アレルギー科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

乾癬治療のデュークラバシチニブ、長期投与の有用性

 中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬において、3年間のデュークラバシチニブによる継続治療は安全かつ有効であることを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のApril W. Armstrong氏らが、3試験(POETYK PSO-1、PSO-2、長期継続試験)の結果のプール解析を行い報告した。デュークラバシチニブ治療は3年間にわたり一貫した安全性プロファイルを示し、有害事象(AE)および重篤な有害事象(SAE)の発現率は、時間の経過とともに低下または同程度であった。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬患者に対するデュークラバシチニブの長期安全性と有効性を、さらに支持するものであった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。

増える成人食物アレルギーと新規アレルゲン、「食べたい」に応えるために/日本アレルギー学会

 成人の食物アレルギーは、罹患者数が増加の一途をたどっている。しかし、疫学データの不足や病態解明が不十分であることなどから、専門診療の需要が急増している。このような背景から、成人の食物アレルギーは近年注目を集めている。そこで第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「成人の食物アレルギーアップデート」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムにおいて、矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が「成人領域における食物アレルギーの新たなアレルゲン」というテーマで、新たなアレルゲンの同定方法、注目される新たなアレルゲン、アレルゲン解析後の対応について解説した。

喘息やCOPDの増悪に対する新たな治療法とは?

 英国、バンベリー在住のGeoffrey Pointingさん(77歳)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪がもたらす苦痛を表現するのは難しいと話す。「正直なところ、増悪が起きているときは息をすることさえ困難で、どのように感じるのかを他人に伝えるのはかなり難しい」とPointingさんはニュースリリースの中で述べている。しかし、既存の注射薬により、こうした喘息やCOPDの増悪の恐ろしさを緩和できる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。「The Lancet Respiratory Medicine」に11月27日掲載された同試験では、咳や喘鳴、息苦しさ、痰などの呼吸器症状の軽減という点において、モノクローナル抗体のベンラリズマブがステロイド薬のプレドニゾロンよりも優れていることが明らかになった。論文の上席著者である英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器科のMona Bafadhel氏は、「この薬は、喘息やCOPDの患者にとってゲームチェンジャーになる可能性がある」と期待を示している。

喘息予防・管理ガイドライン改訂、初のCQ策定/日本アレルギー学会

 2024年10月に『喘息予防・管理ガイドライン2024』(JGL2024)が発刊された。今回の改訂では初めて「Clinical Question(CQ)」が策定された。そこで、第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「JGL2024:Clinical Questionから喘息予防・管理ガイドラインを考える」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは4つのCQが紹介された。  「CQ3:成人喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か?」について、谷村 和哉氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座)が解説した。

喘息は子どもの記憶能力に悪影響を及ぼす

 子どもの喘息は記憶能力の低下と関連し、特に、喘息を早期発症した子どもではその影響が顕著であることが、米カリフォルニア大学デービス校心と脳センターのSimona Ghetti氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。Ghetti氏らは、「この研究は、子どもの喘息と記憶能力の問題との関連を示した初めてのものだ」と述べている。  米国では、子どもの喘息患者数は460万人程度と見積もられている。論文の筆頭著者である同大学デービス校心理学分野のNicholas J. Christopher-Hayes氏は、「幼少期は記憶能力、より一般的には認知能力が急速に向上する時期だ。子どもに喘息があると、その向上が遅れることが考えられる」と大学のニュースリリースで述べている。

アナフィラキシーの認識と対応にはいまだ課題も

 アナフィラキシーは、ごく微量であっても、ピーナッツなどの食物アレルゲンに対して突然生じる重篤なアレルギー反応で、生命を脅かすこともある。このほど、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次総会(ACAAI 2024、10月24〜28日、米ボストン)で発表された2件の研究から、米国のアナフィラキシーへの対応プロトコルには州によりばらつきがあり、その多くは不完全で時代遅れであること、また、アレルギーを持つ人やその介護担当者の多くが、アナフィラキシーが生じた際に、どの時点で何をすべきかを正しく理解していないことが判明した。

飛行機の換気システムでナッツアレルゲンは広がらない

 ナッツやピーナッツにアレルギーを持っている人は、「飛行機の中で誰かがナッツを食べているかもしれない」と心配する必要はないようだ。一般的に言われている、「ナッツなどのアレルゲンが機内の換気システムを通じて広がる」という説を裏付けるエビデンスは見つからなかったとする研究結果が報告された。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)国立心肺研究所アレルギー・免疫学臨床教授のPaul Turner氏と同研究所のNigel Dowdall氏によるこの研究結果は、「Archives of Disease in Childhood」に10月16日掲載された。Turner氏は、「実際、飛行中の食物アレルギー反応の発生件数は、地上に比べて10~100倍も少ない。これは、おそらく食物アレルギーのある乗客が飛行中にさまざまな予防措置を講じているためと思われる」と述べている。

乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?

 生物学的製剤の投与を受けている乾癬患者における真菌感染症リスクはどれくらいあるのか。南 圭人氏(東京医科大学皮膚科)らの研究グループは、臨床現場において十分に理解されていないその現状を調べることを目的として、単施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、インターロイキン(IL)-17阻害薬で治療を受けた乾癬患者は、他の生物学的製剤による治療を受けた患者よりも真菌感染症、とくにカンジダ症を引き起こす可能性が高いことが示された。さらに、生物学的製剤による治療を開始した年齢、糖尿病も真菌感染症の独立したリスク因子であることが示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年9月30日号掲載の報告。

ウパダシチニブ、ADの頭頸部病変における新たな有効性解析結果/アッヴィ

 2024年10月15日、アッヴィはウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の第III相試験であるMeasure Up 1試験とMeasure Up 2試験について、アトピー性皮膚炎(AD)の頭頸部病変における重症度別の有効性を示す新たな解析結果を発表した。  AD患者において、頭部、頸部、顔面、手など、特定の部位に現れるADの症状は、症状の発生頻度や患者の生活の質に重大な影響を及ぼしうることが示されている。また、リアルワールド観察研究である、UP-TAINED試験で70%、AD-VISE試験で74.5%以上のAD患者においてベースライン時に頭頸部病変が認められており、この領域に対する有効な治療法の必要性が高まっている。

ウイルスを寄せ付けない鼻スプレーを開発

 薬剤を含まない鼻スプレーが、理論的には、マスク着用よりもインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの呼吸器系病原体の拡散を防ぐのに効果的である可能性を示唆する研究が報告された。このスプレーに含まれている医学的に不活性な成分が、人に感染する前に鼻の中の病原体を捕らえるのだという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院麻酔科のNitin Joshi氏らによるこの研究結果は、「Advanced Materials」に9月24日掲載された。  論文の責任著者の一人である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJeffrey Karp氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、呼吸器系病原体が非常に短期間で、人類に極めて大きな影響を与えることをわれわれに示した。その脅威は、今も続いている」と話す。