日本発エビデンス|page:54

統合失調症患者に対するアリピプラゾール持続性注射剤の投与経路変更の受け入れ調査

 統合失調症患者の服薬アドヒアランスを改善するために、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬が使用される。しかし、日本ではまだ一般的ではない。現在、アリピプラゾールLAIの投与は、臀部筋肉内に加え三角筋内への投与が可能となっている。名城大学の亀井 浩行氏らは、アリピプラゾールLAIの投与経路を臀部から三角筋へ変更することによる、患者の受け入れ状況について調査を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2020年2月29日号の報告。

冠動脈疾患における抗血栓療法にフォーカスしたガイドラインを公開/日本循環器学会

 日本循環器学会は2020年3月13日、「2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法」を学会ホームページに公開した。本ガイドラインは、2019年に発表された「急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)」と「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)」の2つのガイドラインの抗血栓療法に関して、発表後に多くの重要なエビデンスや新たな概念が発表されたことから、この内容にのみ焦点を当て作成された。

アルツハイマー病の認知機能やBPSDに対するスギの香りの影響

 秋田大学の高橋 裕哉氏らは、嗅覚神経刺激によりアルツハイマー病(AD)患者の認知症状が改善するかについて、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年2月9日号の報告。嗅覚機能障害のないAD患者を抽出するため、スティック型嗅覚同定能力検査を実施した。次に、これらの患者を介入群(19例)と対照群(17例)にランダムに割り付けた。嗅覚神経刺激の効果を評価するため、介入群には、スギからのアロマ成分を添加した消毒エタノールを用い、

インスリンポンプ療法に特化したQOL尺度を新規開発

 最近の1型糖尿病に対する先進的な糖尿病関連デバイスは、持続血糖モニタリング(CGM)や持続皮下インスリン注入療法(CSII)など、めざましい進歩を遂げている。  とくにインスリンポンプ療法は、毎回煩雑な手順を踏んで注射しなくてよいため、食事の際や高血糖時など、目標の血糖まで速やかに修正できるなどのメリットがある。一方、常に装着しておかなければならず、装着部位のかゆみや服の制約などのデメリットもある。

エリブリン治療における乳がん患者のOS予測因子は?(EMBRACE試験)

 局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者へのエリブリン治療における、全生存期間(OS)の予測因子が評価された。これまでに、好中球・リンパ球比(NLR)がエリブリン治療における無増悪生存期間(PFS)の予測因子となる可能性が示唆されている。兵庫医科大学の三好 康雄氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年3月5日号掲載の報告より。  研究グループは、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のあるMBC患者に対する、エリブリンと主治医選択薬(TPC)の有効性を比較した第III相EMBRACE試験のPost-Hoc解析を実施。ベースライン時のリンパ球絶対数(ALC)およびNLRとOSの関連が両群で評価された。

NSCLCの術後補助化学療法、適正レジメンは?(TORG 0503)/Lung Cancer

 日本発の、非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適正レジメンが示された。完全切除されたStage IB、IIおよびIIIAのNSCLCでは、術後補助化学療法が標準治療であるが、これまで最適な化学療法レジメンは決定されていない。日本医科大学呼吸器内科の久保田馨氏らは、これらの患者において望ましいプラチナベースの第3世代レジメンを選択する「TORG0503試験」を実施した。その結果、ドセタキセル+シスプラチン併用療法とパクリタキセル+カルボプラチン併用療法が、術後補助化学療法として安全に施行できることが示された。

東日本大震災プロスペクティブ研究:事前のソーシャルサポートと災害後のうつ病予防

 国立保健医療科学院の佐々木 由理氏らは、2011年の東日本大震災による高齢者の抑うつ症状を緩和するために、災害前のソーシャルサポートが有効であったかについて検討を行った。Scientific Reports誌2019年12月19日号の報告。  対象は、災害の7ヵ月前に日本老年学的評価研究の一環としてベースライン調査を完了した岩沼市在住の65歳以上の高齢者3,567例。フォローアップ調査は、災害から2.5年後に実施した。分析対象者2,293例の災害前のソーシャルサポート(emotional & instrumental help)の授受を4つの項目を用いて測定した。抑うつ症状は、GDS(カットオフ値4/5)を用いて評価した。

二日酔いにロキソプロフェンは本当に効くのか~日本人医師のRCT

 二日酔い症状の緩和にロキソプロフェンナトリウム(以下、ロキソプロフェン)が効くという言説。医療関係者ならば耳にしたことがあるかもしれないが、医学的に妥当なのだろうか。  今回、原 正彦氏(日本臨床研究学会 代表理事)が、二日酔いの症状緩和に対するロキソプロフェンの有効性を、医師を被験者としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験で検証したところ、頭痛を緩和する一方で全身倦怠感と吐き気は改善しないことが示された。Alcohol誌オンライン版で2020年3月3日に報告。

MMP-9と統合失調症患者の認知機能との関連

 マトリックスメタロプロテアーゼ-9(MMP-9)は、シナプス可塑性を調節することが示唆されており、統合失調症の病態生理に影響を及ぼす可能性がある。国立精神・神経医療研究センターの工藤 紀子氏らは、統合失調症患者におけるMMP-9の末梢血中レベルおよびその認知機能との関連、統合失調症の病態生理、とくに認知機能低下におけるMMP-9の関与について調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年2月5日号の報告。  統合失調症患者(抗精神病薬が投与されていない患者を含む)249例および健常対照者257例を対象に、血漿MMP-9レベルを測定した。統合失調症患者と健常対照者における血漿MMP-9レベルと認知機能との関連を調査するため、ウェクスラー成人知能検査第3版(WAIS-III)、ウェクスラー記憶検査(WMS-R)、レイ聴覚性言語学習テスト(AVLT)を用いた。

統合失調症患者のミスマッチ陰性電位とドパミンとの関連

 ミスマッチ陰性電位(MMN)欠損は、統合失調症の最も確実で再現可能な所見の1つであり、主にN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体システムの機能不全を反映している。ドパミン受容体は、短期的にMMNを調整しないことが知られているが、長期的な影響についてはよくわかっていない。福島県立医科大学の志賀 哲也氏らは、統合失調症患者のMMNとドパミンとの関連について、調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年1月28日号の報告。

喫煙者の高い認知症リスク、禁煙3年で軽減~大崎コホート研究

 禁煙と認知症リスクの変化について米国のARIC研究の結果が報告されているが、今回、東北大学のYukai Lu氏らが、日本の前向き研究である大崎コホートにおける縦断的分析の結果を報告した。本研究では、3年以上禁煙した場合、認知症発症リスクは非喫煙者と同じレベルまで低下することが示唆された。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月15日号に掲載。本研究の対象は65歳以上の日本人1万2,489人で、5.7年間追跡調査を実施した。2006年に喫煙状況およびその他の生活習慣の情報を質問票にて収集した。認知症発症に関するデータは、公的介護保険のデータベースから取得した。Cox比例ハザードモデルを使用し、認知症の多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。

ドパミン過感受性精神病における血漿モノアミンの変化

 初回エピソード統合失調症患者は、最初の抗精神病薬に良好な治療反応を示すことが多いが、再発患者の場合、治療反応率は約30%に低下する。この相違のメカニズムは明らかにされていないが、シナプス後のドパミンD2受容体のアップレギュレーションによるドパミン過感受性精神病の発症が、治療反応率の低下と関連している可能性がある。初回エピソード統合失調症患者とは対照的に、ドパミン過感受性精神病患者においてドパミン合成および放出の上昇が起こるのかはわかっていない。千葉大学の高瀬 正幸氏らは、ドパミン過感受性精神病における血漿モノアミンの変化について検討を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2020年1月21日号の報告。

血清BDNF濃度、短時間睡眠を伴う不眠と関連か

 神経系から分泌されるタンパク質である脳由来神経栄養因子(BDNF)は、神経細胞の発生・成長・維持・修復に働くが、ヒトの睡眠の調節にも関与することが示されている。今回、京都大学の降籏 隆二氏らは、血清BDNF濃度と睡眠障害との関連について短時間睡眠を伴う不眠(insomnia with short sleep duration:ISS)に着目し、横断研究を実施した。その結果、ISSが血清BDNF濃度の低下と関連している可能性が示された。Sleep Medicine誌2020年4月号に掲載。

最適な抗うつ薬投与量~システマティックレビュー

 固定用量で行われる抗うつ薬の試験では、承認された用量の中でも低用量で有効性と忍容性の最適なバランスが実現されている。副作用が許容される範囲内での抗うつ薬の増量がベネフィットをもたらすかについて、京都大学の古川 壽亮氏らが検討を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2019年12月31日号の報告。  急性期うつ病治療に対するSSRI、ベンラファキシン、ミルタザピンを検討したプラセボ対照ランダム化試験をシステマティックにレビューした。主要アウトカムは治療反応とし、うつ病重症度の50%以上減少と定義した。副次アウトカムは、有害事象による脱落および何らかの理由による脱落とした。

日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

 日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020年1月29日号に掲載。

化学療法誘発性悪心・嘔吐にオランザピン5mgは有効か(J-FORCE)/Lancet Oncol

 オランザピンは、化学療法誘発性悪心・嘔吐にアプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾンの3剤からなる標準制吐療法への追加が推奨されるが、その用量は10mgである。オランザピン5mgは、複数の第II相試験で10mgと同等の活性と良好な安全性プロファイルが示されている。国立がん研究センター中央病院の橋本 浩伸氏らは、シスプラチンベース化学療法による悪心・嘔吐の予防における、オランザピン5mg追加の有効性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相J-FORCE試験を実施した。Lancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号掲載の報告。

新型コロナウイルス感染症、“疑い例”の定義について/日本医師会

 刻々と状況が変化する中、新型コロナウイルス感染症の「臨床的特徴」や「感染が疑われる患者の要件」について、適時アップデートが行われている。2月5日の日本医師会の定例会見では、厚生労働省発出の文書に基づく現時点での定義や、今後の医療機関での対応の見通しについて、釜萢 敏常任理事が説明した。

日本人高齢男性における飲酒と認知機能との関係

 大量の飲酒は、認知機能障害のリスク因子として知られているが、適度な飲酒においても同様の影響が認められるかどうかは、よくわかっていない。これまでの観察研究では、とくに高齢者において、中程度の飲酒による認知機能への潜在的なベネフィットが報告されているが、アジア人ではこの影響が実証されていなかった。滋賀医科大学のAli Tanweer Siddiquee氏らは、認知障害のない日本人高齢男性を対象に、飲酒レベルと認知機能との関連について調査を行った。Alcohol誌オンライン版2020年1月7日号の報告。

日本人統合失調症患者における長時間作用型抗精神病薬の使用と再入院率~全国データベース研究

 統合失調症患者に対する抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)について、現在の処方状況および臨床結果を調査することは重要である。国立精神・神経医療研究センターの臼杵 理人氏らは、日本での統合失調症患者に対する抗精神病薬LAIについて、その処方割合と再入院率に関する調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年12月25日号の報告。  日本のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて、オープンデータセットを作成した。統合失調症の患者レコードを使用した。