医療一般|page:221

統合失調症患者におけるCOVID-19罹患率と死亡リスクへの影響

 精神疾患患者は、身体的健康アウトカムが不良であることが知られており、とくに統合失調症スペクトラム障害患者では、大きな問題となっている。最近の研究において、統合失調症患者では、とくにCOVID-19による影響が大きいともいわれている。ギリシャ・テッサリー大学のSokratis E. Karaoulanis氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19のアウトカム不良リスクに関して、システマティックレビューを行った。Psychiatriki誌オンライン版2021年8月5日号の報告。

軽症高血圧患者の認知症リスクに対する血圧コントロールの影響

 高血圧は、認知症リスクを上昇させるといわれているが、低リスクの軽症高血圧患者における認知症リスクに関する研究は、これまでほとんど行われていなかった。韓国・延世大学校のChan Joo Lee氏らは、グレードIの高血圧患者の認知症リスクに対する血圧コントロールの影響について調査を行った。Journal of Hypertension誌2021年8月1日号の報告。  National Health Insurance Service National Health Examinee cohortより、2005~06年にグレードI高血圧(140~159/90~99mmHg)と診断された患者12万8,665例を対象とした。対象患者は、血圧コントロール群(フォローアップ期間中の平均血圧:140/90mmHg未満)と非血圧コントロール群(平均血圧:140/90mmHg以上)に分類し、2015年までフォローアップを行った。認知症リスクは、傾向スコアで調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。

ブレークスルー感染におけるリスク因子は?

 COVID-19ワクチンの2回接種を終了していても、その後感染するいわゆる「ブレークスルー感染」におけるリスク因子を調査した研究結果がThe Lancet Infectious diseases誌オンライン版9月1日号に掲載された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichela Antonelli氏らは、ワクチン接種後の感染におけるリスク因子を調査するために、英国のCOVID追跡アプリの利用者である成人から得られた自己申告データを用いた大規模なケースコントロール研究を行った。

アレルギー高リスク者、コロナワクチンによるアレルギー発症率は?

 新型コロナワクチンを接種したいもののアレルギー持ちだと、どうしても躊躇してしまう。とくに副反応が強く出やすい2回目となればなおさらである。今回、イスラエル・Sheba Medical CenterのRonen Shavit氏らは、アレルギーに対し高いリスクを有する患者について、ファイザー製の新型コロナワクチン(BNT162b2)のアレルギー反応/アナフィラキシーの影響について調査を行った。その結果、アレルギー性疾患の病歴を持つほとんどの患者は、医療施設で実装できるさまざまなアルゴリズムを使用すれば安全に接種できることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年8月31日号のOriginal Investigationとして掲載。

認知症のBPSDに対するタンドスピロンの有効性

 愛媛大学の越智 紳一郎氏らは、認知症の周辺症状(BPSD)に対するタンドスピロン(buspironeを改良したazapirone系抗不安薬)の有効性について、とくに超高齢者をターゲットとして検討を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2021年8月31日号の報告。  2013年8月~2018年8月に特別養護老人ホームでBPSDを有する高齢者を対象として、オープンラベル観察研究を行った。認知症の重症度の評価には臨床的認知症尺度(CDR)、BPSDの重症度の評価には臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)を用いた。主要アウトカムは、ベースラインからタンドスピロン維持療法到達4週間後のBPSD重症度の変化とした。タンドスピロンは、30mg/日から開始し、1日3回に分けて投与した。2週間後に看護記録に基づき有効性が十分であると確認された場合、タンドスピロンの投与を継続し、有効性が不十分な場合、タンドスピロンを40~60mg/日へ増量した。

日本人のがん患者の新型コロナウイルス抗体レベルは低いのか/JAMA Oncol

 がん患者における新型コロナ抗体レベルは健康成人と比べて低いのか。わが国のがん患者と、非がん罹患者としての医療者のあいだで、血清SARS-CoV-2抗体の状態を比較した国立がんセンター中央病院 矢崎 秀氏らの前向き研究が発表された。  対象は2020年8月3日~10月30日に、東京周辺の2つのがんセンターから、16歳以上のがん患者と医療者で前向きに登録された。  評価項目は、がん患者と医療者の血清有病率と抗体レベル。血清陽性の定義は、ヌクレオカプシドIgG(N-IgG)および/またはスパイクIgG(S-IgG)の陽性であった。がん患者は、薬物療法、外科手術、放射線療法などのがん治療を受けている。

麻酔を用いた出産と産後うつ病との関連~JECS研究

 産後うつ病は、出産後の女性が経験する最も一般的な精神疾患の1つであり、多くは1年以内に発症する。名古屋市立大学の鈴森 伸宏氏らは、日本において麻酔を用いた分娩が産後うつ病リスクの減少に影響を及ぼすかについて、検討を行った。BMC Pregnancy and Childbirth誌2021年7月23日号の報告。  麻酔を用いた分娩には、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下硬膜外麻酔、傍頸管ブロックを含めた。日本におけるプロスペクティブコホート研究であるJECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に登録された日本全国15地域の胎児記録データ10万4,065件を用いて検討を行った。麻酔の有無にかかわらず分娩様式と出産後1、6、12ヵ月の産後うつ病との関連について調整オッズ比(aOR)を算出するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。

Novavax社コロナワクチンの供給契約、追加接種への使用も視野に/厚労省

 厚生労働省は9月7日、米国・Novavax社から技術移管を受け、武田薬品工業が国内の生産および流通を行う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関し、日本における薬事承認などを前提に、早ければ2022年初頭から、おおむね1年間で1億5,000万回分の供給を受けることについて、武田薬品工業と契約を締結したと発表した。  武田薬品工業は、Novavax社との提携の一環として、国内自社工場においてCOVID-19ワクチン候補「TAK-019」(海外における開発コード:NVX-CoV2373)の生産能力の整備を進めており、22年初頭の供給開始を目指している。同社は国内臨床試験を実施し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への製造販売承認申請を行い、厚労省の承認取得後、国内供給を開始する予定。

アントラサイクリンベース化療中の乳がん、心保護薬の併用でLVEF低下を予防

 イタリア・フィレンツェ大学Lorenzo Livi氏らがアントラサイクリンベースの化学療法で治療を受けている乳がん患者の無症候性の心臓損傷を軽減できるかどうかを調査した結果、β遮断薬のビソプロロールやACE阻害薬のラミプリル(日本未承認)を投与することで、がん治療に関連するLVEF低下や心臓リモデリングから保護する可能性を示唆した。JAMA Oncology誌2021年8月26日号オンライン版ブリーフレポートでの報告。  本研究であるSAFE試験は、イタリアの8施設の腫瘍科で実施された多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験で、12ヵ月で心臓評価を完了した最初の174例に関する中間分析。対象者の募集は2015年7月~2020年6月の期間で、中間分析は2020年に実施された。

慢性片頭痛予防に対するフレマネズマブの有効性~日韓共同第III相試験

 慢性片頭痛に利用可能な予防的治療は、さまざまな有効性および安全性の問題により制限されている。片頭痛の病因に関連するカルシトニン遺伝子関連ペプチド経路を標的とするモノクローナル抗体であるフレマネズマブは、大規模な国際第III相臨床試験において、効果および忍容性の高さが確認されている。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本人および韓国人の慢性片頭痛患者に対するフレマネズマブの有効性および安全性について、評価を行った。Headache誌オンライン版2021年7月29日号の報告。

統合失調症に対する抗精神病薬未使用と死亡リスク

 抗精神病薬の使用が統合失調症患者の死亡率の上昇または低下と関連しているかは、よくわかっていない。大規模登録研究では、抗精神病薬を使用しないと死亡リスクが増加することが示唆されているが、プロスペクティブ研究での報告は十分ではない。ノルウェー・Haukeland University HospitalのMaria Fagerbakke Stromme氏らは、統合失調症の死亡率と抗精神病薬未使用との関連を調査するため、オープンコホート研究を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年7月21日号の報告。  対象は、ノルウェー・ベルゲンのHaukeland University Hospital精神科急性期病棟に10年間入院し、退院診断を受けた統合失調症患者696例。各患者における抗精神病薬の使用期間と未使用期間での比較を行うため、抗精神病薬の使用を時間依存変数としCox重回帰分析を行った。性別、入院時の年齢、精神科急性期病棟への入院数、アルコールおよび違法薬物の過剰使用、ベンゾジアゼピンおよび抗うつ薬の使用で調整を行った。

軽~中等症の新型コロナ治療薬sotrovimabを国内申請/GSK

 グラクソ・スミスクラインは9月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、sotrovimabについて同日付で国内における製造販売の承認申請を行ったと発表した。酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いCOVID-19患者を対象とし、点滴静注で用いる。海外第II/III相臨床試験(COMET-ICE試験)では、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者において、入院または死亡リスクが有意に低下することが示されており、厚生労働省に特例承認の適用を求めた。

アルツハイマー病患者の抑うつ症状に対する抗うつ薬治療の有効性~メタ解析

 抑うつ症状は、アルツハイマー病(AD)患者でみられる最も一般的な神経精神症状の1つである。現在の臨床現場では、AD患者の抑うつ症状に対する第1選択治療として、抗うつ薬治療が行われている。中国・Maoming People's HospitalのYanhong He氏らは、AD患者の抑うつ症状の治療における抗うつ薬の有効性に関するエビデンスをシステマティックに調査した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。  ランダム化比較試験のメタ解析を行うため、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、Embase、CNKIデータベースよりシステマティックに検索した。主要アウトカムは、平均うつ病スコアおよび安全性とし、副次的アウトカムは、認知機能とした。さまざまな治療による順位確率を推定するため、surface under the cumulative ranking curveを用いた。

ペグフィルグラスチムの自動投与デバイスを国内申請/協和キリン

 協和キリンは、2021年8月30日、テルモと共同開発中の持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(製品名:ジーラスタ))の自動投与デバイスについて、がん化学療法による発熱性好中球減少症注の発症抑制を適応症とした製造販売承認申請を厚生労働省に行った。  今回の申請は、協和キリンが実施した、安全性の評価を目的とする第I相臨床試験の結果に基づくもの。  ペグフィルグラスチムは、がん化学療法剤投与終了後の翌日以降に投与されるのが通常である。

妊婦のケアを厚く追記した改訂COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 8月31日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版」を公開した。  今回の改訂では、以下の5点が追記・修正された。 【2 臨床像の「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率などについて一部追記】  最新(2021年8月時点)の陽性患児の特徴などが追加された。 【4 重症度分類とマネジメントの「5.妊産婦の管理」の項を追加】  追加項目では、自宅療養中の妊婦の訪問時の確認事項、妊婦への指導事項のほか、妊婦搬送の判断の注意点、産科的管理以外のバイタルの留意事項、COVID-19患者の妊婦から産まれた新生児への検査が追加された。

うつ状態の変化が喫煙量に及ぼす影響

 韓国の喫煙率は、この10年間さまざまな喫煙コントロール政策が行われてきたにもかかわらず、わずか3%しか減少していない。そのため、喫煙者の心理学的特徴を考慮した政策を考える必要がある。一方、禁煙が失敗する要因として、うつ病との関連が示唆されている。韓国・延世大学校のSoo Hyun Kang氏らは、喫煙者のうつ状態の変化が1日の喫煙量(DCA)に及ぼす影響について、調査を行った。BMC Public Health誌2021年7月3日号の報告。  Korea Welfare Panel Study(KoWePS)のウェーブ3(2008年)~13(2018年)より抽出したサンプルを用いて検討を行った。調査時に1日で喫煙した紙巻きタバコの本数をDCAと定義した。うつ状態の評価には、うつ病自己評価尺度(CESD-11)を用いた。うつ症状の変化がDCAに及ぼす影響を評価するため、一般化推定方程式を用いた。うつ状態の変化により「NO→NO」群、「NO→YES」群、「YES→NO」群、「YES→YES」群に分類し評価した。

新型コロナワクチン、6~7月の有効率は95%/感染研

 国立感染症研究所は8月31日、ワクチンを接種して14日以上経過した者は未接種者と比較し感染のオッズが有意に低かったことから、さまざまな変異株が流行する状況においても国内承認ワクチンは有効であることを示唆した。また、ワクチンの接種回数、(短期的には)接種からの期間の長さによって有効率が高くなる傾向も明らかにした。  現在、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンの有効性は90%以上、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンも有効性は70%程度と報告されているが、変異株出現により有効性の低下が指摘されている。

COVID-19ワクチン接種率向上にリマインダーが有効

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、ワクチンの効果や安全性に疑問を持ち接種を避けるいわゆる「ワクチン忌避者」の存在が各国で問題となっている。忌避者を接種につなげるために効果的なコミュニケーション戦略についての研究結果が、Nature誌オンライン版2021年8月2日号に掲載された。  UCLA アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントで行動経済学を専門とするHengchen Dai氏らによる本研究では、メールによるリマインダーとその内容がワクチン接種率向上にどの程度寄与するのかを調査した。

新型コロナとインフルのワクチン接種間隔、現時点の考え方/日医

 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量とそれに伴う予約の設定についての留意点、新型コロナウイルスワクチン接種との接種間隔の考え方について、日本医師会の釜萢 敏常任理事は9月1日の定例会見で情報提供を行った。  今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量は、8月時点で約2,567万本から約2,792万本(1mL を1本に換算)の見込みであり、昨シーズンより減る見通しとなっている。同日開催された厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)において示された1)。とくに接種開始の 10 月供給量が少なく、供給時期が 12 月 2 週目まで続くことから、例年と比較して後ろにずれる見込みという。

モデルナ混入異物はステンレス片、接種後死亡は「相互関係なく偶発的」

 武田薬品工業は9月1日、同社が輸入および日本国内への供給を行う製造販売承認を取得している「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」について、ワクチン製造元であるモデルナ社との共同ステートメントを発表した。複数のワクチン接種会場から、モデルナワクチンの特定のロットでバイアル内に異物があるとの報告を受けて調査を進め、当該バイアルから得られた粒子状物質を詳細に分析した結果、ステンレススチールであると同定されたという。ワクチン接種後の死亡事例については、「現時点では、接種の因果関係があることは確認されておらず、相互関係なく偶発的に生じたもの」という認識を示した。