医療一般|page:119

EU・英国の2023年がん死亡率、肺がんは減少も女性で増加の国あり/Ann Oncol

 イタリア・ミラノ大学のMatteo Malvezzi氏らは、欧州連合(EU)に加盟する27ヵ国全体および、EUのなかで人口が多い5ヵ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド)、英国の2023年のがん死亡率の予測を発表した。本調査は毎年実施され、2023年の重点調査は肺がんとされた。EU加盟27ヵ国における2023年のがん死亡率は、2018年と比べて男性では6.5%、女性では3.7%減少すると予測された。また、EU加盟27ヵ国における2023年の肺がんによる死亡率は、2018年と比べて男性では10.2%減少すると予測されたが、女性では1.2%増加すると予測された。本調査結果は、Annals of Oncology誌オンライン版2023年3月5日号に掲載された。

抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。

「マザリーズ」への関心の程度で自閉症の診断が可能に?

 母親などが、高いトーンで、ゆっくりと、抑揚をつけて乳幼児に話しかける話し方を「マザリーズ」という。このようなマザリーズへの関心の程度が、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断や予後の指標となり得ることが、乳幼児を対象にした研究で示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)神経科学分野のKaren Pierce氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に2月8日掲載された。  この研究では、生後12〜48カ月の乳幼児653人(平均月齢26.45カ月、男児73.51%)を対象に、乳幼児がマザリーズへ注意を向ける程度をASD診断の指標にできるのかどうか、また、それが社会的スキルや言語能力と関連しているのかどうかを調べた。マザリーズに注意を向ける程度は、Pierce氏らが開発したアイトラッキングテストにより測定した。これは、対象者に2本の動画を一つの画面に提示し、どちらをどれだけ見るのかを視線でコントロールさせることで、動画に対する対象者の関心を定量化するものである。提示される2本の動画のうちの1本は常にマザリーズを話す女優の動画(以下、「マザリーズ」)とし、もう1本は、1)高速道路を走る車とその騒音(以下、「高速道路」)、2)音楽とともに動く抽象的な形や数字(以下、「図形や数字」)、3)「マザリーズ」と同じ女優が同じセリフを抑揚のない口調で話すもの(以下、「抑揚のない口調」)のいずれかとした。

米FDA、男性同性愛者の献血の制限緩和に向けた指針を提案

 同性愛者やバイセクシュアルの男性からの献血は長年にわたって制限されてきたが、近い将来、よりきめ細かな方針に変わる可能性がある。米食品医薬品局(FDA)は1月27日、輸血によるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染のリスクを軽減するための献血者の評価方法を、これまでのように時間を基準にしたものから、性差別的ではない、個人のリスクに基づく質問へと変更することを提案した。  具体的には、パートナーと一夫一婦制の関係を築いている同性愛者の男性は、献血前に性行為を控える必要は一切なくなりそうだ。1980年代以降に施行された規則では、採取された血液のHIV汚染リスクを理由に、同性愛者などが献血をする場合には、定められた期間、性行為を控えることが要求されていた。しかし、LGBT組織からの圧力や、血液スクリーニング技術の向上、血液バンクや米国医師会からの情報提供などを受け、FDAはその規則の再検討を行っていた。

せん妄予防に対するラメルテオン~メタ解析

 せん妄予防に対する新たな治療オプションとして期待されているラメルテオンだが、その有効性を評価したエビデンスは、まだ限られている。台湾・長庚記念病院国際医療センターのChia-Ling Yu氏らは、アップデートメタ解析を実施し、入院患者のせん妄予防に対するラメルテオンの効果に関するこれまでのエビデンスの信頼性を調査した。その結果、ラメルテオンは、プラセボと比較し、入院患者のせん妄リスクを低減させることが最新のメタ解析で明らかとなった。Journal of Pineal Research誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。

治療前の抗菌薬で免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療前の抗生物質曝露は、腸内細菌叢の変化を通じて転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、大規模な評価は不足している。ICI開始前の抗生物質が全生存期間(OS)に与える影響を評価したカナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのLawson Eng氏らによるレトロスペクティブ・コホート研究の結果が、 Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年2月24日号に掲載された。著者らは、カナダのオンタリオ州で2012年6月~2018年10月にICIによる治療を開始した65歳以上のがん患者を、全身療法投与データを用いて特定した。

今後の医師のマスク着用意向は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症対策として、これまで屋内では原則マスク着用、屋外では原則マスク不要とされてきたが、2023年3月13日よりマスクの着用は個人の判断が基本となった。CareNet.comでは、医師のプライベートにおけるマスク着用意向を探るため、会員医師1,000人を対象に『今後のマスクの着用意向に関するアンケート』を実施した。その結果、大多数の医師がマスクの着用基準が個人判断になることに賛成であり、プライベートでマスクを外したい医師と外したくない医師がほぼ半数であることが明らかとなった(2023年3月2日実施)。

SJS/TENの28%が抗菌薬に関連、その内訳は?

 抗菌薬に関連したスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、全世界における重大なリスクであることを、カナダ・トロント大学のErika Yue Lee氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析で明らかにした。抗菌薬関連SJS/TENは、死亡率が最大50%とされ、薬物過敏反応のなかで最も重篤な皮膚障害として知られるが、今回の検討において、全世界で報告されているSJS/TENの4分の1以上が、抗菌薬関連によるものであった。また、依然としてスルホンアミド系抗菌薬によるものが主であることも示され、著者らは「抗菌薬の適正使用の重要性とスルホンアミド系抗菌薬は特定の適応症のみに使用し治療期間も限定すべきであることがあらためて示唆された」とし、検討結果は抗菌薬スチュワードシップ(適正使用)、臨床医の教育と認識、および抗菌薬の選択と使用期間のリスク・ベネフィット評価を重視することを強調するものであったと述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月15日号掲載の報告。

「神経保護薬」で脳卒中後の転帰が改善する可能性

 脳卒中を発症した患者に対し、機械的血栓回収療法と呼ばれる標準的な治療に加え、「神経保護薬」を使用することで、その後の死亡リスクや後遺症のリスクが低下する可能性を示した臨床試験の結果が報告された。この神経保護薬はApTOLLと呼ばれるもので、炎症を抑えることで脳の組織を保護する作用があるという。バルデブロン病院(スペイン)のMarc Ribo氏らが実施したこの試験の結果は、国際脳卒中学会(ISC 2023、2月8~10日、米ダラス)で発表された。  脳卒中には、血栓によって脳の血管が詰まり、脳の一部の血流が途絶えて起こる虚血性脳卒中と、脳の血管が破れて血液が漏れ出ることで起こる脳出血がある。発生頻度は、虚血性脳卒中の方が脳出血よりも大幅に高い。

ビタミンDで2型糖尿病のリスクがわずかに低下

 ビタミンDを積極的に摂取することによって、2型糖尿病の発症リスクがわずかに低下する可能性を示唆する研究結果が報告された。ただし、専門家は、ビタミンD摂取が健康的な食事や運動習慣に取って代わるものではないとしている。米タフツ医療センターのAnastassios Pittas氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に2月7日掲載された。  ビタミンDは骨量減少や骨折を減らす目的で、サプリメントなどとして摂取されることがある。近年、ビタミンDには骨代謝改善以外にもさまざまな作用のあることが分かり、その中の一つとして2型糖尿病リスクを下げる可能性も示唆されている。ただし、この点についての明確なエビデンスは得られていない。そこでPittas氏らは、2型糖尿病リスクの高い人を対象に、ビタミンD投与による介入を行った研究報告を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を行った。

ホルモン注射で男女の性欲が高まる?

 性欲減退に悩む人に、新しいホルモン注射が役立つかもしれない。キスペプチンと呼ばれるホルモンの注射により男性と女性の性欲を高められる可能性が、英国の2件の研究で示唆された。キスペプチンは、脳の視床下部のニューロンから放出されるペプチドで、生殖機能の制御において中心的な役割を果たすと考えられている。これらの研究結果は、「JAMA Network Open」に2月3日掲載された。  1件目の研究は、英インペリアル・カレッジ・ヘルスケアNHSトラストのAlexander Comninos氏らが、性的関心興奮障害(HSDD)の女性40人を対象に実施したランダム化比較試験(RCT)である。対象者には、2回にわたってキスペプチンとプラセボを投与した。投与方法は、まず半数にキスペプチンを、残る半数にプラセボを投与し、その後、1カ月以上の間隔を空けた2回目の投与時には投与内容を入れ替えるというものだった。いずれも投与時に、性的な動画や魅力的な顔写真を対象者に見せ、脳活動を機能的MRI(fMRI)で測定した。また、複数の調査票を用いて性欲と性的興奮の心理・行動面での変化を調べ、さらに、血液検査によりキスペプチンや黄体形成ホルモン(LH)などのホルモンレベルを測定した。

冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会

 『2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン』が第87回日本循環器学会年次集会の開催に合わせ発刊され、委員会セッション(ガイドライン部会)において、藤吉 朗氏(和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 教授)が各章の改訂点や課題について発表した。  本ガイドライン(以下、本GL)は日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会をはじめとする全11学会の協力のもと、これまでの『虚血性心疾患の一次予防GL(2012年改訂版)』を引き継ぐ形で作成された。

EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブがOS延長(ADAURA)/AZ

 アストラゼネカは、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相試験(ADAURA試験)において、EGFR遺伝子変異陽性の病理病期IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する完全切除後の補助療法としてのオシメルチニブの投与により、全生存期間(OS)が有意に改善したことを2023年3月10日のプレスリリースで発表した。  国際共同第III相比較試験ADAURA試験は、EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)の病理病期IB~IIIAのNSCLC患者のうち、腫瘍が完全切除された患者を対象とした試験。

9価HPVワクチン「シルガード9」、9歳以上15歳未満の女性への2回接種の追加承認取得/MSD

 MSDは2023年3月8日のプレスリリースで、同日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来])」について、9歳以上15歳未満の女性に対する2回接種の用法および用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。今回の承認により、対象年齢の女性の来院および接種回数を1回減らすことができ、ワクチン接種者や医療関係者をはじめとする接種に関わる人々の負担軽減にもつながることが期待される。

日本人の認知症リスクに対する喫煙、肥満、高血圧、糖尿病の影響

 心血管リスク因子が認知症発症に及ぼす年齢や性別の影響は、十分に評価されていない。大阪大学の田中 麻理氏らは、喫煙、肥満、高血圧、糖尿病が認知症リスクに及ぼす影響を調査した。その結果、認知症を予防するためには、男性では喫煙、高血圧、女性では喫煙、高血圧、糖尿病の心血管リスク因子のマネジメントが必要となる可能性が示唆された。Environmental Health and Preventive Medicine誌2023年号の報告。対象は、ベースライン時(2008~13年)に認知症を発症していない40~74歳の日本人2万5,029人(男性:1万134人、女性:1万4,895人)。

花粉症患者の5割が医療機関受診の経験なし/アイスタット

 2023年の春は「10年に1度」と言われるくらい花粉の飛散が予測され、連日、天気予報では大量飛散の注意を伝えている。花粉症関連の市販薬や花粉予防グッズの売り上げが伸びている中で、患者はどのように感じ、備えや治療を行っているのであろうか。株式会社アイスタットは2月8日に「花粉症」に関するアンケートを行った。  アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の首都圏在住の会員20~59歳の300人が対象。

米国農務省が学校給食の糖と塩を減らす新提案

 米国農務省(USDA)はこのほど、学校給食の質を改善するための新たな基準案を示した。主として、添加糖やナトリウムの含有量を段階的に削減していくことが提案されている。同省では現在、この提案に対するパブリックコメントを募集している。  米国の学校給食の献立の基準は2012年に見直され、野菜や果物の利用、精製度の低い穀類の使用、エネルギー量過剰の是正などが図られた。今回の基準改定はそれ以来の変更。2025~2026年にスタートし、段階的に厳格な基準としていくことを提案している。

ゴルフは高齢者の健康維持に最適

 老後も健康でいたい人は、ゴルフクラブを持ってグリーンに出ると良いようだ。新たな研究から、心臓の健康を向上させるという点で、ゴルフはウォーキングやノルディックウォーキング(特殊なポールを用いたウォーキングによる全身運動)よりも優れていることが明らかにされた。研究論文の筆頭著者で、東フィンランド大学(フィンランド)生物医学/スポーツ・運動医学研究所のJulia Kettinen氏は、「ゴルフは体を動かす意欲を高め、あまり距離を意識せずに長く歩けるという点でも優れた運動方法である」と述べている。この研究は、「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に2月6日掲載された。

慢性期統合失調症患者の認知機能に対する抗精神病薬、抗コリン薬の影響

 精神疾患の治療には、さまざまな向精神薬が用いられるが、その多くは抗コリン作用を有しており、認知機能を低下させる可能性がある。フランス・Lebanese American UniversityのChadia Haddad氏らは、抗コリン作動性負荷と抗精神病薬の用量に焦点を当て、神経心理学的障害や症状の治療に用いられる薬剤と統合失調症患者の認知機能との関連を評価した。その結果、慢性期統合失調症患者の認知機能は、薬物療法や抗コリン作動性負荷の影響を受ける可能性があることを報告した。BMC Psychiatry誌2023年1月24日号の報告

動脈硬化は睡眠が不規則な人ほど発症する可能性が高かった

 睡眠不足や不規則な睡眠というのは心血管疾患や2型糖尿病などの発症に関連しているが、アテローム性動脈硬化との関連性についてはあまり知られていない。そこで、米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告。