腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:110

骨髄異形成症候群へのメチル化阻害薬、がん遺伝子への影響は?/NEJM

 骨髄異形成症候群の患者へのメチル化阻害薬治療後に、がん遺伝子の脱メチル化とアップレギュレートが起こることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のYao-Chung Liu氏らによって確認された。2つのコホートの患者サンプルの分析と遺伝子座特異的脱メチル化技術「CRISPR-DNMT1-interacting RNA」(CRISPR-DiR)を組み合わせた検討で明らかになったという。メチル化阻害薬は現在、がん患者の治療に用いられているが、腫瘍遺伝子の再活性化およびアップレギュレートも可能かどうかは、十分に解明されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる検討の必要性があることが判明した」と述べている。NEJM誌2022年5月26日号掲載の報告。  研究グループは、2つの骨髄異形成症候群の患者コホートについて、メチル化阻害薬治療前後の骨髄サンプルを採取し、骨髄異形成症候群やその他がんで重要な役割を果たしている既知のがん遺伝子SALL4へのメチル化阻害薬の影響を検証した。  第1コホートとして新たに骨髄異形成症候群の診断を受けた37例について、骨髄サンプルを採取。うち25例について、5-アザシチジンの4サイクル投与前後の骨髄サンプルを採取した。第2コホートでは、骨髄異形成症候群の診断を受けた43例について、メチル化阻害薬の5サイクル投与前後の骨髄サンプルを採取した。また、対照群として、健康なドナー10例からCD34-骨髄単核細胞を、また同5例からCD34+骨髄単核細胞を採取した。  SALL4発現の変化、治療反応性、臨床アウトカムについて、メチル化阻害薬治療との関連を調べた。SALL4発現が低いか検出限界以下の白血病細胞株を用いて、SALL4メチル化と発現との関連を調べた。

進行乳がん治療のパラダイムシフト、HER2低発現患者でT-DXdがPFSを大きく改善(DESTINY-Breast04)/ASCO2022

 HER2低発現で既治療の進行乳がん患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が治験医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。従来HER2陰性に分類されてきた転移を有する乳がん(mBC)患者の約55%がHER2低発現に該当すると報告されている。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が第III相DESTINY-Breast04試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。なおDESTINY-Breast04試験の結果は6月5日、New England Journal of Medicine誌に掲載された。 ・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(ホルモン受容体陽性[HR+]の場合は内分泌療法抵抗性) 557例  以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け ・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例 ・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか) 184例 ・層別化因子:HER2発現状態(IHC 1+ vs.IHC 2+/ISH-)、化学療法歴、ホルモン受容体の状態、CDK4/6阻害薬による治療歴 ・評価項目: [主要評価項目]HR+患者における盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS) [主要副次評価項目]全例におけるBICRによるPFS、HR+患者および全例における全生存期間(OS) [その他の評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、HR-患者の探索的解析

抗体薬物複合体SG、複数治療歴のあるHR+転移乳がんでもPFS改善(TROPiCS-02)/ASCO2022

 内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法による複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)が、医師選択治療(TPC)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、第III相TROPiCS-02試験で示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。  欧米では、SGは2種類以上の前治療歴を有する転移のあるトリプルネガティブ乳がんに対して承認されている。HR+/HER2-転移乳がんに対しては、第I/II相IMMU-132-01試験において、客観的奏効率(ORR)31.5%、PFS中央値5.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値12ヵ月、管理可能な安全性プロファイルが確認されている。今回、HR+/HER2-転移乳がんに対する第III相TROPiCS-02試験の結果が報告された。

メトホルミン、非糖尿病の浸潤性乳がんに無効-MA.32試験/JAMA

 糖尿病のない高リスクの切除可能な乳がん患者の術後補助療法において、ビグアナイド系経口血糖降下薬メトホルミンはプラセボと比較して、無浸潤疾患生存率を改善せず、全生存や遠隔無再発生存、乳がん無再発期間にも差はなく、Grade3以上の非血液毒性の頻度が高いことが、カナダ・トロント大学のPamela J. Goodwin氏らが実施した「MA.32試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年5月24・31日号に掲載された。  MA.32試験は、非糖尿病の浸潤性乳がん患者における術後補助療法へのメトホルミン追加の有効性の評価を目的とする、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2013年3月の期間に、4ヵ国(カナダ、スイス、米国、英国)の施設で参加者の登録が行われた(Canadian Cancer Society Research Institute[CCSRI]などの助成を受けた)。

F1CDx 、非小細胞肺がんと悪性黒色腫の4薬剤のコンパニオン診断追加承認/中外

 中外製薬は2022年6月3日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、チロシンキナーゼ阻害薬ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)およびブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)の非小細胞肺がん、ならびにBRAF阻害薬エンコラフェニブ「(製品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(製品名:メクトビ)の悪性黒色腫の適応に対するコンパニオン診断として、6月2日に厚生労働省より承認を取得した。

有害事象報告のための可視化への動きが始まった(解説:折笠秀樹氏)

臨床試験の有害事象はおよそ、群ごとに各事象の頻度と割合を示しているだけです。最後の表で示されていることが多いので、しっかり見ている人は少ないかもしれません。もっと注目してもらおうと、可視化(Visualization)への動きが高まっています。英国の大学に所属する統計家を主に、コンセンサス会議が行われました。28種類の可視化を検討して、その中で10個を推奨することになったようです。その多くはよく知られたものでした。棒グラフ、帯グラフ、折れ線グラフ、散布図、ドット・プロット、カプラン・マイヤープロットはよく見掛けます。それ以外にバイオリン・プロットとカーネル密度プロットが推奨されましたが、最近医学雑誌で見掛けたことがあります。統計ソフトのStata、R、SASなどでも描けるようになったみたいです。

セムブリックスは新規作用機序の慢性骨髄性白血病治療薬/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマは2022年5月25日、前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病に対する治療薬、セムブリックス錠20mg、同40 mg(一般名:アシミニブ塩酸塩)を発売したことを発表した。  慢性骨髄性白血病(CML)は、分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場により、通院での治療が可能な慢性疾患になったとも言われている。しかし、TKI治療を受けている患者の約半数が、現在のTKI治療に抵抗性となる、または副作用により使用が継続出来なくなる不耐容などの理由により、治療変更を余儀なくされていた。  今回発売されたセムブリックスは、ABLミリストイルポケットを特異的に標的とするSTAMP阻害作用という、従来のTKIとは異なる作用機序を有している。2剤以上のTKI治療歴のあるCML患者の抵抗性に対処し、白血病細胞の過剰産生とも関連するBCR-ABL1遺伝子の変異を克服できる可能性があるともされている。

「がんゲノム医療の現状と未来」国際WEBカンファレンス開催/日本乳がん情報ネットワーク

 日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)では2022年6月25日、「Cancer genome medicineの現状と将来展望」と題した国際WEBカンファレンスを開催する。米国臨床腫瘍学会(ASCO)CEOのClifford A. Hudis氏による基調講演のほか、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のWilliam Gradisher氏による「NCCN ガイドラインの最新情報」などのミニレクチャー、米国・欧州・アジア・オセアニアを繋いだライブでのパネルディスカッションが予定されている。 <JCCNB Conference 2022 開催概要> 主催:日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB) テーマ:Cancer genome medicine の現状と将来展望 開催日:2022 年6月 25 日(土)17:00~21:30 会議形式:WEB配信(録画・ライブ) 参加費:10,000円

選択的NK1受容体拮抗型制吐剤、アロカリス点滴静注235mg新発売/大鵬薬品

 大鵬薬品工業は、2022年5月30日に選択的NK1受容体拮抗型制吐剤である「アロカリス点滴静注235mg」の販売を開始した。  本剤は、抗悪性腫瘍剤投与後の悪心、嘔吐の予防を目的に開発された選択的NK1受容体拮抗型制吐剤であり、活性本体であるネツピタントに変換されるリン酸化プロドラッグ製剤(注射剤)である。高度催吐性抗悪性腫瘍剤(シスプラチン)投与患者を対象に、パロノセトロンおよびデキサメタゾン併用下で、本剤とホスアプレピタントの有効性および安全性を比較した第III相試験(CONSOLE)の結果に基づき、2022年3月に製造販売承認を取得している。

膀胱がん摘除術後の生存・回復、ロボット支援 vs.開腹術/JAMA

 根治的膀胱摘除術を受けた転移のない膀胱がん患者において、体腔内尿路変向術(ICUD)を伴うロボット支援根治的膀胱摘除術(RARC)は開腹膀胱全摘除術(ORC)と比較し、術後90日間の生存および入院不要の院外療養日数を統計学的に有意に増加することが、英国・シェフィールド大学のJames W. F. Catto氏らによる医師主導型多施設共同第III相無作為化非盲検試験「iROC試験」の結果、示された。近年、RARCの実施頻度が増加しているが、ORCと比較して回復を改善するかどうかは不明であった。なお著者は、「今回示された両群の差については、臨床的意義があるかどうかまだ不確かである」と述べている。JAMA誌オンライン版2022年5月15日号掲載の報告。