ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:324

PCI前運動負荷試験、実施率は44.5%に留まる

安定した冠動脈性心疾患患者に対して、待機的な経皮的冠動脈形成術(PCI)を実施する前の、心筋虚血の検出を目的とした運動負荷試験の実施率は、44.5%に留まることが明らかになった。PCI前に同試験を実施することで、より良いアウトカムにつながることはこれまでの研究でも明らかになっており、米国の診療ガイドラインでも推奨している。これは、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGrace A. Lin氏らが、2万3,887人のメディケア(高齢者向け公的医療保険)加入者について調べたもの。JAMA誌2008年10月15日号にて掲載。

子宮頸癌スクリーニング、6年ごとのHPV検査が有用

6年ごとにヒトパピローマウイルス(HPV)検査を行う子宮頸癌スクリーニング戦略は安全かつ有効であることが、ヨーロッパで実施されたコホート研究の共同解析で明らかとなった。HPV検査は、従来の細胞診よりもgrade 3の子宮頸部上皮内腫瘍および子宮頸癌(CIN3+)の検出感度が優れる。両検査併用との比較は費用効果に基づいて行われる。費用効果は検査陰性による保護効果がどれくらいの期間持続するかで評価され、それによって至適なスクリーニング間隔が決まるという。スウェーデンLund大学病院医療微生物学のJoakim Dillner氏が、BMJ誌2008年10月25日号(オンライン版2008年10月13日号)で報告した。

尊厳死を選択した末期患者の中には、うつが原因の例も

医師による死亡支援を求める末期患者におけるうつの有病率は高くはないが、現行のオレゴン州の尊厳死法下ではうつの影響で致死的薬剤の処方を選択した患者を保護できない可能性があることが、同州で実施された横断的調査で明らかとなった。1997年、同州では医師による死亡支援が合法化された。しかし、末期患者が死亡支援を求める決断をする背景には、治療可能な精神疾患の影響も考えられるため議論が続いているという。アメリカPortland在郷軍人局医療センターのLinda Ganzini氏が、BMJ誌2008年10月25日号(オンライン版2008年10月8日号)で報告した。

経口フマル酸、再発寛解型多発性硬化症に対する有用性を確認

経口フマル酸(BG00012)は再発寛解型多発性硬化症に対し優れた新規病変抑制効果と良好な安全性プロフィールを示すことが、ヨーロッパを中心に実施された多施共同試験で確認された。前臨床試験では、フマル酸ジメチルとその一次代謝産物であるフマル酸モノメチルはnuclear factor-E2関連因子2(Nrf2)の転写経路を活性化することが示されており、抗炎症作用に加え神経保護作用を併せ持つ可能性が示唆されている。スイスBasel大学病院のLudwig Kappos氏が、Lancet誌2008年10月25日号で報告した。

喫煙、固形燃料使用の抑制で、COPD、肺癌、結核の疾病負担が低下

喫煙および固形燃料の使用を抑制すれば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺癌の疾病負担が低下し、結核の効果的なコントロールが可能になることが、中国で行われた多リスク因子モデル研究で判明した。2002年の調査によれば、COPDは中国人の死因の第2位を占め、肺癌は第6位、結核は第8位であり、約200万人(全死亡の20.5%)がこれらの疾患で死亡している。一方、中国人男性の半数が喫煙者であり、一般家庭の70%以上が薪、作物残渣、石炭などの固形燃料を暖房や調理に用いているという。アメリカHarvard大学公衆衛生学部疫学科のHsien-Ho Lin氏が、Lancet誌2008年10月25日号(オンライン版2008年10月4日号)で報告した。

多発性硬化症へのalemtuzumabの有効性

リンパ球と単球上のCD52を標的とするヒト型モノクローナル抗体alemtuzumabは、B細胞性慢性リンパ性白血病の治療薬として海外で承認されている。同薬剤の早期多発性硬化症に対する治療効果について、インターフェロンβ-1aとの比較で検討していたイギリス・ケンブリッジ大学医学部のAlasdair J. Coles氏らは、「alemtuzumabは症状進行や再発を抑える上で有効だったが、深刻な自己免疫疾患との関連もみられた」と報告した。NEJM誌2008年10月23日号より。

薬剤抵抗性の心房細動には肺静脈隔離術が優れている

心不全患者の心房細動を治療するために、肺静脈隔離術がますます多用されるようになっているが、肺静脈隔離術による治療と、両室ペーシング+房室結節アブレーション治療との比較を検討した「PABA-CHF研究グループ」(事務局・米国イリノイ州)のMohammed N. Khan氏らは、「薬物抵抗性の心房細動を起こした心不全患者には、肺静脈隔離術のほうが優れている」とすると報告した。NEJM誌2008年10月23日号より。

患者や治療の違いがP4Pの格付けに関連

米国で医療に導入されたインセンティブ「治療成績に応じた医療費の支払い」(pay-for-performance:P4P)について、病院プロセス・パフォーマンスランキング(hospital process performance rankings:病院ランキング)との関連を調べていたデューク大学病院(ノースカロライナ州)のRajendra H. Mehta氏らは「各医療機関の患者の特徴や治療の違いが、P4Pの格付けと病院ランキングに関連することが示された」と報告した。JAMA誌2008年10月22日号より。

生物学的製剤の安全性問題の多くは感染症関連

生物学的製剤は相対的に新規クラスの薬剤で、免疫原性など特異的なリスクを伴うが、承認後の安全性の問題に関する情報入手が限られている。そこで、オランダ・ユトレヒト薬学研究所のThijs J. Giezen氏らは、米国およびEU(欧州連合)で承認された生物学的製剤の、その後にとられた安全性に関する規制措置を追跡調査し検証した。JAMA誌2008年10月22日号より。

糖尿病の妊婦にとって連続血糖モニタリングは有益

妊娠中の連続血糖モニタリングの有効性について、NHSイプスウィッチ病院(イギリス)糖尿病・内分泌学科のHelen R Murphy氏らが無作為化試験を行い検証した。「妊娠末期の血糖コントロール改善、低体重児もしくは巨大児のリスクを低減する」と報告している。BMJ誌2008年10月18日号(オンライン版2008年9月25日号)にて掲載。

降圧薬カンデサルタン、2型糖尿病の網膜症に対する有効性を確認

アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)であるカンデサルタンは、2型糖尿病における軽度~中等度の網膜症に対する改善効果を有することが、国際的な大規模臨床試験DIRECT-Protect 2により明らかとなった。糖尿病性網膜症は、依然として生産労働年齢人口の失明の主要原因である。2型糖尿病の診断時に約40%が網膜症を併発しており、6年後にはさらに22%が発症するとされる。これに対し降圧薬の有効性が示唆されているが、網膜症をエンドポイントした試験は行われていないという。デンマークOdense大学病院眼科のAnne Katrin Sjolie氏が、Lancet誌2008年10月18日号(オンライン版2008年9月25日号)で報告した。

多剤耐性結核より治療抵抗性の広範囲薬剤耐性結核、その治療は可能か?

広範囲薬剤耐性結核菌(extensively drug-resistant tuberculosis; XDR-TB)は、non-XDR-TBに比べれば治療抵抗性が高いが、積極的な治療によって治癒は可能であることが、アメリカHarvard大学医学部のSalmaan Keshavjee氏らがシベリアの地方都市で実施したコホート研究で明らかとなった。多剤耐性結核菌(MDR-TB)は1次治療に抵抗性の結核菌株であり、XDR-TBは最も効果的な2次治療にも抵抗性を示すMDR-TBのサブグループと定義される。XDR-TBの世界的な疾病負担は不明だが、MDR-TBの7%がXDR-TBとのデータがあるという。Lancet誌2008年10月18日号(オンライン版2008年8月22日号)掲載の報告。

コンピュータ支援のマンモグラム単独読影は2人読影に匹敵

マンモグラフィ検診による小さな乳癌の検出感度は、マンモグラムの読影を単独でするより2人で行うことのほうが高い。では、コンピュータ支援検出システムを使った単独読影はどうだろうか。2人読影に匹敵する検出能力を発揮できるかどうかを検証していた英国のCADET II研究グループ(Computer-Aided Detection Evaluation Trial II)のFiona J. Gilbert氏(アバディーン大学)らは「匹敵する」ことを報告した。NEJM誌2008年10月16日号(オンライン版2008年10月1日号)より。

COPD治療薬チオトロピウムの長期臨床試験報告

慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬チオトロピウムが、COPD患者の複数のエンドポイントを改善することは先行研究で示されているが、吸入用抗コリン薬を除くすべての呼吸器疾患の薬物治療を許されたプラセボ群を対照に、チオトロピウム治療の4年間にわたる長期的な効果を検証していた米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部のDonald P. Tashkin氏らが主要な治療指標であるFEV1低下率や肺機能、QOL、増悪について報告を行った。NEJM誌2008年10月9日号(オンライン版2008年10月5日号)より。

アミオダロンの心房細動発症ごと投与では死亡率、入院率とも上昇

不整脈治療剤アミオダロンは、効果的に心房細動を抑制するが、有害事象が多いため使用禁忌もまた多い。そこで、心房細動を予防するために除細動後にアミオダロンを連続的に投与した患者と、発症ごとに投与した場合の主要イベントを比較していたオランダ・フローニンゲン大学のSheba Ahmed氏らは「発症ごとの投与では、心房細動再発や死亡率、心血管関連の入院率が有意に高まる」と報告した。JAMA誌2008年10月15日号より。

ビタミンBはアルツハイマー病の認知低下抑制の効果なし

アルツハイマー病(AD)ではホモシステインの血中濃度が高まり、高ホモシステイン血症が血管や神経に毒性に作用し発病に至る可能性がある。しかしホモシステイン濃度は、葉酸とビタミンB6、B12の高用量サプリメント投与で低下させることができる。このため、アメリカ・アルツハイマー病協同研究グループ(Alzheimer Disease Cooperative Study Group)のPaul S. Aisen氏(カリフォルニア大学サン・ディエゴ校)らは、AD治療におけるビタミンB群サプリメントの有効性と安全性を検証していたが、「認知機能の低下を遅らせる効果はない」と報告した。JAMA誌2008年10月15日号より。

乳幼児の骨折で原因が確認できない場合は虐待を疑うべき

子どもの骨折が虐待によるものなのか、骨折タイプから虐待の可能性を見極めることを目的とする骨折指標の同定作業が、公表論文のシステマティックレビューによって行われた。カーディフ大学(英国)ウェールズ・ヒースパーク大学病院臨床疫学学際研究グループ/ウェールズ児童保護システマティックレビューグループのAlison M Kemp氏らによる。研究報告は、BMJ誌2008年10月2日号に掲載された。

暖房器具の選び方次第で小児喘息症状は緩和する

呼吸器症状を悪化させる排ガス物質の二酸化窒素について、屋外での車の排ガスなどに注目が集まるが、屋内における暖房器具(ガスヒーター)やガスコンロなどからのほうがそれらを1,000倍も吸引する可能性があり、住環境改善は小児喘息の改善に必須であると提言し、以前に住環境改善(断熱効果を高める)介入と呼吸器症状改善との関連について報告していたOtago大学(ニュージーランド)He Kainga Oranga/住宅健康リサーチプログラムのPhilippa Howden-Chapman氏らが今回、屋内にガスを排出しない無公害タイプの暖房器具と小児喘息との関連について無作為化試験の結果を報告した。BMJ誌2008年9月23日号にて掲載。小児の約25%が喘息症状を有し、それが小児の入院要因の第2位となっているニュージーランドでの検討で、同国では3分の1の家庭が暖房器具は室内に直接排気するタイプのガスヒーターだという。

早期自然陣痛妊婦への抗生物質投与により子どもの脳性麻痺が増加:ORACLE Children II試験

羊膜に異常がない早期自然陣痛妊婦に対する抗生物質の投与は、その子どもの脳性麻痺の発生リスクを有意に増大させることが、ORACLE Children II試験で確認された。妊娠期間26週以前に生まれた早産児の約25%が重篤な機能障害を呈し、機能障害のない小児もその多くが後年、行動障害や学習障害をきたす。また、早期自然陣痛の13~22%が周産期の子宮内感染や炎症に起因するという。そのため、このような病態の妊婦に対する抗生物質投与が母子双方に及ぼす影響の解明が重要な課題とされている。イギリスLeicester大学生殖科学のS Kenyon氏が、Lancet誌2008年10月11日号(オンライン版2008年9月17日号)で報告した。