精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:100

双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連~ENIGMA研究

 双極性障害を含む重度の精神疾患患者では、とくに肥満が顕著に認められる。双極性障害と肥満のいずれにおいても標的となりうる器官は脳であると考えられるが、双極性障害における脳皮質の変化と肥満との関係については、これまでよくわかっていなかった。カナダ・ダルハウジー大学のSean R. McWhinney氏らは、双極性障害患者の肥満と脳皮質形態との関連について調査を行った。その結果、双極性障害患者はBMIが高いほど脳の変化が顕著であることが示唆され、双極性障害とも関連する脳領域において、高BMIには大脳皮質全体で表面積ではなく皮質厚の薄さと一貫した関連があることが認められた。Psychological Medicine誌オンライン版2023年2月27日号の報告。

不眠症に対する認知療法、行動療法、認知行動療法の長期有効性比較

 不眠症を軽減するためには、長期的な治療が重要である。米国・カリフォルニア大学バークレー校のLaurel D. Sarfan氏らは、不眠症治療に対する認知療法(CT)、行動療法(BT)、認知行動療法(CBT)の長期的な有効性について、相対的に評価した。その結果、セラピストによるCBT、BT、CTの提供は、長期にわたり不眠症による夜間および日中の症状を改善させる可能性が示唆された。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2023年2月23日号の報告。

日本の食事パターンと認知症リスク~NILS-LSAプロジェクト

 日本食の順守が健康に有益である可能性が示唆されている。しかし、認知症発症との関連は、あまりよくわかっていない。国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らは、地域在住の日本人高齢者における食事パターンと認知症発症との関連を、アポリポ蛋白E遺伝子型を考慮して検討した。その結果、日本食の順守は、地域在住の日本人高齢者における認知症発症リスクの低下と関連しており、認知症予防に対する日本食の有益性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年2月17日号の報告。  本研究データはNILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)プロジェクトの一環として収集され、愛知県在住の認知症でない高齢者1,504人(65~82歳)を対象とした20年間のフォローアップコホート調査が実施された。

うつ、不安、苦痛に対する身体活動介入の有効性~アンブレラレビュー

オーストラリア・南オーストラリア大学のBen Singh氏らは、成人のうつ病、不安、精神的苦痛に関する症状に対する身体活動の影響を明らかにするためアンブレラレビューを行った。その結果、身体活動は、幅広い成人に対しうつ病、不安、精神的苦痛の改善に有益であることが確認された。British Journal of Sports Medicine誌オンライン版2023年2月16日号の報告。  2022年1月1日までに公表された適格研究を、12件の電子データベースより検索した。成人を対象に、身体活動によるうつ病、不安、精神的苦痛を評価したランダム化比較試験のメタ解析によるシステムを適格基準とした。研究の選択は、2人の独立したレビュアーによる重複チェックにより実施した。

統合失調症患者の体重増加や代謝機能に対する11種類の抗精神病薬の比較

 抗精神病薬の投与量と代謝機能関連副作用との関係を明らかにするため、スイス・ジュネーブ大学のMichel Sabe氏らは、統合失調症患者を対象に抗精神病薬を用いたランダム化比較試験(RCT)の用量反応メタ解析を実施した。その結果、抗精神病薬ごとに固有の特徴が確認され、アリピプラゾール長時間作用型注射剤を除くすべての抗精神病薬において、体重増加との有意な用量反応関係が認められた。著者らは、利用可能な研究数が限られるなどの制限があったものの、本研究結果は、抗精神病薬の用量調整により、体重や代謝機能に対する悪影響を軽減するために有益な情報であるとしている。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年2月8日号掲載の報告。

睡眠の時間や質とうつ病リスク~コホート研究

 睡眠の時間や質およびその変化が抑うつ症状リスクに及ぼす縦断的な影響は、よくわかっていない。韓国・Hallym University Dongtan Sacred Heart HospitalのYoo Jin Um氏らは、睡眠の時間や質およびその変化が抑うつ症状の発症にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、検討を行った。その結果、睡眠の時間や質およびその変化は、若年成人の抑うつ症状と独立して関連しており、不十分な睡眠や睡眠の質の低下がうつ病リスクと関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月14日号掲載の報告。

統合失調症の入院リスクと日照時間の関連性に対する建築環境の影響

 統合失調症と日照時間との関係を検討した研究では、関連性を明らかにすることができていない。要因の1つとして、統合失調症患者の日照時間に対する建築環境の影響が考えられる。中国・安徽医科大学のLi Liu氏らは、統合失調症と日照時間の関連性に対する建築環境の影響について調査を行った。その結果、さまざまな建築環境において、日照時間は統合失調症による入院リスクに影響を及ぼすことが明らかとなった。著者らは、「本結果は、特定の地域居住で脆弱性を有する患者の識別に役立ち、医療資源の合理的な割り当てや悪影響の適時な回避によって、統合失調症発症リスク低減のための助言を政策立案者が提供することを示唆するものである」と述べている。The Science of the Total Environment誌オンライン版2023年2月8日号の報告。

オールシングスマストパス~高齢者の抗うつ薬の選択についての研究の難しさ(解説:岡村毅氏)

従来のRCTの論文とはずいぶん違う印象だ。無常(All Things Must Pass)を感じたのは私だけだろうか。この論文、老年医学を専門とする研究者には、突っ込みどころ満載のように思える。とはいえ現実世界で大規模研究をすることは大変であることもわかっている。順に説明していこう。2種類の抗うつ薬に反応しないものを治療抵抗性うつ病という。こういう場合、臨床的には「他の薬を追加する増強療法」(augmentation)か「他の種類の薬剤への変更」(switch)のどちらを選択するべきかというのは臨床的難問だ。これに対して、うつ病一般においてはSTAR*Dなどの大規模な研究が行われてきた。本研究はOPTIMUM研究と名付けられ、やはりNIH主導で大規模に行われた。

日本人の認知症タイプ別死亡リスクと死因

 近年の認知症に対する医療および長期ケアの環境変化は、疾患の予後を改善している可能性がある。そのため、認知症の予後に関する情報は、更新する必要があると考えられる。そこで、医薬基盤・健康・栄養研究所の小野 玲氏らは、日本における認知症のサブタイプ別の死亡率、死因、予後関連因子を調査するため、クリニックベースのコホート研究を実施した。その結果、日本における認知症サブタイプ別の死亡リスクや死因の重要な違いが明らかとなった。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年2月6日号の報告。

PTSDやうつ病に対するドパミンD2受容体遺伝子変異の影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病のリスク因子として、ドパミンD2受容体遺伝子の変異が多くの研究で評価されているが、その結果は一貫していない。中国・北京林業大学のXueying Zhang氏らは、ドパミンD2受容体遺伝子変異とPTSDおよびうつ病リスクとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、ドパミンD2受容体遺伝子の変異は、PTSDおよびうつ病の遺伝的な感受性に潜在的な影響を及ぼしている可能性が示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年2月4日号の報告。