精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:97

M4受容体選択的PAMのemraclidine、統合失調症に有望/Lancet

 新規開発中のemraclidineは、統合失調症に対し漸増レジメンなしで1日1回経口投与が可能な治療薬として有効であり、安全性および副作用プロファイルも良好であることが示された。米国・イェール大学のJohn H. Krystal氏らが、第Ib相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。emraclidineは、統合失調症治療薬として新規開発中の脳浸透性ムスカリンM4受容体選択的ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)である。今回の結果を踏まえて著者は、「統合失調症に対するemraclidineの有効性、安全性および忍容性を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌2022年12月17日号掲載の報告。

治療抵抗性統合失調症に対する新規抗精神病薬および薬理学的戦略の最新情報

 適切な用量および投与期間による2種類以上の抗精神病薬治療で反応が得られない治療抵抗性統合失調症は、精神医学の中で最も治療困難な病状の1つであるといえる。疫学的には、治療抵抗性統合失調症は統合失調症患者の3分の1に影響するとされ、全体的な機能の観点からも患者に深刻な結果をもたらす。しかし、50年間で治療抵抗性統合失調症の適応で承認された治療薬はクロザピンのみであり、クロザピンでも反応の得られない耐性患者も少なくない。イタリア・ナポリ大学のAndrea de Bartolomeis氏らは、現在報告されている文献を批判的に評価し、治療抵抗性統合失調症の治療における新旧薬剤の役割についてレビューを行った。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年12月号の報告。

各抗うつ薬中断後の離脱症候群~WHO自発報告データベース

 各抗うつ薬中断に関連する離脱症候群や重度の副反応の危険因子に関する情報は、不足している。イタリア・ベローナ大学のChiara Gastaldon氏らは、抗うつ薬が他の薬剤と比較し、離脱症候群の報告増加と関連しているかを評価し、重度の副反応の危険因子について調査を行った。その結果、抗うつ薬は、他の薬剤よりも離脱症候群の報告が多かった。著者らは、各抗うつ薬により離脱症候群の傾向が異なることや重篤な離脱症候群を引き起こす可能性のある患者の特徴を理解したうえで、抗うつ薬の使用および中止を検討する必要があるとしている。Drug Safety誌2022年12月号の報告。

統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。  対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

MCIやアルツハイマー病患者でみられる嗅覚識別能力の低下

 金城大学の吉武 将司氏らは、地域在住高齢者において、軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(AD)の嗅覚同定能力を調査し、識別困難なにおいの特定を試みた。その結果、MCIやADの高齢者は認知機能が正常な高齢者と比較し、嗅覚同定能力の低下が認められた。このことから著者らは、認知症患者に対し嗅覚刺激に関連する治療介入を行う前に、嗅覚の評価を行うことが重要であるとしている。Journal of Physical Therapy Science誌2022年11月号の報告。  対象は、MCI高齢者(MCI群)12例、AD高齢者(AD群)17例、どちらでもない高齢者(対照群)30例。嗅覚同定能力は、においスティック(OSIT-J)による検査を用いて評価し、スコアの群間比較および群間差を調査した。次に、各においに対する正答率の群間比較を行い、識別困難なにおいの特定を試みた。

統合失調症に対する高用量ルラシドンの有効性

 福島県立医科大学の三浦 至氏らは、急性増悪期の統合失調症患者を対象に、ルラシドン80mg/日の有効性および安全性を検討した。その結果、ルラシドン40mg/日で治療した急性期統合失調症患者において、用量を80mg/日に増量した場合でも忍容性は良好であった。また、ルラシドン80mg/日への増量では、40mg/日を継続した場合と比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)サブスケールスコアのより大きな改善が認められた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月9日号の報告。

マインドフルネス・運動は本当に認知機能に有効?/JAMA

 主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。

不眠症に対する認知行動療法アプリの有効性

 サスメド株式会社の渡邉 陽介氏らは、同社が開発した不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)のスマートフォン用アプリについて、有効性および安全性を検証するため国内第III相シャム対照多施設共同動的割り付けランダム化二重盲検比較試験を実施した。その結果、不眠症治療に対するスマートフォンベースのCBT-Iシステムの有効性が確認された。Sleep誌オンライン版2022年11月10日号の報告。  不眠症患者175例を、スマートフォンベースのCBT-Iアプリ使用群(アクティブ群、87例)と、本アプリから治療アルゴリズムなどの治療の機能を除いたアプリを使用する群(シャム群、88例)にランダムに割り付け、CBT-Iアプリの有効性および安全性を評価した。主要評価項目は、ベースラインから治療8週間後のアテネ不眠尺度(AIS)の変化量とした。

認知症の根本治療薬により認知症の人は減るか?(解説:岡村毅氏)

人類史に残る論文ではないか。人類はとうとう認知症の進行を遅らせるエビデンスを得たようだ。この領域は日本のエーザイがとてつもない情熱をもって切り開いてきた。またこのレカネバブ論文のラストオーサー(日本人)は、さまざまな不条理にも負けることなく一流の研究を進めてきた。最大限の敬意を表したい。その上で、認知症を専門とする精神科医として、この偉大な一歩を解説しよう。神経学ではなくあくまで精神医学の視点であることを先に言っておく。