日本、中国、韓国によるオリゴ転移乳がんに関する後ろ向きコホート研究(OLIGO-BC1)のサブセット解析として、乳がんサブタイプ別に各予後因子における全生存期間(OS)を検討した結果を、中国・Guangdong Provincial People's HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用およびECOG PS0が予後良好で、luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移が1個のみ、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していた。
オリゴ転移乳がんの予後良好な因子を評価
本研究は、日本癌治療学会(JSCO)、中国臨床腫瘍学会(CSCO)、韓国臨床腫瘍学会(KSMO)によるFederation of Asian Clinical Oncology(FACO)が実施した国際的後ろ向きコホート研究で、ASCO2020では、局所および全身療法がオリゴ転移乳がん患者のOSを延長したこと、多変量解析からは、ある種の全身療法、若年、ECOG PS0、診断時Stage I、非トリプルネガティブタイプ、少ない転移個数、局所再発、長い無病生存期間においてOSが延長することを報告している。
・対象:2005年1月~2012年12月に診断された、ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移乳がん(転移病変が少なく[5個以下、同一臓器に限らない]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患)で、全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)と局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法、経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)の併用、もしくは全身療法のみで治療された患者
・評価項目:OS
オリゴ転移乳がんをサブタイプ別に各予後因子におけるOSを検討した主な結果は以下のとおり。
・オリゴ転移乳がん患者1,200例におけるオリゴ転移数は、578例(48%)で1個、289例(24%)で2個、154例(13%)で3個、102例(9%)で4個、77例(6%)で5個だった。
・骨転移は301例(25%)、内臓転移は387例(32%)、局所再発は25例(2%)、多発性転移は404例(34%)で報告された。
・luminalタイプは 526例(44%)、luminal-HER2タイプは189例(16%)、HER2タイプは154例(13%)、トリプルネガティブタイプは166例(14%)、その他は164例(13%)で報告された。
・どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用、 ECOG PS0で生存ベネフィットが認められた。
・luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移数1個、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していたが、トリプルネガティブタイプではこれら3因子による生存ベネフィットはなかった。
・局所治療では、外科的切除と放射線療法の併用で生存ベネフィットがみられた。
・リンパ節・肺・肝臓・骨転移において、転移数1個は2個以上に比べて5年OSが良好だった。
Wang氏は、「オリゴ転移乳がんは偶然にみつかるが、いくつかの症例は集学的治療で生存しうるようだ。予後良好な因子を評価し、局所療法を検討することは価値がある」と結論している。
(ケアネット 金沢 浩子)