfolk QoL-DNの総スコアのベースラインから66週までの補正後平均変化量は、プラセボ群の14.2点に比し、eplontersen群は-5.5点であり有意に良好だった(群間差:-19.7点、95%CI:-25.6~-13.8、p<0.001)。

 有効性の副次エンドポイントのうち、35週目と66週目のneuropathy symptom and change(NSC)総スコア、65週目のSF-36 PCSスコア、65週目の栄養状態(修正BMI)は、いずれもeplontersen群で有意に優れた(すべてp<0.001)。65週目のpolyneuropathy disability(PND)スコアI(介助なしでの歩行)は、eplontersen群ではベースラインから変化がなかった。

 試験薬投与中の有害事象(TEAE)のうち、重篤なTEAEはeplontersen群が21例(15%)、プラセボ群は12例(20%)で発生した。66週目までに試験薬の投与中止をもたらした有害事象は、eplontersen群が6例(4%)、プラセボ群は2例(3%)で発現した。

 eplontersen群の2例がATTAvアミロイドーシスの既知の続発症(心不整脈、脳内出血)で死亡したが、試験薬関連死は認めなかった。とくに注意すべき有害事象の1つである血小板減少症は、eplontersen群の3例(2%)、プラセボ群の1例(2%)でみられた。

 著者は、「eplontersen群と過去の臨床試験のプラセボ群のアウトカムの結果の差は、ベースラインの種々の患者背景因子とは関連がなかった」とし、「現在進行中の非盲検延長試験では、eplontersenの長期的な安全性と忍容性の評価が行われている」と付言している。

(医学ライター 菅野 守)