医療一般|page:1

子供も食事の早食いは肥満に関係する/大阪大

 「早食い」は太る原因といわれている。この食べる早さと肥満の相関は、子供にも当てはまるのだろうか。この課題に対し、大阪大学有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の高阪 貴之氏らの研究グループは、わが国の小学生1,403人の咀嚼能力および咀嚼習慣と肥満との関連を検討した。その結果、早食いや咀嚼能力の低下は、男子で肥満と関連していた。この結果は、Journal of Dentistry誌2025年3月8日号のオンライン版に掲載された。  研究グループは、大阪市の9~10歳の児童1,403人を対象に、咀嚼習慣を質問紙で評価し、咀嚼能力は色変化するチューインガムを用いて測定した。肥満は、身長と体重に基づく過体重の割合で判定し、多変量ロジスティック回帰分析を行い、咀嚼習慣と咀嚼能力を説明変数とし、性別、DMFT指数、ヘルマン歯発育段階を調整した肥満のオッズ比を算出した。

高感度CRP、心不全の悪化予測に有用か/日本循環器学会

 日本人の高齢化に伴い、国内での心血管疾患(CVD)の発生が増加傾向にある。このCVD発生には全身性の炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)の上昇が関連しており、これが将来の心血管イベントの発症予測にも有用とされている。しかし、その関連性は主に西洋人集団で研究されており、日本人でのデータは乏しい状況にある。そこで今回、小室 一成氏(国際医療福祉大学 副学長/東京大学大学院医学系研究科 先端循環器医科学講座 特任教授)が日本人集団における全身性炎症と心血管リスクの関係を評価し、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies1において発表した。

高齢者の治療抵抗性うつ病に対して最も効果的な治療は?〜メタ解析

 高齢者のうつ病は、十分に治療されていないことがある。2011年の高齢者治療抵抗性うつ病(TRD)の治療に関するシステマティックレビューでは、プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)が1件のみ特定された。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAlice Jane Larsen氏らは、高齢者のTRD治療に対する有効性に関するエビデンスを統合し、更新レビューを行うため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2025年3月3日号の報告。  対象研究は、55歳以上のTRD患者に対する治療を調査したRCT。治療抵抗性の定義は、1回以上の治療失敗とした。2011年1月9日〜2023年12月10日(2024年1月7日に検索を更新)に公表された研究を、電子データベース(PubMed、Cochrane、Web of Science)よりシステマティックに検索した。メタ解析により、寛解率を評価した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias(RoB)2ツールを用いた。エビデンスの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)基準を用いた。

乳がんサバイバーは多くの非がん疾患リスクが上昇/筑波大

 日本の乳がんサバイバーと年齢をマッチさせた一般集団における、がん以外の疾患の発症リスクを調査した結果、乳がんサバイバーは心不全、心房細動、骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、不安・うつの発症リスクが高く、それらの疾患の多くは乳がんの診断から1年以内に発症するリスクが高いことを、筑波大学の河村 千登星氏らが明らかにした。Lancet Regional Health-Western Pacific誌2025年3月号掲載の報告。  近年、乳がんの生存率は向上しており、乳がんサバイバーの数も世界的に増加している。乳がんそのものの治療や経過観察に加え、乳がん以外の全般的な健康状態に対する関心も高まっており、欧米の研究では、乳がんサバイバーは心不全や骨折、不安・うつなどを発症するリスクが高いことが報告されている。しかし、日本を含むアジアからの研究は少なく、消化管出血や感染症などの頻度が比較的高くて生命に関連する疾患については世界的にも研究されていない。そこで研究グループは、日本の乳がんサバイバーと一般集団を比較して、がん以外の12種類の代表的な疾患の発症リスクを調査した。

鼻の軟骨で膝の損傷を修復できる可能性

 ランニングやスキーなどスポーツをしているときの転倒により生じた膝の損傷は、選手が一線から退かざるを得なくするだけでなく、将来的に関節炎のリスクを高める可能性がある。しかし新たな研究で、そのような転倒で損傷することはほとんどない鼻が、膝修復の鍵になる可能性を示唆する研究結果が報告された。研究グループは、鼻の中で左右の気道を隔てる壁となっている鼻中隔軟骨から作られた人工軟骨を、最も複雑な膝の損傷の修復にも使用できるとしている。バーゼル大学(スイス)生物医学部長のIvan Martin氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に3月5日掲載された。

精液の質が良い人は寿命が長い?

 動いている精子の総数が多い人は、少ない人に比べて生殖能力が高いだけでなく、寿命も長い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。50年にわたり7万8,000人以上の男性を追跡調査した結果、総運動精子数(1TMSC)が多い男性は、少ない男性に比べて3年近く長生きする可能性が示唆されたという。コペンハーゲン大学病院(リグスホスピタレット、デンマーク)のLaerke Priskorn氏らによるこの研究は、「Human Reproduction」に3月5日掲載された。  世界保健機関(WHO)の基準に基づくと、サンプル中の精子の少なくとも42%が効果的に泳ぐことができる場合、精子の運動性は正常だと判断される。研究グループは、精子濃度が1mL当たり500万個未満の場合は、男性不妊症と関連付けられていると説明している。

未治療多発性骨髄腫の新しい治療選択肢:パラダイムシフトは起こるか

 2025年3月27日、サノフィは未治療の多発性骨髄腫の治療薬として、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによるVRd療法にイサツキシマブ(商品名:サークリサ(R))を追加する4剤併用療法の適応追加承認を取得したCD38受容体を標的としたイサツキシマブに関するメディアセミナーを開催した。  今回のセミナーでは、イサツキシマブの適応拡大の意義や新たな治療戦略について、芹澤 憲太郎氏(近畿大学 医学部 血液・膠原病内科)と鈴木 憲史氏(日本赤十字社医療センター アミロイドーシスセンター)が解説した。

「心不全診療ガイドライン」全面改訂、定義や診断・評価の変更点とは/日本循環器学会

 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインである『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』が、2025年3月28日にオンライン上で公開された。2018年に『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』が発刊され、2021年にはフォーカスアップデート版が出された。今回は国内外の最新のエビデンスを反映し、7年ぶりの全面改訂となる。2025年3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会にて、本ガイドライン(GL)の合同研究班員である北井 豪氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 心不全部)が、ガイドライン改訂の要点を解説した。

「胃癌治療ガイドライン」改訂のポイント~薬物療法編~/日本胃癌学会

 2025年3月、「胃癌治療ガイドライン」(日本胃癌学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会では、「胃癌治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科療法と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では薬物療法に関する主な改訂点を取り上げる。  内科系(薬物療法)については非常に多くの改訂があった。多くはガイドラインを一読すれば理解いただけると思うが、多くの方が関心を持っているであろうMSI、CPS、CLDN18、HER2といったバイオマーカーとそれに基づく治療選択と、今後避けて通れない高齢者診療に関する新たな推奨に絞って、改訂ポイントを紹介する。

神経発達障害を併発する強迫症に関与する免疫学的メカニズム

 強迫症(OCD)は、有病率が2〜3%といわれている精神疾患である。OCD治療では、セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬の有効性が示されているが、病因は依然としてよくわかっていない。最近の研究では、とくに自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、トゥレット症などの神経発達障害を併発したOCD患者では、免疫学的メカニズムの関与が示唆されている。兵庫医科大学の櫻井 正彦氏らは、これらのメカニズムを明らかにするため、神経発達障害を併発したOCD患者と併発していないOCD患者における免疫学的因子を調査した。Psychiatric Research誌2025年4月号の報告。

新たな冠動脈リスク予測モデルで女性のMACEリスクを4段階に層別化可能

 新たに開発された女性の冠動脈リスクスコア(COronary Risk Score in WOmen;CORSWO)は、女性の冠動脈リスクを効果的に層別化し、特に高リスクおよび非常に高リスクの検出に優れていることから、主要心血管イベント(MACE)発生の予測に有効であるとする研究結果が、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」に2024年12月5日掲載された。  女性の冠動脈疾患(CAD)の発症は男性と比較して7~10年遅く、非典型的な症状を伴うため、女性におけるMACE発生を予測するツールが求められている。バルデブロン大学病院(スペイン)のGuillermo Romero-Farina氏らは、前向きに収集された臨床データを用いた後ろ向き解析を行い、女性でのMACE発生を予測するためのモデル(CORSWO)を構築し、その予測能を検証した。対象は、2000年から2018年の間に心電図同期SPECT(単一光子放射断層撮影)心筋血流イメージング(gSPECT MPI)を受けた2万5,943人の連続した患者の中から抽出した女性患者2,226人(平均年齢66.7±11.6歳)とし、平均4±2.7年間追跡し、MACE(不安定狭心症、非致死的な心筋梗塞、冠動脈血行再建術、心臓死)の発生を評価した。

ストレスは若年女性の原因不明脳梗塞のリスク

 50歳未満の女性における原因を特定できない脳梗塞と、ストレスとの関連が報告された。男性ではこの関連が認められないという。ヘルシンキ大学病院(フィンランド)のNicolas Martinez-Majander氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に3月5日掲載された。  脳梗塞のリスクは、加齢や性別などの修正不能な因子と、喫煙や高血圧などの修正可能な因子によって規定されることが明らかになっているが、それらのリスク因子が該当しない原因不明の脳梗塞(cryptogenic ischemic stroke;CIS)もあり、近年、特に若年者のCIS増加が報告されている。これを背景に著者らは、若年者のCISにストレスが関与している可能性を想定し、以下の研究を行った。

レンチウイルス抗CD20/抗CD19 CAR-T細胞、再発・難治性マントル細胞リンパ腫で全奏効率100%(第I/II相試験)/JCO

 再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)に対する二重特異性レンチウイルス抗CD20/抗CD19(LV20.19)CAR-T療法の第I/II相試験の結果、100%の全奏効率(ORR)を示し、88%で完全奏効(CR)を達成した。米国・Medical College of WisconsinのNirav N. Shah氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月31日号で報告。  本試験は、2ラインの治療に失敗または移植後に再発したMCL患者を対象とし、LV20.19 CAR-T細胞はCliniMACS Prodigyを用いて施設内で製造された。ナイーブT細胞と幹細胞メモリー(SCM)様T細胞を増やし最終CAR-T細胞を最適化するため、8日間もしくは12日間のフレキシブルな工程で製造した。

「胃癌治療ガイドライン」改訂のポイント~外科治療編~/日本胃癌学会

 2025年3月、「胃癌治療ガイドライン」(日本胃癌学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会では、「胃癌治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科治療と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では外科治療に関する主な改訂点を取り上げる。  総論部分の大きな改訂点としては、胃の切除範囲として従来の6つの術式に加えて「胃亜全摘術(小彎側をほぼ全長に渡って切離し、短胃動脈を一部切離する幽門側の胃切除)」を追加したこと、これまであいまいだったコンバージョン手術の定義を「初回診察時に根治切除不能と診断され薬物療法が導入された症例で、薬物療法が奏効した後に根治切除を企図して行われる手術」と定めたことがある。クリニカル・クエスチョンに関する改訂点としては、「低侵襲手術の推奨度を全体的に強化」、「コンバージョン手術の推奨度を変更」、「胃切除後長期障害・高齢患者に関するCQを追加」、「病態進行(PD)の適応・断端陽性例などのCQを追加」が大きな点だ。具体的に新設・変更された主なCQは以下となっている。

ドパミンD2受容体ブロックが初発統合失調症患者の長期転機に及ぼす影響

 初回エピソード統合失調症において、持続的なドパミンD2受容体ブロックを行っているにもかかわらず再発してしまう患者の割合やD2受容体ブロック作用を有する抗精神病薬の長期使用によりブレイクスルー精神疾患を引き起こすかどうかについては、明らかになっていない。東フィンランド大学のJari Tiihonen氏らは、再発歴がなく、5年超の持続的なD2受容体ブロックによる治療を行った患者において、ブレイクスルー精神疾患の発生率が加速するとの仮説を検証するため、本研究を実施した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2025年2月19日号の報告。

白斑患者はがんリスクが高いのか?

 尋常性白斑患者におけるがんの発症率に関する研究では、一貫性のない結果が報告されている。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、約2万5千例の尋常性白斑患者を含む大規模コホートでがん発症リスクの評価を行い、結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌2025年4月号に報告した。  研究者らは、イスラエルのClalit Health Servicesデータベース(2000~23年)を利用した人口ベースコホート研究を実施し、多変量Cox回帰モデルを用いて調整ハザード比(HR)を算出した。

医師の喫煙率、男女・診療科で差/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、4月2日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏が3月28日に発生したミャンマー大地震の犠牲者などに哀悼の意を示すとともに、支援金として医師会より合計1,000万円を支援したことを報告した。また、2000年より医師会と日本大学が共同調査を行っている「喫煙意識調査報告」の内容、4月19日に開催されるシンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」の開催概要が説明された。  「第7回(2024年)日本医師会員喫煙意識調査報告」について副会長の茂松 茂人氏(茂松整形外科 院長)がその概要を述べ、調査を行った兼板 佳孝氏(日本大学医学部社会医学系公衆衛生学分野 教授)が詳細を説明した。

働き方改革スタートから1年、「変化を感じる」は35%/ウォルターズ・クルワー調査

 医師の働き方改革がスタートして1年。医療業界向けの情報サービス事業のウォルターズ・クルワー・ヘルスは医師を対象に「『医師の働き方改革』に関する調査」と題したアンケートを行い、その結果を発表した。 「自身の勤務先の働き方改革の取り組み」を聞いた設問には、「取り組んでいる」との回答が83%だったが、その中で自身の働き方にも「変化を感じる」と答えた人は35%に留まった。

食物繊維の摂取による肥満リスク低下、男性でより顕著?

 2型糖尿病患者で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d'Avila Ferreira氏、曽根博仁氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に2月4日掲載された。  肥満の予防と管理においては、食物繊維が重要な役割を果たすことは示されているが、性別で層別化した場合に相反する結果が報告されるなど、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景からFerreira氏らは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。

最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは

 今春のスギ・ヒノキの花粉総飛散量は、2024年の春より増加した地域が多く、天候の乱高下により、飛散が長期に及んでいる。そのため、外来などで季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)を診療する機会も多いと予想される。花粉症診療で指針となる『鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症- 2024年 改訂第10版』(編集:日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)が、昨年2024年3月に上梓され、現在診療で広く活用されている。  本稿では、本ガイドラインの作成委員長である大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)に改訂のポイントや今春の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の終息の見通し、今秋以降の花粉飛散を前にできる対策などを聞いた。