医療一般|page:142

冬に眠れない人は朝の光を浴びると効果的

 夜にぐっすりと眠るには、たとえ曇天でも、日中に少しなりとも外に出る方が良いことが、米シアトルのワシントン大学の学生を対象にした研究で明らかにされた。研究論文の上席著者で同大学生物学教授のHoracio de la Iglesia氏は、「人間の体には生まれつき概日時計が備わっている。太陽が出ている日中に十分な光を浴びないと、この時計に遅れが生じ、夜眠くなる時間も遅くなる」と説明している。研究の詳細は、「Journal of Pineal Research」に11月20日掲載された。  今回の研究では、2015年から2018年にかけて、ワシントン大学の学部生507人に、秋から夏までの4学期のそれぞれで、2週間にわたって手首に活動状態と光への曝露を測定する時計型のデバイスを装着してもらい、そのデータから睡眠パターンと日光曝露について評価した。

「All of Us」プログラム、健康に関わる遺伝子情報を15万人以上の参加者に提供

 米国立衛生研究所(NIH)は12月13日に発表したニュースリリースで、NIHが進める大規模な遺伝子研究プログラム「All of Us Research Program」(以下、All of Usプログラム)の参加者のうち、すでに15万5,000人以上が自身の健康に関わるゲノム解析の結果を受け取っていることを報じた。この解析結果を見れば、自分が特定の疾患を発症するリスクが高いのかどうかが分かるという。  All of Usプログラムは、個別化医療の研究開発を推し進めるために、米国の100万人以上の人から健康関連の情報を集めてデータベースを構築することを目的としている。All of Usプログラムのチーフエグゼクティブオフィサーを務めるJosh Denny氏は、「“知は力なり”というように、物事を深く知ることは大きな力となる。健康に関わるDNA情報をプログラム参加者に提供することで、われわれは研究のパラダイムを変えようとしている。つまり、われわれが科学的な発見を得るだけでなく、参加者も自分の健康維持に役立つ遺伝情報を得るという、双方向的な関係を築こうとしているのだ」と説明。同氏はさらに、「プログラム参加者と結ぶこのようなパートナーシップは、信用を築き、全ての人に有意義な洞察を提供するという、われわれが自身に課した責任を果たすためには不可欠だ」とNIHのニュースリリースで語っている。

日本人統合失調症入院患者における残存歯数とBMIとの関係

 統合失調症入院患者において、BMIに対する歯の状態の影響に関するエビデンスはほとんどない。新潟大学の大竹 将貴氏らは、日本人統合失調症入院患者の残存歯数とBMIとの関連を調査するため、横断的研究を実施した。その結果、歯の喪失や抗精神病薬の多剤併用が統合失調症入院患者のBMIに影響を及ぼすこと、また、統合失調症入院患者は一般集団よりも歯の喪失が多いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月7日号の報告。  統合失調症入院患者212例を対象に、BMIに対する潜在的な予想因子(年齢、性別、残存歯数、抗精神病薬処方数、クロルプロマジン換算量、抗精神病薬の種類)の影響を評価するため、重回帰分析を行った。次に、統合失調症入院患者と日本人一般集団3,283例(平成28年歯科疾患実態調査[2016年])の残存歯数を比較するため、年齢および性別を共変量として共分散分析を行った。

コロナ患者に接する医療者の感染予防効果、N95 vs.サージカルマスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に接する医療者のマスクの種類によるCOVID-19予防効果を調査したところ、サージカルマスクはN95マスクと比較して非劣性であったことが、カナダ・マックマスター大学のMark Loeb氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験の結果、明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年11月29日号掲載の報告。  N95マスクと比較して、サージカルマスクがCOVID-19に対して同様の感染予防効果があるかどうかは不明であった。そこで研究グループは、サージカルマスクはN95マスクに劣らないという仮説を立てて検証を行った。

心不全の補完代替療法についてAHAがステートメントを発表

 米国心臓協会(AHA)は、心不全の補完代替療法に関する科学的ステートメントをまとめ、「Circulation」に12月8日掲載した。魚油サプリメント、各種ビタミン、コエンザイムQ10、ヨガ、太極拳などについて、現時点のエビデンスを総括した上で、推奨や注意事項などを述べている。  米国の20歳以上の心不全患者数は約600万人であり、その3割程度が補完代替療法を利用していると推測されている。ステートメントの筆頭著者である米ウエスタン健康科学大学のSheryl Chow氏は、「補完代替療法に用いられている製品は、米食品医薬品局(FDA)の規制をほとんど受けないため、メーカーは有効性や安全性を実証する必要がない。医療専門職者と消費者の双方が、メリットの可能性と潜在的なリスクについて学び、最新の情報を共有した上で意思決定することが重要だ」と述べている。また消費者に対して、「多くの人が、それらの商品がFDAの規制対象外の製品であることを知らずに利用している。同じ成分名で販売されていたとしても、含有量や純度は製品によって大きく異なることもある。よって使用に際しては、まず医療チームに相談すべき」と助言している。

人には聞こえない音が食後の血糖上昇を抑える可能性

 人の耳には聞こえない超高周波が含まれている音が流れている環境では、ブドウ糖負荷後(日常生活では食後に相当)の血糖値の上昇が抑制される可能性が報告された。国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第七部の本田学氏、国際科学振興財団の河合徳枝氏らの研究によるものであり、結果の詳細は「Scientific Reports」に11月2日掲載された。  メンタルヘルス関連の病気だけでなく、糖尿病や高血圧などの身体疾患の病状にもストレスが深く関与していることが知られている。そのため、ストレスを抑制する心理的なアプローチが試みられることもあるが、ストレスの原因や効果的な対処法は人それぞれ異なることから、実用性は限定的。一方、脳の情報処理メカニズムに着目し、音や光などの刺激を用いた新たな治療法の確立を目指す、「情報医学・情報医療」という研究が続けられている。

オミクロン株XBB.1の細胞侵入効率と免疫回避能

 2022年1月、新型コロナウイルスのオミクロン株XBB系統がインドで初めて検出され、アジアと欧州で増加している。XBB系統は主に5つの亜系統(XBB.1~5)が派生し、ほとんどがXBB.1である。ドイツ・German Primate CenterのPrerna Arora氏らは、XBB.1系統の宿主細胞への侵入と抗体による中和を回避する能力を初めて評価した。その結果、ワクチンを4回接種した人や3回接種後にBA.5に感染した人においてもXBB.1の中和回避能が非常に高いことがわかった。また、この高い中和回避能は、細胞侵入効率の若干の低下と引き換えにもたらされた可能性が示唆された。Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年1月5日号に掲載。

mRNA-4157/V940・ペムブロリズマブ併用で悪性黒色腫患者に対する主要評価項目達成/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)は2022年12月13日付のプレスリリースで、完全切除後の再発リスクが高いStageIII/IVの悪性黒色腫患者において、研究中の個別化mRNAがんワクチンであるmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を併用した場合、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、疾患の再発または死亡のリスクが統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示すことが示されたと発表した。

うつ病治療ガイドラインの実践状況を把握する客観的指標IFS

 日本うつ病学会の治療ガイドラインでは、うつ病の重症度別に推奨される治療法が定められている。治療ガイドラインは、実臨床で治療決定を促すためのツールとして用いられ、患者や医療従事者を支援するよう設計されている。精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)のメンバーである岩手医科大学の福本 健太郎氏らは、各患者がうつ病ガイドラインの推奨に従って治療を実践しているかを評価するための客観的指標として、個別フィットネススコア(IFS)を開発した。IFSは、個々の患者におけるガイドラインに基づく治療の実践状況を客観的に評価できることから、ガイドラインに準じた治療行動に影響を及ぼし、薬物療法を含めた日本におけるうつ病治療の標準化につながる可能性が期待できるとしている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月16日号の報告。

ネット経由のテストステロン購入にリスクあり

 男性ホルモンのテストステロンをインターネット経由で入手することに注意を喚起する趣旨の研究結果が、「JAMA Internal Medicine」12月号にレターとして掲載された。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のJoshua Halpern氏らの研究によるもの。サイト訪問者が、自分のテストステロン値は基準値内であることを伝えているのにもかかわらず、大半のサイトが販売を断ることはなく、入手手続きを進められたという。  米国の成人男性の中には、筋力アップや勃起機能の改善などの目的のため、テストステロン療法に期待を寄せている人が少なくない。そのニーズに応え、ネット経由でテストステロンを販売するサイトが増えていて、勃起障害などへの効果をほのめかす文句を掲げている販売サイトへの訪問数は、2017年から2019年の間に1,500%増加したとされている。Halpern氏らは、それらの販売サイトが安全性にどの程度配慮しているのかを調査した。7サイトを調べた結果、ほとんどのサイトはテストステロン欠乏症でない男性に販売することをいとわず、テストステロン療法の潜在的なリスクを伝えることもなかった。  Halpern氏は、「テストステロン欠乏症は活力や性欲低下の一因であり、欠乏状態が確認された男性へのテストステロン投与は確立された治療法であって、多くの男性の生活の質(QOL)を改善し得る。また、医師の判断で適切に使用された場合、一般的に安全と見なされている」と解説。ただしその一方で、「テストステロンは米麻薬取締局によって規制物質とされ、中毒のリスクもある。通常は泌尿器科や内分泌科の医師が処方し、薬剤師を介して手渡される医薬品だ。また、適切に使用されていても、多血症、血栓・出血、心臓発作・脳卒中、不妊症などのリスクとなることがある」という。

lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは2023年1月7日付のプレスリリースで、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体lecanemabについて、米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したことを発表した。  本承認は、lecanemabがADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくもので、エーザイでは最近発表した大規模なグローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータを用い、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)をFDAに対して速やかに行うとしている。

TN乳がんへの術前CBDCA+PTXにアテゾリズマブ追加でpCR改善/第II相試験

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法として、アントラサイクリンを含まないカルボプラチン(CBDCA)+パクリタキセル(PTX)にアテゾリズマブの追加を評価する無作為化第II相試験において、病理学的完全奏効(pCR)率の有意な増加が示された。米国・ワシントン大学のFoluso O. Ademuyiwa氏らが、NPJ Breast Cancer誌2022年12月30日号に報告。  これまで、転移を有するPD-L1陽性TNBCを対象としたIMpassion130試験ではnab-PTXへのアテゾリズマブ追加による無増悪生存期間と全生存期間の改善、また早期TNBCを対象としたIMpassion031試験ではアテゾリズマブとアントラサイクリンおよびタキサンをベースとした術前化学療法によるpCR改善が報告されている。

“適切な水分補給”、その意義は?

 適切な水分補給をしている人は、慢性疾患発症リスクが低く、長生きであったことを米国国立衛生研究所(NIH)心肺血液研究所のNatalia I. Dmitrieva氏らが明らかにした。eBioMedicine誌2023年1月2日掲載の報告。  マウスでは、水分補給を制限することで、生存期間の短縮や退行性変化の促進がみられることが報告されている。そこで、著者らの研究グループは、適切な水分補給が老化を遅らせるという仮説を立て、45~66歳の成人を対象にその仮説を検証した。

交代勤務や夜勤と将来の認知症リスク~メタ解析

 交代勤務や夜勤が認知症リスクと関連しているかについては、相反するエビデンスが報告されている。中国・First Clinical Medical College of Shaanxi University of Traditional Chinese MedicineのZhen-Zhi Wang氏らは、交代勤務や夜勤と認知症との潜在的な関連性を明らかにするため、関連文献をシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。その結果、夜勤は認知症のリスク因子である可能性が示唆された。Frontiers in Neurology誌2022年11月7日号の報告。  交代勤務や夜勤と認知症との関連を調査するため、2022年1月1日までに公表された文献をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。独立した2人の研究者により、検索した文献、抽出データの適格性がレビューされた。PRISMAガイドラインに従ってシステマティック評価およびメタ解析を実施した。メタ解析には、Stata 16.0を用いた。

非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

 日本全体で約1,000万人の潜在患者がいるとされる喘息。その約70%が何らかの症状を有し、喘息をコントロールできていないという。吸入ステロイド薬(ICS)の普及により、喘息による死亡(喘息死)は年々減少しているものの、2020年においても年間1,158人報告されているのが現状である。そこで、2020年に日本喘息学会が設立され、2021年には非専門医向けの喘息診療実践ガイドラインが発刊、2022年に改訂された。喘息診療実践ガイドライン発刊の経緯やポイントについて、日本喘息学会理事長の東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)に話を聞いた。

スマホやタブレットをベビーシッター代わりに使うと後でしっぺ返しを食らう?

 電話が鳴ったときや夕食を食べ始めようとするときに限って、幼いわが子が騒ぎ始める。そんな経験のある人は多いはずだ。そんなときには、iPadやスマートフォン(スマホ)などのデバイスを与えて子どもを落ち着かせ、用事を済ませる親もいるだろう。しかし、それがお決まりの対応策になっている場合には、子どもが長期的に行動上の問題を抱えるようになるリスクがあり、特に男児と、もともと多動性あるいは衝動性のある子どもでは、そのリスクが高い可能性のあることが、米ミシガン大学小児病院のJenny Radesky氏らの研究で示唆された。詳細は、「JAMA Pediatrics」に12月12日掲載された。

HER2+乳がん脳転移例、tucatinib追加でOSを約9ヵ月延長(HER2CLIMB)/JAMA Oncol

 HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者の最大50%が脳転移を有し、予後不良とされている。脳転移症例を含むHER2+MBCに対するトラスツズマブ、カペシタビンへのtucatinib追加投与の有効性を検討したHER2CLIMB試験について、探索的サブグループ解析の最新フォローアップデータを、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏らがJAMA Oncology誌オンライン版2022年12月1日号に報告した。

抗精神病薬治療の有効性を予測可能なタイミング

 抗精神病薬の初期の臨床効果が、その後の治療アウトカムにどの程度影響を及ぼすかは、明らかになっていない。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのYiguo Tang氏らは、2週時点での抗精神病薬の有効性が、6週時点の治療反応を予測できるかを評価した。また、治療反応の予測が、抗精神病薬や精神症状の違いにより異なるかも検討した。その結果、抗精神病薬治療2週時点でのPANSS合計スコアの減少率や精神症状の改善は、6週時点の臨床的な治療反応を予測することが示された。Current Neuropharmacology誌オンライン版2022年11月18日号の報告。

高齢者施設での新型コロナ被害を最小限にするために/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第112回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月28日に開催された。その中で「高齢者・障がい者施設における被害を最小限にするために」が、舘田 一博氏(東邦大学医学部教授)らのグループより発表された。  このレポートでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると死亡などのリスクの高い、高齢者・障害者を念頭に大人数が集まるケア施設内などでのクラスター感染を防ぐための対応や具体的な取り組み法として、健康チェック、ワクチン、早期診断と対応、早期治療、予防投与が可能な薬剤、リスク時の対応、保健所や医療機関との連携などが示されている。