医療一般|page:65

生物学的年齢は脳卒中や認知症のリスクに影響を及ぼす

 年齢には、出生からの経過年数で表す暦年齢のほかに、科学者が生物学的年齢と呼ぶものがある。これは、老化や健康状態の個人差を加味した年齢で、テロメアの長さ、エピジェネティック・クロックや多様な生物学的バイオマーカー値を基に算出される。スウェーデンの新たな研究で、この生物学的年齢が暦年齢を上回っている人では、認知症や脳梗塞(虚血性脳卒中)の発症リスクが高まることが明らかになった。カロリンスカ研究所(スウェーデン)医学疫学・生物統計学部門のSara Hagg氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry」に11月5日掲載された。

糖尿病の合併症があると大腸がんの予後がより不良に

 糖尿病患者が大腸がんを発症した場合、糖尿病のない人に比べて予後が良くない傾向があり、糖尿病の合併症が起きている場合はその傾向がより強いことを示唆するデータが報告された。国立台湾大学のKuo-Liong Chien氏らの研究によるもので、詳細は「Cancer」に10月23日掲載された。  糖尿病は大腸がん予後不良因子の一つだが、糖尿病の合併症の有無で予後への影響が異なるか否かは明らかになっていない。Chien氏らはこの点について、台湾のがん登録データベースを用いた後方視的コホート研究により検討。2007~2015年にデータ登録されていた症例のうち、ステージ(TNM分類)1~3で根治的切除術を受けた患者5万9,202人を、糖尿病の有無、糖尿病の合併症の有無で分類し、Cox回帰分析にて、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、がん特異的生存率(CSS)、再発リスクなどを比較した。なお、全死亡(あらゆる原因による死亡)は2万1,031人、治療後の再発は9,448人だった。

コロナ緊急事態宣言は国内大学生の抑うつレベルに影響を及ぼさなかった?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下での大学生の抑うつレベルの推移を解析した結果、計4回発出された緊急事態宣言は、大学生の抑うつレベルに有意な影響を及ぼしていなかった可能性を示すデータが報告された。むしろ、4月の新年度のスタートが、大学生の抑うつレベルに影響を与えていることが確認されたという。名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野の白石直氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of General Psychiatry」に10月10日掲載された。

毎日のコーヒーがアルツハイマー病リスクに及ぼす影響~メタ解析

 アルツハイマー病は、世界中で数百万人が罹患している神経変性疾患である。その予防や発症を遅らせる可能性のある生活要因の特定は、研究者にとって非常に興味深いことである。現在の研究結果に一貫性はないものの、広く研究されている因子の1つにコーヒーの摂取量がある。韓国・仁済大学校のIrin Sultana Nila氏らは、コーヒー摂取量がアルツハイマー病リスクに及ぼす影響について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、1日のコーヒー摂取が1~4杯でアルツハイマー病リスクの低減がみられたが、4杯以上ではリスクが増加する可能性が示唆された。Journal of Lifestyle Medicine誌2023年8月31日号の報告。

喫煙はがんの抑制に関わる遺伝子の変異と関連

 喫煙ががんの主因であることは周知の事実だが、喫煙によりがんが発生する機序の一端を解き明かす研究結果が、カナダの研究グループにより発表された。この研究によると、喫煙は、DNAのストップゲイン変異と呼ばれる危険な変異と関連しており、この変異が特に、がん抑制遺伝子で多く認められることが明らかになったという。オンタリオがん研究所(OICR、カナダ)のJuri Reimand氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」に11月3日掲載された。  ストップゲイン変異では、DNA塩基の変異によりアミノ酸をコードする部分がタンパク質合成を終結させる終止コドンと呼ばれるコードに置き換わってしまう。その結果、正常なタンパク質が作られず、そのタンパク質が本来持つはずの機能を発揮できなくなる可能性がある。Reimand氏は、「われわれの研究により、喫煙が、がん抑制遺伝子の変異と関連することが明らかになった。がん抑制因子が作られなければ、細胞の防御機能が働かずに異常な細胞が増殖し続け、がんが発生しやすくなる」とOICRのニュースリリースで説明している。

COVID-19後の嗅覚・味覚障害は3年で回復へ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、嗅覚障害や味覚障害を経験している人にとって朗報となる研究結果が発表された。COVID-19パンデミック初期に軽症のCOVID-19に罹患した人を3年間追跡したこの研究によると、罹患者と非罹患者との間での嗅覚障害と味覚障害の有病率は、罹患から3年後では同等であることが明らかになった。トリエステ大学(イタリア)のPaolo Boscolo-Rizzo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に11月9日掲載された。

医師が患者の減量を成功に導くためのアプローチとは?

 医師が患者に減量を勧める場合、楽観的な言葉や明るい調子で減量が肯定的な機会であることを伝えると、患者は減量に成功しやすいことが、新たな研究で明らかになった。英オックスフォード大学Nuffield Department of Primary Care Health SciencesのCharlotte Albury氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に11月7日掲載された。  国際的なガイドラインでは、プライマリケア医は患者の肥満度を確認し、過体重や肥満の患者には治療を提供すべきことを推奨している。患者は、医師の使う言葉や口調を重視しているものの、医師が患者の体重についてどのように話し、どのように治療を提供すれば患者が受け入れやすく、効果も見込めるのかについてのエビデンスはほとんどない。

パンデミックで急性アルコール中毒による救急搬送が有意に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの最中に、急性アルコール中毒による救急搬送件数が有意に減少していたことが明らかになった。住民の飲酒量が多いことで知られる高知県のデータを解析した結果であり、高知大学医学部環境医学の南まりな氏、災害・救急医療学の宮内雅人氏らによる論文が、「Alcohol」に9月20日掲載された。  COVID-19パンデミックにより人々の生活が一変し、それにより救急搬送される患者の傾向にも変化が生じている。例えば交通事故による外傷が減り、ストレスが発症に関与しているたこつぼ心筋症が増えたことなどが報告されている。一方、飲酒行動に関しては、飲食店の時短営業や入店制限などによる飲酒機会の減少と、ストレス負荷による自宅での飲酒量の増大という相反する影響が考えられるが、南氏らが2020年春というパンデミック初期に高知県で行った研究では、急性アルコール中毒による救急搬送が減少していたことが明らかになっている。今回の研究では、パンデミックが長期化した以降もそのような傾向が継続しているのか否かを検証した。

世界初のsa-mRNAコロナワクチンが国内承認/CSL・Meiji Seika

 SL Seqirus社(オーストラリア、メルボルン)とMeiji Seika ファルマは、2023年11月28日に、自己増幅型メッセンジャーRNAワクチン(sa-mRNA、レプリコンワクチンとも呼ばれる)である「コスタイベ筋注用」(ARCT-154)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした成人の初回免疫および追加免疫における国内製造承認を取得した。CSL Seqirus社のファミリー企業のCSLベーリングが11月29日付のプレスリリースで発表した。本ワクチンは、世界で初めて承認を受けたsa-mRNAワクチンとなる。この次世代ワクチンは、日本ではMeiji Seika ファルマが商業化を行う。なお、今回承認を取得したのは新型コロナウイルスの従来株対応1価ワクチンで、現在の流行株とは異なるため供給されない。

医師数が少なく検査機器数が多い日本の医療/OECD

 経済協力開発機構(OECD/本部:フランス・パリ)から加盟38ヵ国に関する医療レポートが、11月7日に公表された。レポートでは、新型コロナ感染症(COVID-19)が与えた各国への影響のほか、医療費、医療の質などの関する内容が記載されている。平均寿命はOECDの中で84.5歳と1番長いが、受診率の多さ、医師数、電子化の遅れなど他の国との差もあり、今後の課題も提示されている。

非定型抗精神病薬の胃腸穿孔・腸閉塞リスク~MID-NETデータに基づく医薬品安全性評価

 胃腸穿孔・腸閉塞は、抗精神病薬によって引き起こされる有害事象の1つであるが、添付文章上の警告情報については、各抗精神病薬により異なっている。医薬品医療機器総合機構の長谷川 知章氏らは、非定型抗精神病薬を処方された患者における胃腸穿孔・腸閉塞リスクを評価するため、日本の医療情報データベースMID-NETのリアルワールドデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。Therapeutic Innovation & Regulatory Science誌オンライン版2023年10月29日号の報告。  調査期間は、2009~18年。非定型抗精神病薬を処方された患者における胃腸穿孔・腸閉塞リスクを、定型抗精神病薬を処方された患者と比較し、評価を行った。

若~中年での高血圧、大腸がん死亡リスクが増加~NIPPON DATA80

 高血圧とがんリスクとの関連についての報告は一貫していない。今回、岡山大学の久松 隆史氏らが、日本人の前向きコホートNIPPON DATA80において、高血圧と胃がん、肺がん、大腸がん、肝がん、膵がんによる死亡リスクとの関連を調査したところ、30~49歳における高血圧は、後年における大腸がん死亡リスクと独立して関連していることがわかった。Hypertension Research誌オンライン版2023年11月22日号に掲載。  研究グループは、NIPPON DATA80(厚生労働省の循環器疾患基礎調査1980年)において、ベースライン時に心血管系疾患や降圧薬服用のなかった8,088人(平均年齢48.2歳、女性56.0%)を2009年まで追跡。喫煙、飲酒、肥満、糖尿病などの交絡因子で調整したFine-Gray競合リスク回帰を用いて、血圧が10mmHg上昇した場合のハザード比(HR)を推定した。また、逆の因果関係を考慮し、追跡開始後5年以内の死亡を除外して解析した。

赤身肉の摂取量が多いと糖尿病リスクが上昇

 赤身肉の摂取量が多い人ほど糖尿病発症リスクが高いというデータが報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のXiao Gu氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」に10月19日掲載された。  この研究は、米国内の看護師を対象に実施されている「Nurses' Health Study(NHS)」、NHSより新しい世代の看護師を対象に実施されている「NHS II」、および、医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」の参加者21万6,695人(女性81%)を解析対象として実施された。赤身肉の摂取量は、参加登録時と2~4年ごとに、半定量的な食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価された。

「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」発表/日本肥満学会

 肥満症治療薬セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)が、2023年11月22日に薬価収載された。すでに発売されている同一成分の2型糖尿病治療薬(商品名:オゼンピック皮下注)は、自費診療などによる適応外の使用が行われ、さまざまな問題を引き起こしている。こうした事態に鑑み、日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学教授])は「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」を11月27日に同学会のホームページで公開した(策定は11月25日)。  ステートメントでは、「肥満と肥満症は異なる概念であり、肥満は疾患ではないため、この存在のみでは本剤の適応とはならない」と適応外での使用に対し注意を喚起しており、適応としての「肥満症」、使用時に確認すべき注意点について以下のように整理している。

アルコール依存症やニコチン依存症と死亡リスク

 一般集団を対象とした、アルコール依存症とニコチン依存症の併発とその後の死亡リスクとの関連についての知見は、不十分である。ドイツ・グライフスヴァルト大学のUlrich John氏らは、死亡率の予測における、過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間との潜在的な関連性を分析した。その結果から、過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間は、死亡するまでの期間に累積的な影響を及ぼす可能性が示唆された。European Addiction Research誌オンライン版2023年10月26日号の報告。  対象サンプルは、18~64歳のドイツ北部在住の一般集団よりランダムに抽出した。1996~97年における過剰な飲酒、喫煙、アルコール依存症、ニコチン依存症、起床してから最初に喫煙するまでの時間を、Munich-Composite International Diagnostic Interviewを用いて評価した。すべての原因による死亡率に関するデータは、2017~18年に収集し、分析には、Cox比例ハザードモデルを用いた。

がん遺伝子パネル検査のアノテーションにAIを活用開始

 聖マリアンナ医科大学は、2023年11月13日、同学附属大学病院でのがん遺伝子パネル検査において、ゲノムデータの解析(アノテーション)にAIでデータ解析を行うことができる「MH Guide」を活用する取り組みを開始した。  MH Guideは、ドイツ・Molecular Health社が開発したAIシステムで、遺伝子パネル検査から得られるデータを解釈し、エビデンスに基づいた治療方針決定を支援する解析ソフトウェアである。

お金は人生の満足度を高める?

 お金で幸せは買えないかもしれないが、人生の満足度を高める一助にはなり得ることが、新たな研究で示された。米国立保健統計センター(NCHS)が2021年に実施した調査で、「自分の人生に不満がある」と回答した米国成人はわずか4.8%だったが、そのような回答をした人は、世帯所得が連邦貧困水準の200%未満〔4人家族の場合、年間約5万5,000ドル(1ドル151円換算で830万5,000円)未満に相当〕の世帯の人に多いことが明らかになったのだ。NCHSのAmanda Ng氏らによるこの研究の詳細は、「National Health Statistics Reports」に11月2日掲載された。

2型糖尿病患者のメトホルミン服用中止は認知症リスクを高める?

 2型糖尿病患者が、長期的な使用が前提とされている血糖降下薬のメトホルミンの服用を早期に中止すると、加齢に伴い、思考力や記憶力に問題の生じるリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。論文の上席著者である、米ボストン大学の疫学者Sarah Ackley氏は、「メトホルミンの服用を続けることが、認知症発症の予防や遅延につながることが分かった。これは大きな励みとなる結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月25日掲載された。  Ackley氏によると、メトホルミンには幅広い効能があるため、通常、糖尿病治療の第一選択肢とされており、特定の理由がない限り服用を継続することが推奨されている。メトホルミンの服用により腎障害などの副作用が生じた患者や、薬に頼らない血糖コントロールを希望する患者では、メトホルミンの服用が中止されることがある。

第一三共のXBB.1.5対応mRNAコロナワクチン、一変承認取得

 第一三共は11月28日付のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するオミクロン株XBB.1.5対応1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、追加免疫における製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。本ワクチンが特例臨時接種に使用されるワクチンとして位置付けられ次第、厚生労働省との供給合意に基づき、国産初のmRNAワクチンとして供給を開始し、2023年度中に140万回分を供給する予定。  厚労省が11月27日に公表した資料(一変承認前の情報)によると、本ワクチンは、既SARS-CoV-2ワクチンの初回免疫完了者(12歳以上)に対する、「追加免疫」として使用することができる。

適度な飲酒量は存在する?

 適量の飲酒の健康への影響についてはまだよくわかっていない。今回、肥満および2型糖尿病に対する飲酒の用量依存的影響についてバイアスを減らして評価するために、カナダ・トロント大学のTianyuan Lu氏らがメンデルランダム化法を用いて検討した。その結果、観察研究での関連とは異なり、適度な飲酒に肥満や2型糖尿病の予防効果はない可能性が示された。さらに、大量の飲酒は肥満度を増加させるだけでなく、2型糖尿病リスクを増加させる可能性があることが示唆された。The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌2023年12月号に掲載。  メンデルランダム化法は、観察研究における交絡や逆因果によるバイアスを軽減し、飲酒の潜在的な因果的役割を評価するのに役立つ。本研究では、UK Biobankに登録されたヨーロッパ系血統の40万8,540人について、最初に自己申告による飲酒頻度と10項目の身体測定値、肥満、2型糖尿病との関連を検証した。その後、全集団と、飲酒頻度で層別化した部分集団の両方でメンデルランダム化法を用いて解析を行った。