肥満患者への鎮静下消化管内視鏡検査中に、高流量鼻カニューレ(HFNC)を介し酸素投与を行うことで、他の有害事象が増加することなく、低酸素症、無症候性呼吸抑制、および重度低酸素症の発生率が有意に減少した。中国・上海交通大学のLeilei Wang氏らが、上海の大学病院3施設で実施した無作為化並行群間比較試験の結果を報告した。HFNCによる酸素投与は、正常体重患者における鎮静下消化管内視鏡検査中の低酸素症の発生率を減少させるが、肥満患者におけるHFNCを介した酸素投与に関する見解には議論の余地があった。BMJ誌2025年2月11日号掲載の報告。
通常の鼻カニューレ群とHFNC群に無作為化
研究グループは、肥満(BMI≧28)および米国麻酔学会(ASA)クラスI~IIで、鎮静下消化管内視鏡検査を受ける予定の18~70歳の患者を、通常の鼻カニューレ群とHFNC群に1対1の割合で無作為に割り付け、プロポフォールと低用量sufentanilによる鎮静処置中にそれぞれ酸素投与を行った。
主要アウトカムは、処置中の低酸素症(75%≦SpO
2<90%・<60秒)の発生率とした。副次評価項目は、処置中の無症候性呼吸抑制(90%≦SpO
2<95%・すべての時間)、重度低酸素症(SpO
2<75%・すべての時間、または75%≦SPO
2<90%・>60秒)、およびその他の有害事象とした。
鎮静下内視鏡検査中の低酸素症の発生率は、21.2%vs.2.0%
2021年5月6日~2023年5月26日に1,000例が登録され、無作為化された。このうち、同意撤回などを除く984例(平均年齢49.2歳、女性36.9%[363例])が試験を終了し、最大解析対象集団(FAS)として包含された。
鼻カニューレ群と比較してHFNC群で、低酸素症の発生が有意に減少した。低酸素症の発生率はHFNC群2.0%(10/497例)、鼻カニューレ群21.2%(103/487例)であった(群間差:-19.14、95%信頼区間[CI]:-23.09~-15.36、p<0.001)。
無症候性呼吸抑制はHFNC群5.6%(28/497例)、鼻カニューレ群36.3%(177/487例)であり(群間差:-30.71、95%CI:-35.40~-25.92、p<0.001)、重度低酸素症はそれぞれ0%(0/497例)、4.1%(20/487例)であった(-4.11、-6.26~-2.48、p<0.001)。
その他の鎮静関連の有害事象は、両群間で差は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)