mRNAインフルエンザワクチンが「速い」「安い」「確実」を実現するかもしれない(解説:栗原宏氏)
不活化ワクチンの生産は、鶏卵への接種からワクチン原液の製造まで約6ヵ月を要し、従来のインフルエンザワクチンは次シーズンに流行する株を予測して生産するという、いわば「博打」のような状況である。それに加えて卵馴化による変異を起こすという不確定要素もある。実際に、過去10年をみると2014-15シーズンは予測したワクチン株と実際の流行株でミスマッチとなり、ワクチンの効果がかなり小さかったとされている。一方、mRNAワクチンは遺伝子配列から化学合成が可能であり、約1ヵ月程度で製造が可能とされている。流行直前まで見極めることで、精度の高いワクチン生産が可能になると推測される。理論上のmRNAワクチンの有意点に対し、実際の調査においても1シーズンのみではあるが、既存の不活化ワクチンに対する非劣性、優位性を示した意義は大きいと思われる。