ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:92

身体活動ガイドライン順守で、全死因・原因別死亡リスク減/BMJ

 米国では、「米国人の身体活動ガイドライン2018年版」で推奨されている水準で、余暇に有酸素運動や筋力強化運動を行っている成人は、これを順守していない集団に比べ、全死因および原因別の死亡リスクが大幅に低いことが、中国・山東大学のMin Zhao氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年7月1日号に掲載された。本研究の開始前に、身体活動ガイドラインの推奨を達成することと、全死因死亡や心血管疾患、がんとの関連を評価した研究は4件のみで、その結果は一致していなかった。また、身体活動ガイドラインと他の原因別の死亡(アルツハイマー病や糖尿病などによる死亡)との関連を検討した研究は、それまでなかったという。

早産児のApgarスコアは、新生児死亡リスクと関連するか/NEJM

 在胎期間は、早産児における新生児死亡(生後28日以内の死亡)の主要な決定因子だが、在胎期間とApgarスコアの組み合わせの新生児死亡リスクへの影響は明確でないという。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSven Cnattingius氏らは、新生児死亡率は在胎期間が短くなるに従って実質的に増加することから、Apgarスコアに関連する新生児死亡率の絶対値の差(新生児の超過死亡数)は、早産児の在胎期間が短いほど増加するとの仮説を立て、検証を行った。その結果、出生5分後と10分後のApgarスコア、および5~10分後のスコアの変化は、5つに分けた在胎期間のすべての早産児で、新生児死亡率と関連することが示された。NEJM誌2020年7月2日号掲載の報告。

肺炎小児へのアモキシシリン推奨は妥当か/NEJM

 5歳未満の非重症肺炎小児の治療において、治療失敗の頻度はアモキシシリンよりもプラセボのほうが高く、この差はプラセボの非劣性マージンを満たさないことから、現在の世界保健機関(WHO)の推奨は有効であることが、パキスタン・アガカーン大学のFyezah Jehan氏らが実施した「RETAPP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月2日号に掲載された。WHOは、頻呼吸を伴う肺炎患者に経口アモキシシリンを推奨している。一方、この病態の治療にアモキシシリンを使用しなくても、使用した場合に対して非劣性である可能性を示唆するデータがあるという。

重症大動脈弁狭窄症の弁置換術、Portico弁vs.既存弁/Lancet

 外科的人工弁置換術ではリスクが高く、臨床的に経カテーテル大動脈弁置換術が適応の重症大動脈弁狭窄症患者の治療において、弁輪内自己拡張型Portico弁(Abbott製)は市販の弁輪内バルーン拡張型弁または弁輪上自己拡張型弁と比較して、安全性および有効性の複合エンドポイントはそれぞれ非劣性であるが、30日時の死亡や重度血管合併症の頻度が高い傾向がみられることが、米国・シダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らが行ったPORTICO IDE試験で示された。この結果には、試験期間の前半における新規デバイスへの習熟度が関連している可能性があるという。Portico経カテーテル大動脈弁システムは、ウシ心膜組織の弁尖を有する自己拡張型経カテーテル心臓弁で、植込み部位での完全なリシース(弁を送達カテーテルに戻す)とリポジション(弁の再留置)が可能であるため、留置の正確性が改善されるという。Lancet誌オンライン版2020年6月25日号掲載の報告。

COVID-19、市販の抗体検査の診断精度は?/BMJ

 カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのMayara Lisboa Bastos氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の血清検査(抗体検査)の診断精度をシステマティックレビューおよびメタ解析により検証し、現在のエビデンスでは既存のポイントオブケア(迅速)抗体検査の使用を継続することは支持されないと報告した。著者は、「COVID-19抗体検査の診断精度を評価する質の高い臨床試験が早急に必要」と強調している。抗体検査は急速に普及してきており、多くが迅速検査として市販されているが、これら抗体検査の診断精度に関するエビデンスは、正式に評価されていなかった。BMJ誌2020年7月1日号掲載の報告。

大学での人事評価、教授への昇進で重視されるのは?/BMJ

 大学における研究者の評価は従来型の基準を重視していることが、世界各国より抽出された大学の横断研究の結果、明らかになった。カナダ・マギル大学のDanielle B. Rice氏らが報告した。教授の評価や在職期間の付与に用いる基準については変更することが推奨されているが、世界で適用されている昇進や在職期間の基準について、これまで系統的な評価は行われていなかった。結果を踏まえて著者は「大学は、非従来型の基準を奨励することを考慮すべきである」とまとめている。BMJ誌2020年6月25日号掲載の報告。  研究グループは、世界大学ランキングのライデン・ランキングから無作為に選んだ170大学を対象に、助教(assistant professor)、准教授(associate professor)および教授(professor)の評価と終身在職権付与に用いるガイドラインについて調査した。

ダウン症者のアルツハイマー病は予測可能、異常は20代から/Lancet

 ダウン症者におけるアルツハイマー病は、20年以上にわたる前臨床段階を有し、バイオマーカーの変化で予測可能であることが明らかにされた。スペイン・Barcelona Down Medical CenterのJuan Fortea氏らが、ダウン症候群者388例を含む横断研究の結果を報告した。アルツハイマー病とその合併症は、ダウン症の成人における主な死因となっている。先行研究で、ダウン症者のアルツハイマー病について評価は行われたが、ダウン症者におけるバイオマーカーの変化の経過は確認されていなかった。Lancet誌2020年6月27日号掲載の報告。  研究グループは、スペイン・バルセロナのSant Pau病院と、英国・ケンブリッジ大学で、ダウン症者とその対照群を集めて横断研究を行った。バルセロナでは、住民ベースの医療保険プランを通じて、またケンブリッジでは、英国とスコットランドの知的障害者支援サービスを通じて、18歳以上のダウン症者を集めた。

新型コロナ感染の川崎病様小児患者、大半で心機能障害/NEJM

 米国ニューヨーク州では5月上旬時点で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が認められた小児発症性多系統炎症症候群(MIS-C)は95例に上ったことが、米国・ニューヨーク州保健局(New York State Department of Health:NYSDOH)のElizabeth M. Dufort氏らによる調査により明らかにされた。そのほとんどで、C反応性蛋白(CRP)値、Dダイマー値、トロポニン値が上昇し、心機能障害との関連が認められたという。MIS-Cは、皮膚・皮膚粘膜症状、消化器系症状を伴うhyperinflammatory syndromeで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が示唆されており、NYSDOHでは、同症状を呈した入院患者の記述的サーベイランスを州全体で強化していたという。NEJM誌オンライン版2020年6月29日号掲載の報告。

高齢患者のポリファーマシー、電子的支援ツールで改善/BMJ

 多剤併用(ポリファーマシー)は高齢者で一般的にみられ、不適切な薬剤が含まれることや、潜在的な害を伴うことが多いとされる。ドイツ・Witten/Herdecke UniversityのAnja Rieckert氏らは、多剤併用高齢患者における潜在的不適切薬剤処方を改善するための電子的意思決定支援ツールを新たに開発し、その有効性を実臨床で評価した。結果は、このツールにより、予定外の入院と24ヵ月以内の死亡について決定的な効果は確認されなかったものの、患者アウトカムに悪い影響を及ぼすことなく薬剤数の削減が達成されたという。BMJ誌2020年6月18日号掲載の報告。

早期DKD併発1型糖尿病、尿酸値低下でも腎機能改善せず/NEJM

 1型糖尿病と早期~中等度の糖尿病性腎臓病(DKD)を有する患者において、アロプリノールの3年投与により血清尿酸値を36%低下させても、腎アウトカムに関して臨床的に意味のある利益のエビデンスは得られなかったとの研究結果が、米国・ハーバード大学医学大学院のAlessandro Doria氏らが実施した「PERL試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年6月25日号に掲載された。血清尿酸の高値は、DKDリスクを増加させることが示唆されている。1型糖尿病と早期~中等度のDKDを併発する患者では、血清尿酸値をアロプリノールで低下させると、糸球体濾過量(GFR)の低下が緩徐化される可能性があるという。

デキサメタゾンは小児心臓手術時の重度合併症を抑制せず/JAMA

 人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン投与はプラセボと比較して、30日以内の重度合併症や死亡のリスクを低減しないことが、ロシア・E. N. Meshalkin国立医療研究センターのVladimir Lomivorotov氏らが実施した「DECISION試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年6月23日号に掲載された。米国のデータでは、1998年以降、CPBを伴う心臓手術を受けた先天性心疾患小児の死亡率は約3%まで低下しているが、重度合併症の発生率は30~40%と、高率のままとされる。CPBによって引き起こされる全身性の炎症反応が臓器機能を低下させ、長期の集中治療室(ICU)入室や、入院の長期化をもたらすことが知られている。この全身性炎症反応や合併症の低減を目的に、コルチコステロイドが広く用いられているが、その臨床的有効性は確実ではないという。

トラネキサム酸、消化管出血による死亡を抑制せず/Lancet

 急性期消化管出血の治療において、トラネキサム酸はプラセボに比べ死亡を抑制せず、静脈血栓塞栓症イベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)の発生率が有意に高いことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Roberts氏らが実施した「HALT-IT試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2020年6月20日号に掲載された。トラネキサム酸は、外科手術による出血を低減し、外傷患者の出血による死亡を抑制することが知られている。また、本試験開始前のCochraneの系統的レビューとメタ解析(7試験、1,654例)では、消化管出血による死亡を低下させる可能性が示唆されていた(統合リスク比[RR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.89、p=0.01)。一方、メタ解析に含まれた試験はいずれも小規模でバイアスのリスクがあるため、大規模臨床試験による確証が求められていた。

アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COPDへの3剤配合吸入薬、ICS半量でも有効/NEJM

 中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、ブデソニド標準用量または半量によるブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール3剤配合吸入薬(ブデソニド半量の3剤配合吸入薬は本邦未承認)はいずれも、グリコピロニウム/ホルモテロールまたはブデソニド/ホルモテロールの2剤配合吸入薬と比較し、中等度~重度のCOPD増悪頻度を抑制したことが示された。ドイツ・LungenClinic GrosshansdorfのKlaus F. Rabe氏らが、26ヵ国で実施した52週間の第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of Triple Therapy in Obstructive Lung Disease trial:ETHOS試験」の結果を報告した。COPDに対する固定用量の吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)3剤併用療法は、これまで1つの用量のICSでのみ検討されており、低用量ICSでの検討が不足していた。NEJM誌オンライン版2020年6月24日号掲載の報告。

医療ミス多いのは?24h以上の長時間勤務 vs.16h以内の2交代制/NEJM

 米国小児科研修医のICUローテーション中のスケジュールについて、24時間以上の長時間勤務のほうが、16時間以内の日中・夜間勤務を繰り返すスケジュールに比べ、研修医による重大な医療ミス発生率が低かったことが示されたという。ただし、実施した施設によるばらつきは大きかった。米国・ボストン小児病院のChristopher P. Landrigan氏らが行った、2パターンの勤務シフトを比較した多施設共同クラスター無作為化クロスオーバー試験の結果で、著者は「仮説に反する試験結果となった」と述べながら、要因として「各研修医が治療するICUの患者数は、長時間勤務でないスケジュール群のほうが多かった」ことに触れている。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COVID-19、がん患者の全死亡率への影響/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者のデータが不足している中、米国・Advanced Cancer Research GroupのNicole M. Kuderer氏らによる検討で、COVID-19に罹患したがん患者の30日全死因死亡率は高く、一般的なリスク因子(年齢、男性、喫煙歴など)、およびがん患者に特異な因子(ECOG PS、活動性など)との関連性が明らかにされた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる長期追跡を行い、がん患者の転帰へのCOVID-19の影響を、特異的がん治療の継続可能性も含めて、明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌2020年6月20日号掲載の報告。  研究グループは、COVID-19罹患のがん患者コホートの転帰を特徴付け、死亡および疾患重症化の潜在的予測因子を特定するコホート研究を行った。

DES留置のACS、短期DAPT後にチカグレロル単剤で予後改善/JAMA

 薬剤溶出ステント(DES)留置術を受けた急性冠症候群(ACS)患者では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月間施行後にチカグレロル単剤療法に切り替えるアプローチは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、1年後の大出血と心血管イベントの複合アウトカムの発生をわずかに低減し、統計学的に有意な改善が得られることが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏ら「TICO試験」の研究グループによって示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)としてDES留置術を受けたACS患者では、アスピリン+P2Y12阻害薬による短期DAPT施行後にアスピリンを中止することで、出血リスクが軽減するとされる。一方、新世代DES留置術を受けたACS患者において、アスピリン中止後のチカグレロル単剤療法に関する検討は、これまで行われていなかったという。

リンチ症候群の大腸がん予防にアスピリンが有効/Lancet

 リンチ症候群は、大腸がんのリスクを増大させ、他の広範ながん、とくに子宮内膜がんと関連する。英国・ニューカッスル大学のJohn Burn氏ら「CAPP2試験」の研究グループは、リンチ症候群における大腸がんの予防において、アスピリンの2年投与はプラセボに比べ、その発症を有意に抑制することを確認した。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。本試験では、2011年(平均フォローアップ期間55.7ヵ月[SD 31.4])の時点におけるアスピリンによる遺伝性大腸がんの予防効果を報告している。今回、予定されていた10年間のフォローアップを終了したことから、この高リスク集団における定期的なアスピリン服用の長期的な有効性のデータが報告された。

若年1型DM、CGMが血糖コントロールを改善/JAMA

 1型糖尿病の青少年および若年成人患者において、持続血糖測定(CGM)は標準的血糖測定に比べ、血糖コントロールをわずかではあるが統計学的に有意に改善し、患者満足度も良好であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のLori M. Laffel氏らが行った「T1D(CITY)研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。1型糖尿病患者では、青少年および若年成人期が生涯で最も血糖コントロールが不良とされる。CGMは、成人患者で血糖コントロールの改善が示されているが、青少年および若年成人の患者における有益性は明確ではないという。

進行悪性黒色腫の1次治療、アテゾリズマブ追加でPFS延長/Lancet

 未治療のBRAFV600変異陽性進行悪性黒色腫患者の治療において、BRAF阻害薬ベムラフェニブ+MEK阻害薬cobimetinibによる標的治療に、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害薬アテゾリズマブを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性と忍容性も許容範囲であることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のRalf Gutzmer氏らが行った「IMspire150試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年6月13日号に掲載された。免疫チェックポイント阻害薬、およびBRAF阻害薬+MEK阻害薬併用はいずれも、BRAFV600変異陽性転移悪性黒色腫のアウトカムを改善すると報告されている。BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用は高い奏効率を有するが奏効期間は短く、免疫チェックポイント阻害薬は持続的な奏効をもたらすものの奏効率は相対的に低い。このような相補的な臨床的特徴から、これらの併用療法に注目が集まっているという。