小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:15

小児・青年期の肥満の有病率は上昇傾向で今後も増加が予想される。対策が急務だが、経済発展の背景にある格差拡大が問題ではないか(解説:名郷直樹氏)

180ヵ国の5~24歳の小児・青年期の男女を対象として、1990年から2021年にかけての過体重、肥満の有病率データから、2022年から2050年にわたる過体重、肥満の有病率を予想した論文である。いずれの年代、いずれの地域においても、1990年から2021年までの過体重、肥満の有病率が上昇している。南北アメリカ、ヨーロッパで有病率が高く、アジア、アフリカでは有病率は前者ほど高くはないが、高い増加率が認められる。実際の数字を見てみると、全体の集計の青年期では1990年の過体重が8.0%、肥満が1.9%、2021年にそれぞれ13.7%、6.6%へと増加。小児期でも過体重が6.7%から11.2%、肥満が2.0%から6.9%に増加している。日本が含まれる東南アジア、東アジア、オセアニアでは、青年期の過体重が5.2%から11.6%、肥満が0.8%から4.7%に増加、小児期では過体重が4.6%から9.7%、肥満が1.2%から5.9%にそれぞれ増加している。絶対値で見ればアジアの肥満の有病率は西欧より低いものの、30年間の増加率でみると西欧を上回り、青年期の肥満が470%、小児期では404%の増加である。

帝王切開は子どもの成長に影響しない?

 帝王切開(CD)で生まれた子どもと、長期的な健康や発達における悪影響との間には有意な関連はないとする研究結果が報告された。0.5~9歳までの全原因入院、肥満、発達マイルストーン(発達がどこまで進んでいるかという指標)といったさまざまな評価項目で有意な関連は認められなかったという。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の松本尚美氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月20日掲載された。  出産方法は長期的に見た場合、子どもの健康と発達に影響を及ぼすことが示唆されてきた。CDは、母子の安全確保のため、ある特定の臨床的状態のときに実施される。しかしながら、この外科的介入が子どもの身体的成長、認知発達、慢性疾患のリスクなどさまざまな側面に及ぼす潜在的な影響については現在も議論が続いている。松本氏らは、「日本産科婦人科学会周産期登録(PRN)データベース」にリンクされた「21世紀出生児縦断調査」を利用して、CDと子どもの健康および発達との関連を調査した。

たった1時間のスクリーンタイムの増加で近視リスクが上昇

 目を細めながらスマートフォン(以下、スマホ)を見つめたり、タブレットやテレビなどのスクリーンを凝視したりする時間が長くなるほど、近視になるリスクも高まることが、新たなエビデンスレビューで明らかになった。1日当たりのデジタル機器のスクリーンを見る時間(スクリーンタイム)が1時間増えるごとに近視のリスクが高まり、近視になりやすい傾向(近視のオッズ)が21%上昇する可能性が示されたという。ソウル国立大学校(韓国)医学部眼科学准教授のYoung Kook Kim氏らによるこのレビューの詳細は、「JAMA Network Open」に2月21日掲載された。

5~24歳の肥満者数、この30年で3倍に/Lancet

 1990~2021年にかけて世界のあらゆる地域で過体重と肥満が大幅に増加しており、増加を抑制するための現行の対策が小児期・青年期の世代で失敗していることが、オーストラリア・Murdoch Children 's Research InstituteのJessica A. Kerr氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 Adolescent BMI Collaboratorsの解析で明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「2021年以降も、小児期・青年期の過体重の有病率は高いままで、将来的に肥満集団はさらに増加すると予測される。世界のすべての地域、すべての人口集団で増加が続き、2022~30年に大きな変化が起こると予測されるため、この公衆衛生上の危機に対処するため早急な行動が必要である」と述べている。Lancet誌2025年3月8日号掲載の報告。

25年度の「骨太の方針」に要望する3つの事項/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例の記者会見を3月5日に開催した。会見では、先般衆議院を通過した令和7(2025)年度の予算案について内容に言及するとともに、5月31日の「世界禁煙デー」での取り組みなどが説明された。  はじめに松本氏が、「令和7年度予算案の衆議院通過を受けて」をテーマに、今回の予算内容や医療全般、医師会とのかかわり、今後さらに要望していくべき事項などを説明した。

小児ADHDの作業記憶に対して最も好ましい運動介入は〜ネットワークメタ解析

 注意欠如多動症(ADHD)は、小児によくみられる神経発達障害であり、作業記憶障害を伴うことが多い疾患である。最近、小児ADHDの認知機能改善に対する潜在的な戦略として、運動介入が注目されている。しかし、さまざまな運動介入が作業記憶に及ぼす影響は、明らかとなっていない。中国・北京師範大学のXiangqin Song氏らは、さまざまな運動介入が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Psychology誌2025年1月27日号の報告。  関連する研究を、各種データベース(PubMed、Cochrane、Embase、Web of Science)より包括的に検索した。包括基準および除外基準に従ってスクリーニングした後、17件の研究が分析対象に特定された。ネットワークメタ解析を実施してデータを統合し、認知有酸素運動、球技、心身運動、インタラクティブゲーム、一般的な有酸素運動が小児ADHDの作業記憶に及ぼす影響を評価した。

若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎、アダリムマブは中止できるか/Lancet

 アダリムマブによりコントロールされている若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎の患者において、アダリムマブの投与を中止すると、ぶどう膜炎、関節炎、あるいはその両方の再発率が高くなるが、投与を再開すると、治療失敗の全例で眼炎症のコントロールが回復することが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNisha R. Acharya氏らADJUST Study Groupが実施した「ADJUST試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年1月25日号に掲載された。  ADJUST試験は、若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎における治療中止の有効性と安全性の評価を目的とする二重マスク化無作為化プラセボ対照比較試験であり、2020年3月~2024年2月に、米国、英国、オーストラリアの20の眼科またはリウマチ科の施設で患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]眼病研究所[NEI]の助成を受けた)。

米国、中絶禁止法施行の州で乳児死亡率が上昇/JAMA

 米国において中絶禁止法を導入した州では、施行後の乳児死亡率が、施行前の乳児死亡率に基づく予測値と比べて上昇したことが明らかにされた。乳児死亡の相対増加率は、先天異常による死亡で大きく、黒人や南部の州などベースラインの乳児死亡率が平均より高い集団でも大きかったという。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のAlison Gemmill氏らが報告した。最近の中絶禁止法の施行が乳児死亡率に及ぼす影響については十分に理解されておらず、また、中絶禁止法が乳幼児の健康における人種的・民族的格差とどのように相互作用するかについてはエビデンスが限られていた。JAMA誌オンライン版2025年2月13日号掲載の報告。

コロナ関連の小児急性脳症、他のウイルス関連脳症よりも重篤に/東京女子医大

 インフルエンザなどウイルス感染症に伴う小児の急性脳症は、欧米と比べて日本で多いことが知られている。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症においても、小児に重篤な急性脳症を引き起こすことがわかってきた。東京女子医科大学附属八千代医療センターの高梨 潤一氏、東京都医学総合研究所の葛西 真梨子氏らの研究チームは、BA.1/BA.2系統流行期およびBA.5系統流行期において、新型コロナ関連脳症とそれ以外のウイルス関連脳症の臨床的違いを明らかにするために全国調査を行った。

スポーツで子どもの学力がアップ?

 10代前半でスポーツを行っている子どもは、10代後半になった時点での学力が良好という有意な関連のあることが報告された。モントリオール大学(カナダ)のLinda Pagani氏らの研究によるもので、論文が「Children」に9月20日掲載され、同大学からニュースリリースが1月16日に発行された。構造化された競技に参加している子どもは性別を問わず、高校卒業資格を取得する割合が高く、また女子については審美系競技に参加している場合に学力も高くなるという関連も示されたという。  スポーツと学力との関連については既に複数の研究報告が存在するが、成績に良い影響を与えるとする結果もあれば、反対に成績の低下と関係しているという結果が混在している。また、これまでの研究の大半は横断研究であり、因果関係が不明。さらに、性別の違いが十分考慮されていないといった、解釈上の限界点があった。これを背景にPagani氏らは、カナダで行われている児童・青少年対象の縦断研究のデータを用いた解析を行った。