ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:170

血糖降下薬9種、心血管・全死因死亡リスクは同等/JAMA

 2型糖尿病治療薬の心血管死リスク、全死因死亡リスクについて、インスリンを含む血糖降下薬9つのクラス間による有意な差はないことが明らかにされた。また、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低減効果については、単剤療法ではメトホルミンが他の薬剤と比べて、同等もしくは低下する効果があることが、またすべての薬剤がメトホルミンとの併用効果があることも示唆されたという。ニュージーランド・オタゴ大学のSuetonia C. Palmer氏らが、無作為化試験300件超のメタ解析の結果、明らかにした。JAMA誌2016年7月19日号掲載の報告。

脳卒中の原因の9割を占める、10のリスク因子とは/Lancet

 世界の地域や人種、性別にかかわらず、全脳卒中発症の原因の約90%に関与する、10項目のリスク因子が明らかになった。たとえば、高血圧症または収縮期血圧/拡張期血圧が140/90mmHg以上だと、脳卒中発症リスクは約3倍、人口寄与危険度割合(PAR)は約48%に上るなどである。カナダ・マックマスター大学のMartin J. O’Donnell氏らが、32ヵ国142ヵ所の医療機関を通じて行った、標準化国際ケースコントロール試験「INTERSTROKE」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年7月15日号で発表した。

高齢者肺がんの長期生存、放射線治療 vs.低侵襲手術/BMJ

 高齢者肺がんに対する、体幹部定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy:SABR)後および胸腔鏡下肺葉切除後のがん特異的生存率でみた長期生存を比較した結果、とくに腫瘍径が大きい症例では胸腔鏡下肺葉切除のほうが、有意に改善する可能性が示唆された。米国・RWJ Barnabas Health SystemのSubroto Paul氏らによる、全米集団ベース傾向適合比較解析を行った結果で、著者は、「交絡因子が排除しきれず結果は限定的だが、手術可能な早期肺がんでSABRの治療選択が浸透する前に、さらなる詳細な評価を行う必要があるだろう」とまとめている。SABRは手術可否を問わず、早期非小細胞肺がんに有用とされている。SABR後の生存率について、低侵襲手術による切除後に疾患リスクが改善した場合と比べた場合に、同等であるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。

過体重・肥満は死亡リスクを増大:世界4地域のメタ解析/Lancet

 過体重および肥満により、世界の4つの地域で一貫して全死因死亡のリスクが増大していることが、Global BMI Mortality Collaborationの調査で明らかとなった。研究の成果はLancet誌オンライン版2016年7月13日号に掲載された。過体重(BMI 25.0~<30.0)およびGrade1の肥満(30.0~<35.0)では、標準体重(18.5~<25.0)に比べ全死因死亡のリスクは増大しないことが報告されている。一方、BMIと死亡との因果関係を高い信頼性の下で推定するには、逆因果関係の影響をできるだけ回避する必要があり、慢性疾患や喫煙はBMIに影響を及ぼす可能性があるという。

韓国のMERSアウトブレイクから得た教訓/Lancet

 2015年に韓国で中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症の大規模なアウトブレイクが発生した。韓国・成均館大学校医学部/サムスン医療センターのSun Young Cho氏らはアウトブレイク疫学調査の結果、過密な緊急救命室(ER)に入室した1人の感染患者からの大規模伝播である可能性が大きいことが示されたと報告した。著者は、「調査の結果は、医療施設は世界的視野の下で、新興感染症への備えをする必要があるという確たる証拠を提示するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年7月8日号掲載の報告。

高度催吐性化療の制吐薬としてオランザピンが有効/NEJM

 高度催吐性化学療法(highly emetogenic chemotherapy:HEC)を受けるがん患者において、オランザピンは悪心・嘔吐の予防に有効であることが、米国・インディアナ大学のRudolph M Navari氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌2016年7月14日号にて発表された。オランザピンは非定型抗精神病薬であり、中枢神経系のドパミン受容体(D1、D2、D3、D4)、セロトニン受容体(5-HT2a、5-HT2c、5-HT3、5-HT6)、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体など多くの神経伝達物質を遮断する。体重増加や糖尿病リスクの増加などの副作用がみられるが、とくにD2、5-HT2c、5-HT3受容体は悪心・嘔吐に関与している可能性があり、制吐薬としての効果が示唆されている。

抗PD-1抗体療法に対する耐性のメカニズムは?/NEJM

 悪性黒色腫の抗PD-1抗体療法に対する耐性は、インターフェロン受容体シグナル伝達や抗原提示経路の異常と関連していることが明らかとなった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJesse M. Zaretsky氏らが、悪性黒色腫患者4例の生検サンプルを分析し報告した。抗PD-1抗体療法で奏効(objective response)が得られた悪性黒色腫患者の約75%は、効果が永続的に長期間持続するが、客観的腫瘍縮小が最初に確認された後、治療を継続しているにもかかわらず遅発性再発がみられることがある。このことについて、免疫監視機構の回避メカニズムは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。

糖尿病治療薬、死亡・心血管リスクを下げる組み合わせは?/BMJ

 糖尿病治療薬の単独療法あるいは併用療法は、使用する薬剤によって心血管疾患(CVD)・心不全・死亡リスクに臨床的に重大な差があり、概してグリプチン系もしくはグリタゾン系(チアゾリジン系)を用いた場合はこれらを使用しない場合と比べて、CVD・心不全・死亡のリスクが低いことが明らかになった。英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、英国プライマリケアのデータベースを用いた2型糖尿病患者のコホート研究の結果、報告した。これまでいくつかの糖尿病治療薬は、臨床試験や市販後調査において心不全のリスク増加との関連が示唆され、総合的なリスクとベネフィットに関する懸念が高まったことから、大規模な2型糖尿病患者集団での糖尿病治療薬長期使用による臨床的アウトカムのリスク定量化が望まれていた。著者は、「今回の結果は、服薬アドヒアランスの程度や服薬量に関する情報はなく、適応による交絡を受けているが、糖尿病治療薬の処方に影響するかもしれない」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。

HSCT後の造血器腫瘍再発、イピリムマブが有効の可能性/NEJM

 同種造血幹細胞移植(HSCT)後に造血器腫瘍を再発した患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブを投与することで、抗腫瘍効果が得られる可能性があることが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のMatthew S. Davids氏らが第I・Ib相臨床試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月14日号で発表した。被験者のうち完全奏効が認められたのは、約2割だった。一方で免疫関連の有害事象を発症した人も約2割に上っている。

SU薬とメトホルミン、単独服用時の低血糖リスクを比較/BMJ

 血糖降下薬SU薬単独服用者は、メトホルミン単独服用者と比べて、低血糖発症リスクが約2.5倍と有意に高く、同リスクは、グリベンクラミド服用者や、腎機能が低下している人では、さらなる増大が認められた。オランダ・マーストリヒト大学のJudith van Dalem氏らが、12万例超を対象に行ったコホート試験の結果、明らかにした。低血糖リスクの増大は、すべてのSU薬服用者で観察されたという。現行のガイドラインの中には、低血糖リスクがより低いとして、SU薬の中でもグリクラジドを第1選択薬とするものがあるが、今回の試験結果は相反するものとなった。そのため著者は、「さらなる検討が必要である」と述べている。BMJ誌オンライン版2016年7月13日号掲載の報告。

BMI遺伝子リスクの影響、後年生まれほど強く関連/JAMA

 BMIと関連する変異遺伝子が複数あることは知られるが、その関連は20世紀の肥満の蔓延とともに変化したとされている。また、関連については人種差があるともされてきたが、それらを裏付ける報告が、米国・カリフォルニア大学のStefan Walter氏らにより示された。研究グループは、全米健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study:HRS)の登録被験者で1900~58年生まれの50歳以上について調査。その結果、後年生まれの人ほどBMIとBMI遺伝子リスクスコアとの関連が強いことなどを明らかにした。著者は、「検討の結果は、既知のBMIに関連する遺伝子変異が、肥満を引き起こしやすい環境(obesogenic environments)によって修飾された可能性があることを示唆するものであった」とまとめている。JAMA誌2016年7月5日号掲載の報告。

ICU患者家族への緩和ケア医の介入、逆効果の場合も/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室し長期間の人工呼吸器装着が必要となったクリティカルな患者の家族に対して、緩和ケア専門医による面談などの介入は、ICUスタッフによるルーチンの面談などと比べて、不安やうつを軽減せず、むしろ外傷後ストレス障害(PTSD)症状を増す可能性があることが、米国・ノースカロライナ大学のShannon S. Carson氏らが行った多施設共同無作為化試験の結果、示された。JAMA誌2016年7月5日号掲載の報告。

英国公的施設におけるダウン症候群のNIPT導入効果/BMJ

 ダウン症候群の精度の高いスクリーニング検査である、DNA解析データに基づく非侵襲的出生前検査(NIPT)について、その受け入れ状況、アウトカムおよびコストに関する調査が行われた。NIPTは、利用できる機会が世界的に広がっているが、主として行われているのは私的なマタニティ施設である。また、公的施設での実施コストやその影響について、臨床設定での評価は行われていなかった。本論文では、英国・UCL Institute of Child HealthのLyn S Chitty氏らが、同国8つのNHSマタニティ施設で調査。その結果、公的施設での付随的な実施は、ケアの質や女性の選択に関する改善などを可能にすることが明らかになったという。BMJ誌オンライン版2016年7月4日号掲載の報告。

転移性前立腺がん、DNA修復遺伝子変異の発現頻度が判明/NEJM

 前立腺がんにおける遺伝性DNA修復遺伝子の発現について、転移性前立腺がんの患者では11.8%にみられ、限局性前立腺がん患者に比べて有意に高率であることが明らかにされた。米国・フレッド・ハッチンソンがん研究センターのC.C. Pritchard氏らが米国および英国の複数施設から被験者が参加した7つのケースシリーズに包含されていた合計692例の患者について調べ報告した。BRCA2などのDNA修復遺伝子は、致死率の高い前立腺がんリスクの増大と関連していることが知られる。これまで転移性前立腺がん患者の同遺伝子の発現については明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2016年7月6日号掲載の報告。

ウイルス性肝炎の世界疾病負担、約20年間で上昇/Lancet

 ウイルス性肝炎は、世界的に死亡と障害の主な原因となっており、結核、AIDS、マラリア等の感染症と異なり、ウイルス性肝炎による絶対的負担と相対的順位は、1990年に比べ2013年は上昇していた。米国・ワシントン大学のJefferey D Stanaway氏らが、世界疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)研究のデータを用い、1990~2013年のウイルス性肝炎の疾病負担を推定した結果、報告した。検討は、ウイルス性肝炎に対するワクチンや治療が進歩してきていることを背景に、介入戦略を世界的に周知するためには、疾病負担に対する理解の改善が必要として行われた。結果を踏まえて著者は、「ウイルス性肝炎による健康損失は大きく、有効なワクチンや治療の入手が、公衆衛生を改善する重要な機会となることを示唆している」と述べている。Lancet誌オンライン版2016年7月6日号掲載の報告。

乳がんのI-SPY試験、neratinibは第II相を卒業し第III相へ/NEJM

 HER2陽性ホルモン受容体陰性乳がんに対する術前化学療法は、標準療法+neratinibの併用が、トラスツズマブを用いた標準療法と比較し病理学的完全奏効率が高くなる可能性が高いことが示された。米国・カリフォルニア大学のJohn W. Park氏らが、I-SPY2試験の結果、報告した。I-SPY2試験は、複数の新薬候補を同時に評価できる適応的無作為化デザインを用い、StageII/IIIの高リスク乳がんに対する標準的な術前化学療法と併用する新薬候補の有効性をバイオマーカーで評価する多施設共同第II相臨床試験。新薬候補としてチロシンキナーゼ阻害薬であるneratinibを含む7種が検討されている。本試験で、neratinibは有効性の閾値に達したことから「卒業」となり、第III相臨床試験(I-SPY3試験)へ進んでいる。NEJM誌オンライン版2016年7月7日号掲載の報告。

気道感染症への抗菌薬処方を減らした影響は?/BMJ

 気道感染症に対する抗菌薬処方が減っても、肺炎と扁桃周囲膿瘍の発症リスクがわずかに増大するものの、乳様突起炎や蓄膿症、細菌性髄膜炎、頭蓋内膿瘍、レミエール症候群の合併症リスクは増加しなかった。英国キングス・カレッジ・ロンドンのMartin C. Gulliford氏らが、英国内610ヵ所のプライマリケア診療所を対象に行ったコホート試験の結果、示されたもので、BMJ誌オンライン版2016年7月4日号で発表した。

トリプルネガティブ乳がん、veliparib+CBDCA併用の術前化学療法でpCR向上/NEJM

 トリプルネガティブの乳がん患者では、術前補助化学療法として標準療法に加え、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬veliparib+カルボプラチンを併用することで、病理学的完全奏効率が向上することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らが、多施設共同の適応的無作為化第II相試験「I-SPY2」で明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月7日号で発表した。乳がんは、遺伝的・臨床的不均一性から有効な治療の特定が困難になっている。研究グループは、実験的試験で効果のあるがんサブタイプを見つけることを目的とした。

進行全身性肥満細胞症、midostaurinが有効/NEJM

 すでに進行した全身性肥満細胞症に対する、新規開発薬midostaurin(PKC412)の有効性が、米国・スタンフォードがん研究所のJason Gotlib氏らによる国際多施設共同の第II相非盲検試験の結果、確認された。対象被験者には致死率の高い異型肥満細胞白血病の症例も含まれていた。進行全身性肥満細胞症は、予後不良で有効な治療選択肢がないまれな造血器腫瘍を伴う。midostaurinは、疾患発症の主因子であるKIT D816Vを阻害するマルチキナーゼ経口阻害薬である。NEJM誌2016年6月30日号掲載の報告。

重症外傷患者への即時全身CTは有用か/Lancet

 重症外傷患者に対する即時の全身CTスキャン診断は、標準放射線精密検査を行った場合と比較して、院内死亡の低下には結び付かないことが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのJoanne C Sierink氏らによる無作為化試験の結果、示された。先行研究において、外傷患者の初期評価における、全身CTスキャンの生存へのベネフィットが示唆されていた。ただし、レベル1のエビデンス報告はなかった。Lancet誌オンライン版2016年6月28日号掲載の報告。