ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:281

強化LDL-C低下療法の心血管イベント抑制効果:約17万例のメタ解析

スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は安全に施行可能で、1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下で重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)共同研究グループによるメタ解析で明らかとなった。標準的スタチン療法によるLDL-C低下療法は、広範な心血管疾患において閉塞性血管イベントのリスクを低減することが示されている。また、観察研究ではコレステロール値が低いほど冠動脈疾患のリスクが低下することも示されており、LDL-Cをさらに低下させることで、より大きなリスクの低下が得られる可能性が示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版11月9日号)掲載の報告。

心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。

冠動脈疾患に対するクロピドグレルのオメプラゾール投与の有無による効果

抗血小板療法としてアスピリン+クロピドグレル(商品名:プラビックス)を受けている患者への、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾンほか)投与は、上部消化管出血を減らすことが明らかにされた。米国ボストン退役軍人ヘルスケアシステムのDeepak L. Bhatt氏らCOGENT研究グループによる。抗血小板療法を受けている患者の消化管合併症は重大な問題となっている。PPIがそのようなリスクを減じるのではないかとされていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。またクロピドグレルを用いた抗血小板併用療法を受けている患者へのPPI投与については、クロピドグレルの効果を減弱するのではないかとの懸念もあり、本試験ではその点の検討も行われた。NEJM誌2010年11月11日号(オンライン版2010年10月6日号)掲載より。

免疫性血小板減少症へのromiplostim治療、治療失敗および摘脾を低下

免疫性血小板減少症に対する治療薬として米国で上市されているromiplostimの、標準治療との比較による、有効性と安全性に関する52週の非盲検無作為化試験の結果が、NEJM誌2010年11月11日号で発表された。試験・報告は米国マサチューセッツ総合病院のDavid J. Kuter氏らによる。romiplostimは、血小板産生に関与するトロンボポエチン受容体に結合し作用を発揮する。これまでの試験で、有害事象がほとんどなく、成人患者に対する持続的投与で最大5年間、血小板増加作用があることが認められていた。

10代でBMIが30以上の肥満者、30代早期までに重度肥満になるリスクは16倍

青年期に肥満の人は、そうでなかった人に比べ、成人期早期に重度肥満になるリスクが16倍に増大するという。米国ノースカロライナ大学のNatalie S. The氏らが、9,000人弱について約13年間追跡したコホート試験の結果明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表した。米国で肥満の罹患率は増加傾向にあるが、青年期の肥満と成人期の重度肥満の関連について、経年調査はほとんど行われておらず、重度肥満への回避やリスクを減らすための効果的な介入が限られているという。

プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。

便潜血検査による大腸がん検診継続受診の効果とは?

英国政府から、国民医療保険サービス(NHS)に便潜血検査による大腸がん検診を導入することの意義を検証するよう依頼を受けたダンディー大学外科部門のR J C Steele氏らは、初回検診(prevalence screening)と継続検診(incidence screening)の受診率および効果について検証した。検診で用いられる便潜血検査では、1回目と2回目以降では陽性率、陽性適中率が低下するが、一方で、検診を定期的に繰り返し受けることの効果については明らかになっていなかった。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。

大腸がん予防には5つの推奨生活習慣を遵守すること

運動、腹囲、喫煙、飲酒、食生活という5つの生活習慣に関する推奨勧告を遵守すると、大腸がんリスクを相当に減らせる可能性があることが、デンマークがん協会がん疫学研究所のHelene Kirkegaard氏らにより報告された。デンマークの中高年約5万5千人を対象とした前向きコホート試験の結果によるもので、約10年間で大腸がんになった678人のうち、5つの生活習慣を遵守すれば予防できたと思われた人は23%を占めていたという。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月26日号)掲載より。

薬物よりも勝るアルコールの有害事象…英国での多軸分析の結果

アルコール、タバコ、ヘロインなどの薬物乱用がもたらす有害な作用を、使用者自身と使用者以外に及ぼす害の判定基準で評価したところ、総合的にアルコールが最も有害で、特に使用者以外への有害度が著明に高いことが、イギリスImperial College London神経精神薬理学のDavid J Nutt氏らによる研究で明らかとなった。薬物乱用に起因する有害作用の適正な評価は、健康、規制、社会的ケアに関する施策の立案者に有益な情報をもたらすが、薬物の有害作用は多岐にわたるためこの作業は容易でない。そこで、薬物固有の身体的な有害作用から社会に及ぼす害や医療コストまでを、複数の判定基準で評価するアプローチが積極的に進められているという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年11月1日号)掲載の報告。

院外心停止、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の有効性がメタ解析で示された

成人の院外心停止例に対する処置では、その場に居合わせた者への救急医療係員による指導は、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた標準的な心肺蘇生法(CPR)よりも、胸骨圧迫のみによるCPRに焦点を絞るべきであることが、オーストリア・ウイーン医科大学のMichael Hupfl氏らによるメタ解析で示された。これまでの検討でも、標準的なCPRよりも胸骨圧迫のみを行うCPRの方が、予後が良好な可能性が指摘されているが、有意な予後改善効果を示すエビデンスは確立されていないという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫に、エベロリムスが治療選択肢の可能性

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫の治療として、哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬であるエベロリムス(商品名:免疫抑制薬としてサーティカン、抗悪性腫瘍薬としてアフィニトール)の経口投与療法が、標準療法である手術療法(脳神経外科的切除)に代わる治療選択肢となり得ることが示唆された。米国シンシナティ小児医療センターのDarcy A. Krueger氏らによる、前向きオープンラベル試験による。上衣下巨細胞星状細胞腫の手術療法では、周術期のリスクを伴うこと、また深部腫瘍の切除が困難で再発の要因ともなることから、有効な治療法が模索されている。NEJM誌2010年11月4日号掲載の報告より。

入院、転倒外傷は、虚弱高齢者をさらに弱らせる

高齢者のうち、特に虚弱であったり、内科疾患や外傷(いわゆるイベント)が、新規障害の発生や既存障害の悪化を大きく増大する可能性があることが、エール大学医学部内科部門のThomas M Gill氏らによる長期追跡試験の結果、報告された。これまで、イベントの障害度移行への影響については明らかになっていなかった。JAMA誌2010年11月3日号掲載より。

患者医療情報システムを活用した入院中転倒予防教育キット、転倒リスクを有意に減少

 患者医療情報システムを活用し、患者のリスクに見合った転倒予防教育キットを提供することで、入院中の転倒リスクが有意に減少することが報告された。米国ボストンを拠点とする病院経営共同体Partners HealthCare SystemのPatricia C. Dykes氏らが、1万人超の入院患者を対象に行った、多施設共同無作為化対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。入院中には、環境の変化や疾患・治療の影響などで、転倒リスクが増大することは知られている。一方で、医療情報技術を用いた転倒予防キットは、これが初めてのものだという。

アルツハイマー病へのDHA投与、認知能力低下の減速効果なし

軽度~中等度のアルツハイマー病患者に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)サプリメントを投与しても、認知能力の低下を減速する効果はないという。脳の萎縮率の低減についても効果はなかった。米国オレゴン健康科学大学神経内科部門のJoseph F. Quinn氏らが、アルツハイマー病の患者400人超について行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。これまでの疫学試験では、DHA摂取がアルツハイマー病罹患率の減少と関連することが示唆されており、動物実験では実証されていた。

中国の公的健康保険NCMSは、農村部医療危機を解消したか?

毛沢東主義下の中国農村部の保健医療システムは、集団農業共同体(コミューン)に対し助成金を出すシステムであったが、改革開放へと一転したことで1980年代初頭にコミューンが解散、加えて中央政府の医療財源が都市部に集中されたため、農村部住民6億4,000万人が事実上無保険者となった。数十万あった農村部病院も機能を失い、公的病院は医療価格を上昇させていったことで、農村部医療は私立の郷村医(医療補助員として知られるvillage clinicians)診療所が基盤となった。一方で医療政策は、専門医療や薬剤を処方するほど増益となる仕組みとしたため、結果として医療コストの増大と各家庭に金融リスク(財産譲渡や借金)をもたらすこととなった。そこで中国政府は2003年に農村部医療危機を解消すべく公的健康保険プログラム「NCMS」を導入した。本論は、米国カリフォルニア大学農業資源経済学のKimberly Singer Babiarz氏らによる、NCMSの影響についての調査報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月21日号)に掲載された。

COPD急性増悪時の酸素療法はタイトレーションによる方が有意に転帰を改善

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪時に行う酸素療法について、標準療法とされている高流酸素療法(8~10 L/分)よりも、動脈血酸素飽和度(SaO2)88~92%達成を目標に鼻プロングで酸素を供給するタイトレーション酸素療法の方が、死亡、高二酸化炭素血症、呼吸性アシドーシスの発生を有意に減少することが実証された。オーストラリア・タスマニア大学メンジース研究所のMichael A Austin氏らによる無作為化試験からの報告で、BMJ誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月18日号)に掲載された。

2015年へのカウントダウンに向け、妊婦、子どもの健康関連ODAは改善されたか?

2003~2008年の6年間で、開発途上国への妊婦、新生児、子どもの健康に関する政府開発援助(ODA)の供与額は増加したが、他の健康領域を含む総額も増加したため相対的に優先度には変化がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCatherine Pitt氏らの調査で明らかとなった。効果的な介入を広範に行ってミレニアム開発目標(MDG)4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)およびMDG5A(2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する)を達成するには十分な資金が必要だが、2015年へのカウントダウンに向けた支援の優先国68ヵ国の多くがODAに依存しているのが現状だという。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年9月17日号)掲載の報告。

慢性C型肝炎、新規経口抗HCV薬2剤併用による非インターフェロン治療が有望

慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対する2つの新規経口抗HCV薬であるRG7128とdanoprevirの併用療法が、非インターフェロン治療として有望なことが、ニュージーランド・オークランド市民病院のEdward J Gane氏らが行った無作為試験(INFORM-1試験)で示された。HCV感染に対する現在の標準的なインターフェロンベースの治療法は、効果および耐用性の両面で限界があるという。RG7128はHCVのNS5B RNAポリメラーゼを阻害し、danoprevirはウイルスの複製に必須な酵素HCV NS3/4Aプロテアーゼの大環状阻害薬だ。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。

コントロール不良の成人喘息患者へのチオトロピウム追加投与

吸入用ステロイド(グルココルチコイド)単独療法でコントロール不良の成人喘息患者の代替治療に関して、COPD治療薬として開発された長時間作用性抗コリン薬の臭化チオトロピウム水和物(商品名:スピリーバ、日米とも喘息は未適応)の追加投与が、喘息症状および肺機能を改善することが報告された。米国ウェイクフォレスト大学のStephen P. Peters氏らNHLBI喘息臨床研究ネットワークによる。その効果は、すでに改善効果が認められている長時間作用性β2刺激薬(LABA)のサルメテロール(商品名:セレベント)を追加投与した場合と、同等のようだと結論している。NEJM誌2010年10月28日号(オンライン版2010年9月19日号)掲載より。

クロピドグレル治療にCYP2C19遺伝子多型は影響するのか?

 アスピリンにクロピドグレル(商品名:プラビックス)追加投与は、急性冠症候群や心房細動患者における主要な血管性イベントの発生率を減少させるが、最近の報告で、CYP2C19遺伝子多型で機能喪失型を有する患者では、クロピドグレルの抗血小板作用が減弱する可能性が示唆され、FDAから低代謝群について黒枠警告するよう指示がされ、これら患者では高用量投与または他の抗血小板薬を使用することが提案されている。一方で、機能獲得型(*17)を有する患者では血小板反応が増し出血リスクが増大することが明らかになっている。そこでカナダMcMaster大学のGuillaume Pare氏らは、クロピドグレル治療へのCYP2C19遺伝子多型の影響をプラセボ対照試験の結果から検証した。NEJM誌2010年10月28日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。