医療一般|page:113

蛋白同化ステロイドは使用中止後も長期にわたり健康にダメージを及ぼす

 多くの副作用のあることが明らかであるにもかかわらず、筋肉量の増加やパフォーマンスの向上という誘惑を断ち切れずに、蛋白同化ステロイドを利用しているボディービルダーやアスリートが存在する。しかし、たとえ同薬の使用を中止しても、健康への悪影響は長期間続くことを示す2件の研究結果が、第25回欧州内分泌学会(ECE2023、5月13~16日、トルコ・イスタンブール)で報告された。いずれも、コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のYeliz Bulut氏が発表した。同氏は、「ドーピングを行っている人々へのメッセージは明らかであり、それをやめることだ」と語っている。

EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブのOS解析結果(ADAURA)/ASCO2023

 オシメルチニブは第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であり、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における術後補助療法、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発NSCLCを効能・効果として承認されている。これまで、病理病期IB~IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、術後補助療法としてのオシメルチニブの有用性を検証した、国際共同第III相無作為化比較試験「ADAURA試験」において、最終解析時においても無病生存期間(DFS)が有意に改善したことが報告されていた。

高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者への術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加を検討したmonarchE試験において、65歳以上の高齢患者においても管理可能な安全性プロファイルと治療効果が得られることが示された。米国・Sarah Cannon Research Institute at Tennessee OncologyのErika P. Hamilton氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

大卒の社会人、ADHD特性レベルが高いのは?

 これまで、成人の注意欠如多動症(ADHD)と社会人口学的特徴を検討した研究の多くは、ADHDと診断された患者を対象としており、一般集団におけるADHD特性について調査した研究は、ほとんどなかった。また、大学在学中には問題がみられず、就職した後にADHD特性を発現するケースが少なくない。国際医療福祉大学の鈴木 知子氏らは、大卒の日本人労働者におけるADHD特性と社会人口学的特徴との関連について、調査を行った。その結果、大学を無事に卒業したにもかかわらず、大卒労働者ではADHD特性レベルは高いことから、ADHD特性レベルを適切に評価し、健康の悪化や予防をサポートする必要性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月5日号の報告。

重症/治療困難なアトピー性皮膚炎、経口アブロシチニブvs.デュピルマブ

 重症および/または治療困難なアトピー性皮膚炎(AD)患者において、アブロシチニブはプラセボやデュピルマブよりも、迅速かつ大幅な皮疹消失とQOL改善をもたらした。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが、第III相無作為化試験「JADE COMPARE試験」のサブグループについて行った事後解析の結果を報告した。著者は、「これらの結果は、重症および/または治療困難なADへのアブロシチニブ使用を支持するものである」とまとめている。重症および/または治療困難なADに関するデータはこれまで限定的であった。JADE COMPARE試験では、外用薬治療を受ける中等症~重症ADへのアブロシチニブ併用がプラセボ併用と比べて症状改善が大きいこと、デュピルマブ併用と比べてそう痒の改善が大きいことが示されていた。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2023年5月22日号掲載の報告。

Long COVIDは5タイプに分類できる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期を過ぎた後に何らかの症状が遷延する、いわゆる「long COVID」は、5タイプに分類可能であるとする論文が「Clinical and Experimental Medicine」に4月7日掲載された。聖マリアンナ医科大学総合診療内科の土田知也氏らによる研究によるもので、就労に影響が生じやすいタイプも特定された。  Long COVIDは長期間にわたり生活の質(QOL)を低下させ、就労にも影響が及ぶことがある。現在、治療法の確立が急がれているものの、long COVIDの病態の複雑さや多彩な症状を評価することの困難さなどのために、新規治療法の有効性を検討する臨床試験の実施にも高いハードルがある。そのため、まずlong COVIDをいくつかのタイプに分類して、それぞれのタイプを特徴付けるという試みが始まっており、海外発のそのような研究報告も存在する。ただし、QOL低下につながりやすい就労への影響という点を勘案した分類は、まだ提案されていない。土田氏らの研究は、以上を背景として行われた。

CKDに対する集学的治療で腎機能低下が抑制される

 慢性腎臓病(CKD)に対する集学的治療(MDC)の有効性を示すエビデンスが報告された。MDC介入後には腎機能(eGFR)低下速度が有意に抑制されるという。国内多施設共同研究の結果であり、日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科の阿部雅紀氏らによる論文が「Clinical and Experimental Nephrology」に3月31日掲載された。MDCに携わるスタッフの職種数や介入回数が多いほど、腎代替療法や全死亡のリスクが低下するというデータも示されている。  CKDが進行すると生命維持のために腎代替療法(透析または腎移植)が必要となるなど、患者本人のQOLが低下するだけでなく医療経済的な負担も大きくなる。

高リスクStageII/III早期乳がんでの術後内分泌療法+ribociclib、iDFSを改善(NATALEE)/ASCO2023

 再発リスクの高いHR+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による効果については、すでにアベマシクリブが無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善したことがmonarchE試験で確認されている。ribociclibについては、リンパ節転移のない患者を含む再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い集団を対象に第III相NATALEE試験が進行している。その主要評価項目であるiDFSについて、第2回中間解析の結果、有意に改善したことが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏により発表された。

日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。

治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は、公衆衛生上の問題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病(TRD)に対するBZD長期使用の影響に関するデータは、十分とはいえない。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。

早期に禁煙していた人は肺がんになっても死亡リスクが低い

 肺がんになる前に禁煙していた人は、肺がんが見つかった時にも喫煙していた人よりも、発がん後の死亡リスクが低いことを示すデータが報告された。米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のDavid Christiani氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月5日掲載された。  喫煙者の肺がんリスクが高いことは広く知られているが、喫煙者が禁煙した後に肺がんに罹患した場合の予後への影響はよく分かっていなかった。今回の研究によって、肺がんと診断された時点で喫煙習慣のあった人は、喫煙歴のない肺がん患者に比べて死亡リスクが68%高いのに対して、診断前に禁煙していた人のリスク上昇幅は26%であることが示された。また、禁煙期間が長ければ長いほど、肺がん診断後の死亡リスクが低いという関連があることも明らかになった。Christiani氏は、「この結果により、禁煙すれば、たとえ肺がんになってもメリットを得られると、力強く言えるようになった」と語っている。

肺炎への抗菌薬、静注から経口に早期切り替えで入院期間短縮か

 肺炎により入院した患者は、通常、状態が安定するまで静脈注射(IV)用の抗菌薬(以下、IV抗菌薬)を投与される。しかし、市中肺炎に罹患した患者の多くでは、もっと早い段階でIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えた方が早期退院につながる可能性のあることが新たな研究で示された。米クリーブランドクリニック・コミュニティーケアのAbhishek Deshpande氏らによるこの研究結果は、「Clinical Infectious Diseases」に4月3日掲載された。

女性の腰痛にはストレスから来る“冷え”が関与?―日本人対象横断研究

 女性の腰痛に関連のある因子をWeb調査で検討した結果が報告された。敦賀市立看護大学の萬代望氏と関西医療大学の渡邉真弓氏、武田時昌氏、新潟大学の富山智香子氏、福島県立医科大学の二階堂琢也氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Research Notes」に1月30日掲載された。“冷え”を訴え、実際に体温が低い人に腰痛が多く、その背後には精神的ストレスが関係している可能性が想定されるという。  腰痛は、日本人女性が訴える慢性症状として肩こりに次いで2番目に多いと報告されている。整形外科的疾患の症状として腰痛が現れることもあるが、詳しい検査をしても原因が見つからない「非特異的腰痛」が少なくない。非特異的腰痛の予防・改善には、その発症に関連のある因子を特定することが求められる。

日本における睡眠薬の使用パターン~レセプトデータ分析

 不眠症の最適な治療法に関するコンセンサスは、限られている。近年、オレキシン受容体拮抗薬の導入により、利用可能な治療選択肢が増加してきたが、日本における睡眠薬使用パターンを包括的に評価した報告は、行われていなかった。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症治療における睡眠薬のリアルワールドでの使用パターンを調査するため、レセプトデータベースの分析を行った。その結果、日本における睡眠薬の新規使用患者および長期使用患者では、明確な使用パターンおよび傾向が認められた。著者らは、睡眠薬のリスクとベネフィットに関するエビデンスを蓄積し、不眠症に対する治療選択肢をさらに理解することは、リアルワールドにおいて睡眠薬を使用する医師にとって有益であろうとしている。BMC Psychiatry誌2023年4月20日号の報告。

「日本版CDC」2025年度創設へ、参議院で可決

 今後の感染症流行に備え、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を設立するための法律が、5月31日の参議院本会議で可決、成立した。米国疾病管理予防センター(CDC)をモデルとして、2025年度に国立健康危機管理研究機構が創設される予定。感染症その他の疾患に関し、調査研究、医療の提供、人材の養成等を行うとともに、国民の生命および健康に重大な影響を与える恐れがある感染症の発生および蔓延時において、疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し科学的知見を提供できる体制の強化を図る。

大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。  コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。

アスリートの睡眠習慣は食事に左右される?

 早寝早起きの生活にしたいのなら、食べ物をアレンジしてみると良いかもしれない。新たに報告された研究によると、何を食べるかによって、睡眠パターンが異なる可能性があるという。米ウエストバージニア大学のLauren Rentz氏らが、大学生アスリートを対象に行った小規模な研究の結果であり、米国生理学会(APS2023、4月20~23日、米国・ロングビーチ)で発表された。  Rentz氏によると、「アスリートの成功にとって、試合時に自分のパフォーマンスを最大化して発揮することだけでなく、試合やトレーニングの後の迅速な回復も重要。良い睡眠習慣が日々の身体的・精神的ストレスからの回復を促し、将来のパフォーマンスに好影響を与える」とのことだ。ただし、「常に強いストレスにさらされているアスリートの回復戦略における、睡眠と栄養素摂取の関係はまだほとんど知られていない」と、同氏は研究の背景を語っている。

抑うつ症状の強い女性には下部尿路症状が多い――国内ネット調査

 日本人女性では、頻尿や尿失禁などの下部尿路症状と抑うつ症状との間に有意な関連のあることが明らかになった。特に若年女性で、より強固な関連が認められたという。横浜市立大学附属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の河原崇司氏らが行ったインターネット調査の結果であり、詳細は「Lower Urinary Tract Symptoms」に3月30日掲載された。  頻尿、尿意切迫感、尿失禁、排尿後の尿漏れといった下部尿路症状(LUTS)は加齢とともに増え、特に女性では尿失禁や尿漏れが男性に比べて起こりやすい。LUTSは命にかかわるものではないものの、生活の質(QOL)を大きく低下させる。一方、うつ病も女性に多い疾患であり、かつ、うつ病は時に命にかかわることがある。これまで海外からは、女性のLUTSがうつ病リスクに関連していることを示す研究結果が報告されている。ただし、それを否定する研究もあり、また日本人女性対象の研究報告はまだない。河原氏らの研究は以上を背景として行われた。

境界性パーソナリティ障害に有効な治療は~リアルワールドデータより

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者の多くは精神薬理学的治療を受けているが、BPDに関する臨床ガイドラインには、薬物療法の役割についてのコンセンサスはない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、BPDに対する薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、注意欠如多動症(ADHD)の治療薬が、BPD患者の精神科再入院、すべての原因による入院または死亡のリスク低下と関連していることが示唆された。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

米CDCが今夏のサル痘再流行の可能性について警告

 米疾病対策センター(CDC)は5月15日、ヘルス・アラート・ネットワークを通して、サル痘ウイルスに感染するリスクのある人にワクチンを接種するよう呼びかけた。背景には、2022年夏にピークに達して以降、徐々に減少していたサル痘(2023年2月にエムポックスに名称変更)の罹患者数が再び増加に転じる可能性に対する危惧がある。CDCは、「人々が集うフェスティバルやその他のイベントを通して、2023年の春から夏にかけてサル痘が再び流行する可能性がある」と述べている。