東海大学の新倉 直樹氏らは、脳転移した乳がん患者の予後因子を調べるために、国内24施設で脳転移と診断された乳がん患者において、乳がんのサブタイプごとに臨床経過と予後を比較し、死亡原因を分析した。その結果、脳転移した乳がん患者における転移前・後の臨床経過および予後は、サブタイプにより異なることが示唆された。著者らは、乳がんのサブタイプに着目することにより、脳転移の予防や早期発見、治療の改善を最大限に行えるとしている。Breast cancer research and treatment誌オンライン版2014年8月9日号に掲載。
著者らは、日本臨床腫瘍グループ(JCOG)の24施設で、2001年4月1日~2012年12月31日に脳転移と診断された乳がん患者1,466例を後ろ向きに検討した。
主な結果は以下のとおり。
・全部で1,256例の脳転移乳がん患者が対象となり、全生存期間(OS)中央値は8.7ヵ月(95%CI:7.8~9.6)であった。
・単変量および多変量解析から、乳がんの転移の診断から6ヵ月以内に脳転移と診断された患者、無症候性脳疾患の患者、HER2+/ER+の患者でOSが延長したことが明らかになった。
・サブタイプ別の脳転移後のOS中央値(95%CI)は、以下のとおりであった。
- Luminalタイプ:9.3ヵ月(7.2~11.3)
- Luminal-HER2 タイプ:16.5ヵ月(11.9~21.1)
- HER2タイプ:11.5ヵ月(9.1~13.8)
- トリプルネガティブタイプ:4.9ヵ月(3.9~5.9)
・Luminal-HER2タイプでのOSは、Luminalタイプ(HR:1.50、p<0.0001)、トリプルネガティブタイプ(HR:1.97、p<0.0001)に比べ有意に延長した。一方、HER2タイプとは有意差は認められなかった(HR:1.19、p=0.117)。
(ケアネット 金沢 浩子)