医療一般|page:142

喘息の悪化、寒い時期だけでなく夏の高温でも増加か

 喘息症状の発現や増悪には冷気の吸入、大気汚染物質やアレルゲンの吸入などが関連していることが知られている。気温の高さが喘息による入院の増加に関連するという報告も存在し、日本では姫路市の住民を対象とした研究において、夏季に気温が高くなると夜間の喘息増悪による来院が増加したことが報告されている。しかし、研究間で結果は一貫していない。また、年齢や性別、時間(日時)、地理的な要因による違いや交絡因子の影響は明らかになっていない。そこで、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのGaryfallos Konstantinoudis氏らは、イングランド全土における2002~19年の夏季の喘息による入院を調査した。その結果、交絡因子を調整しても夏季の気温上昇が喘息による入院リスクを上昇させ、その影響は16~64歳の男性で大きく、時間の経過と共に小さくなる傾向にあることが示された。Thorax誌オンライン版2023年4月17日号の報告。

東京五輪で一番けがの多かった競技は何か

 私たちに感動をもたらした「2020年東京オリンピック夏季大会」(2021年7月開催)。東京オリンピックの開催期間中、アスリート達にはどのようなけがや病気が多かったのであろう。国士館大学体育学部スポーツ医科学科の田中 秀治氏らの研究グループは、東京オリンピック夏季大会で発生したけがや病気を分析し、発表した。British Journal of Sports Medicine誌オンライン版2023年4月13日号に掲載。

米FDA、早産予防のための注射薬Makenaの承認撤回

 米食品医薬品局(FDA)は4月6日、早産予防を適応として販売されていたヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル注射液(米国での商品名Makena)の承認を正式に撤回した。  同薬は、自然早産の既往を有する単胎妊娠女性の早産リスクを低減するとして、FDAの迅速承認プログラムで2011年に初承認された。しかし、迅速承認の条件となっていた市販後の臨床研究で、その有効性が疑問視されるとともに、血栓やうつ病などの深刻な副作用の発生が指摘されていた。

脊髄刺激療法で治療抵抗性の糖尿病性神経障害が改善

 治療抵抗性の有痛性糖尿病性神経障害(painful diabetic neuropathy;PDN)に対する脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)の有用性が報告された。患者の疼痛症状の改善に加えて神経学的評価の改善も認められたという。米アーカンソー大学のErika Petersen氏らが行った無作為化比較試験の報告であり、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月28日にオンラインで公開された。  米国の糖尿病患者数は約3700万人とされており、最大でその25%がPDNに罹患しているとされる。PDNに対してはさまざまな治療薬が臨床応用されているが、それらの治療に抵抗性を示す患者も少なくない。Petersen氏らは、そのような治療抵抗性PDN患者に対するSCSの安全性と有効性を検討した。

新型コロナ5類移行、今後の対応5点を発表/厚労省

 厚生労働省は4月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、5月8日より、感染症法上の位置づけを「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に移行することを正式に決定したことを発表した。本決定は、国内におけるオミクロン株XBB.1.5系統やXBB.1.9系統の増加の動きはあるものの、重症度の上昇を示す知見は確認されていないことや、現時点での病床使用率や重症病床使用率は全国的に低い水準にあることが確認されたことに基づいている。5類移行により、これまでの法律に基づき行政が要請・関与する仕組みから、個人の選択を尊重し、国民の自主的な取り組みを基本とする対応に転換する。

仕事依存症になりやすい人の特徴

 リトアニア・ビータウタス・マグヌス大学のModesta Morkeviciute氏らは、完璧主義・タイプA性格・仕事依存症の関係性を、仕事に対する外因性のモチベーション、親の仕事依存度および要求が厳しい組織の影響を介し調査した。その結果、仕事依存症は個人の性格的な要因を発端とし、家族や組織の状況などが個人の性格的な要因の表出を高め、仕事依存症の発現を促進する可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年3月4日号の報告。

糖尿病のある人を知らずに傷つける糖尿病スティグマ/糖尿病学の進歩

 2月17日・18日に東京・東京国際フォーラムで「第57回 糖尿病学の進歩」(世話人:馬場園 哲也氏[東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科学分野 教授・基幹分野長])が開催された。  近年、「糖尿病」という病名について患者や医療者から疑問の声が出され、糖尿病というネガティブなイメージからさまざまな不利益を受けていることも表面化している。そこで本稿では、「糖尿病診療に必要な知識」より「糖尿病スティグマとアドボカシー活動」(田中 永昭氏[国家公務員共済組合 枚方公済病院 内分泌代謝内科])の内容をお届けする。

サル痘の意外な臨床的特徴と発現率は?~メタ解析

 サル痘(mpox)は、これまでは主にアフリカ中央部から西部を常在国として発生してきたが、2022年5月以降は欧米を中心に世界各地で8万6,000例以上が報告されている(2023年3月24日時点)。潜伏期間は通常6~13日(最大5~21日)で、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状に続いて発疹が出現するが、常在国以外での感染例では、これまでのサル痘の症状とは異なる所見が報告されている。

AIを使い、初診診断書でがん患者の生存を予測

 自然言語処理(NLP)は、人工知能(AI)の一分野であり、コンピュータによって人間の言語を理解、生成、操作することを可能にする技術全般を指す。NLPを使って初診の診断書を解析し、がん患者の予後を予測することが可能であることを示唆する研究が、JAMA Network Open誌2023年2月27日号に掲載された。  ブリティッシュ コロンビア大学(カナダ)のJohn-Jose Nunez氏らによる本研究では、2011年4月1日~2016年12月31日に、ブリティッシュ・コロンビア州にある6つのがんセンターのいずれかでがん治療を開始した患者のデータを使用した。死亡率データは2022年4月6日まで更新され、更新から2022年9月30日までのデータを分析した。診断から180日以内に作成された腫瘍内科医または放射線医の診察書を持つすべての患者を対象とし、診断書は診断日に最も近い文書を選択した。複数のがんで受診した患者は除外した。

新たなRSウイルスワクチン、高齢者と乳児の双方で効果を発揮

 ファイザー社が開発したRS(呼吸器合胞体)ウイルスワクチンは、高齢者と乳児の双方でRSウイルス感染症を安全かつ効果的に予防するという2件の臨床試験の結果が報告された。ファイザー社は、同ワクチンの高齢者に対する接種が5月までに、妊婦に対する接種が8月までに米食品医薬品(FDA)により承認されるものと見ている。これらの臨床試験の結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月5日掲載された。  RSウイルスに感染しても、通常は風邪様の症状が現れる程度だ。しかし米国では、1歳未満の子どもの気管支炎と肺炎の最も一般的な原因ウイルスがRSウイルスである。また、このウイルスは高齢者、特に健康状態が不良な人にリスクをもたらす。米疾病対策センター(CDC)によると、毎年、5万8,000〜8万人の5歳未満の子ども、および6万〜16万人の高齢者がRSウイルス感染症で入院し、さらに6,000〜1万人の高齢者が同感染症により死亡しているという。

うつ病に対する遠隔医療介入の有用性~メタ解析

 うつ病患者の抑うつ症状、QOL、仕事や社会的機能に対する遠隔医療介入の治療効果を明らかにするため、台湾・亜洲大学のYin-Hwa Shih氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入はうつ病患者の抑うつ症状の軽減やQOL向上に効果的であることが報告された。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。  2021年3月までに公表された文献を、6つの電子データベース(MEDLINE、PubMed、PsycINFO、Scopus、Embase、CINAHL)でシステマティックに検索した。各文献のリファレンスリストは手動で検索した。対象は、うつ病と診断された患者の遠隔医療介入の治療効果を調査したランダム化比較試験。質的評価には、Joanna Briggs Instituteのチェックリストを用いた。

AIは専門スタッフよりも心疾患の検出能力が高い?

 人工知能(AI)の心エコー画像解析能力は、専門スタッフ(超音波検査士)より高いことを示唆するデータが報告された。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のDavid Ouyang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に4月5日掲載された。  この研究では、3,495件の経胸壁心エコー検査の画像データを用いて、AIと超音波検査士のそれぞれが左室駆出率を評価。その評価結果を心臓専門医が見比べて、どちらの方が優れているかを検討した。心臓専門医は、評価結果のレポートがAIによるものか超音波検査士によるものかを知らされていなかった。この研究は、心臓病学領域で初のAI画像診断に関する、盲検化された無作為化比較試験だという。

リチウム濃度の高い水道水を摂取した母親の子どもは自閉症リスクが高い

 リチウム含有量が多い地域の水道水を摂取していた妊婦では、含有量が少ない地域の水道水を摂取していた妊婦と比べて、子どもが自閉症(ASD)になる確率が高いとする研究結果が報告された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)David Geffen School of Medicine神経学教授のBeate Ritz氏らが実施したこの研究は、「JAMA Pediatrics」に4月3日掲載された。  リチウムはアルカリ金属元素に分類される元素で、地殻内部に広範に分布している。リチウムには精神安定作用があることから、うつ病や双極性障害の治療に用いられることもある。しかし、妊娠中の女性に対する使用については、流産や子どもに先天性の異常が生じるリスクが否定できないことから、統一見解が得られていない。

早期の転移性セミノーマ患者に対してはリンパ節切除が第一選択肢に?

 精巣がん患者のうち、初期の転移性セミノーマ患者では、化学療法や放射線療法は必要ではなく、後腹膜(腹膜の外側と腹壁の間の腔)にあるリンパ節の切除〔後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)〕だけで十分であるという研究結果が報告された。研究論文の筆頭著者である、米南カリフォルニア大学ケック医学校の泌尿器科腫瘍医Siamak Daneshmand氏は、「試験対象者の大多数がRPLNDのみで治癒し、従来の化学療法や放射線療法に付随する毒性を回避できることが本研究で示された。われわれは、セミノーマに対するこの手術が、近い将来、治療ガイドラインに組み込まれることを確信している」と話している。研究の詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に3月13日掲載された。

ワクチン接種者はコロナ後遺症リスクが4割以上低い可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、「コロナ後遺症」と呼ばれる状態(post-COVID-19 condition;PCC)のリスクに関連する因子が報告された。女性や喫煙者、急性期に入院を要した人などはリスクが高く、反対にワクチン接種によってリスクが大幅に抑制されている可能性が示された。英イースト・アングリア大学のVassilios Vassiliou氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に3月23日掲載された。

腎臓のリスクを上げない飲酒量は?

 アルコールと疾患に関して過去のコホート研究では、アルコール摂取とタンパク尿と糸球体濾過量(GFR)低下を特徴とする慢性腎臓病との間に相反する関連性が報告されている。ただ、大量飲酒が腎臓に及ぼす影響を評価した研究は少なく、これまで一定の見解が得られていなかった。そこで山本 陵平氏(大阪大学 キャンパスライフ健康支援・相談センター)らの研究グループは、これまでに報告された疫学研究の結果を統合し、アルコール摂取量と腎臓病リスクの関係を解析した。その結果、1日60g程度(日本酒約3合)以上のアルコール摂取はタンパク尿リスクとなることを明らかにした。Nutrients誌2023年3月25日号に掲載。

術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023

 デュルバルマブを用いた術前・後レジメンが早期非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymatch氏が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2023)で発表した、術前化学療法とデュルバルマブの術前後補助療法の組み合わせを評価する第III相AEGEAN試験の結果である。

ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。

モノクローナル抗体薬で新型コロナによる入院や死亡のリスクが39%低下

 モノクローナル抗体薬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療において有効なツールであったようだ。米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)のKevin Kip氏らが、UPMCのCOVID-19患者データベースを分析したところ、検査での陽性判定から2日以内にモノクローナル抗体薬による治療を開始した患者では、同薬による治療を受けなかった患者と比べて入院や死亡のリスクが39%低下していたことが明らかになった。この研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月4日掲載された。

静脈を動脈の代用として下肢切断を回避

 米ペンシルベニア州ハーミテージ市のCynthia Elfordさん(63歳)は、1型糖尿病が原因で左脚を失った。日焼けした足の親指がその後黒っぽく変色し、切断を余儀なくされたのだ。そして彼女は、右脚も同じ状態になりつつあると言われていた。  手足に血液を送る動脈が狭くなる末梢動脈疾患(PAD)があると、下肢の切断を要する状態になりやすい。治癒を促す血流があまりにも少ないと、小さな傷などでも壊死してしまうことがあるためだ。しかし、侵襲性が極めて低い"LimFlow"と呼ばれるシステムを用いた実験段階の治療法のおかげで、Elfordさんは今のところ右脚を切断することなく過ごしている。この治療法は、虚血状態にある脚に新鮮な血液を送るために、静脈を動脈にかえるというものだ。LimFlowの安全性と有効性について調べる目的で実施された臨床研究では、治療を受けた患者の76%が下肢切断を回避できたという。この結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」3月30日号に発表された。