ステント内再狭窄に対して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者において、パクリタキセルコーティングバルーンは非コーティングバルーンと比較し、1年時の標的病変不全の発生が有意に少なく、優越性が示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのRobert W. Yeh氏らが、米国の40施設で実施した無作為化比較試験「A Clinical Trial to Assess the Agent Paclitaxel Coated PTCA Balloon Catheter for the Treatment of Subjects With In-Stent Restenosis:AGENT IDE試験」の結果を報告した。著者は、「パクリタキセルコーティングバルーンは、冠動脈ステント内再狭窄患者に対する有効な治療選択肢である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年3月9日号掲載の報告。
パクリタキセルコーティングバルーン vs非コーティングバルーン、標的病変不全を1年追跡
研究グループは、2021年5月~2022年8月にステント内再狭窄(参照血管径2.0mm以上4.0mm以下、病変長26mm未満、標的病変狭窄が症候性では50%以上100%未満、無症候性では70%以上)を有する患者600例を登録し、標的病変の前拡張成功後にパクリタキセルコートバルーン群(406例)または非コートバルーン群(194例)に2対1の割合で無作為に割り付け、施術後1年間追跡した。
両群とも、術後少なくとも1ヵ月間はアスピリンとP2Y
12阻害薬による抗血小板薬2剤併用療法を行った後、抗血小板薬単剤療法を試験期間中継続した。最終追跡日は2023年10月2日であった。
主要エンドポイントは、1年時の標的病変不全(TLF)(虚血による標的病変血行再建術、標的血管関連心筋梗塞、心臓死の複合と定義)とし、ITT解析を行った。
標的病変不全発生率は17.9% vs.28.6%
無作為化された600例の患者背景は、平均年齢68歳、女性26.2%、黒人7%、糖尿病併存50.7%、多枝冠動脈疾患の既往78.9%で、このうち1年間の追跡調査を完了したのは574例(95.7%)であった。
主要エンドポイントの1年時イベント発生率は、パクリタキセルコーティングバルーン群17.9%、非コーティングバルーン群28.6%であり、優越性の基準を満たした(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.42~0.84、両側のp=0.003)。
標的病変血行再建術の発生率は13.0% vs.24.7%(HR:0.50、95%CI:0.34~0.74、p=0.001)、標的血管関連心筋梗塞の発生率は5.8% vs.11.1%(0.51、0.28~0.92、p=0.02)で、いずれもパクリタキセルコーティングバルーン群で低かった。
心臓死の発生率は、それぞれ2.9% vs.1.6%(HR:1.75、95%CI:0.49~6.28、p=0.38)であった。
(ケアネット)