循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:85

SGLT2阻害薬、DM有無問わずCKD進行と心血管死を抑制/Lancet

 SGLT2阻害薬は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者のみならず慢性腎臓病または心不全を有する患者においても、糖尿病の状態、原発性腎疾患または腎機能にかかわらず、腎臓病進行および急性腎障害のリスクを低下させることが、英国・オックスフォード大学のNatalie Staplin氏らSGLT2 inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)による解析の結果、報告された。Lancet誌2022年11月19日号掲載の報告。研究グループは、MEDLINEおよびEmbaseを用い、2022年9月5日までに発表されたSGLT2阻害薬の臨床試験(SGLT1/2阻害薬の併用を含む、年齢18歳以上の成人を対象とした二重盲検プラセボ対照試験[クロスオーバー試験は除く]、各群500例以上、試験期間6ヵ月以上)を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。

急性心不全、強化治療戦略で死亡・再入院リスク減/Lancet

 急性心不全で入退院後、診療ガイドラインに準じた標準的心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)の早期漸増と頻回なフォローアップによる強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、および180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、フランスのパリ・シテ大学のAlexandre Mebazaa氏らが実施した多施設共同無作為化非盲検並行群間試験「STRONG-HF試験」の結果、示された。急性心不全で入退院後にGDMTを行う際の用量や漸増速度に関するエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版2022年11月7日号掲載の報告。

Pharmacoequity―SGLT2阻害薬/GLP-1受容体作動薬は公正に処方されているか?-(解説:住谷哲氏)

筆者は本論文で初めてpharmacoequityという用語を知った。「処方の公正性」とでも訳せばよいのだろうか。平等equalityと公正equityとの違いもなかなか難しいが、この用語の生みの親であるDr. Utibe R. Essienは、Ensuring that all individuals, regardless of race, ethnicity, socioeconomic status, or availability of resources, have access to the highest quality medications required to manage their health is “pharmacoequity”. と述べている。その意味するところを簡単に言えば、エビデンスに基づいた治療薬を必要とするすべての患者に公正に処方することを担保するのがpharmacoequityである、となる。

AMI救急患者、層別化と迅速フォローでアウトカム改善/NEJM

 救急外来を受診した急性心筋梗塞患者について、臨床医の入退院の意思決定を支援するために病院ベースで開発したポイント・オブ・ケア(POC)アルゴリズムを用いて患者を層別化し、高リスク患者は入院させ、低リスク患者については外来で迅速にフォローアップをすることで、通常ケアと比較し、30日以内のあらゆる死亡および心血管系入院の複合リスクの有意な低下(補正後ハザード比[HR]:0.88)が示された。カナダ・トロント大学のD. S. Lee氏らが、10病院を対象に行ったステップウェッジクラスター無作為化試験「COACH試験」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年11月5日号掲載の報告。  研究グループは、救急外来を受診した急性心筋梗塞の成人患者について、POCアルゴリズムの使用と外来での迅速なフォローアップがアウトカムに影響するかを検討する試験を行った。カナダ・オンタリオ州の10病院を、通常治療(対照)フェイズと介入フェイズをクロスオーバーして順次開始する無作為に割り付け、被験者にPOCアルゴリズムを使い、死亡リスクにより層別化。介入フェイズでは、低リスク患者は3日以内に退院し、標準化された外来ケアを受けた。高リスク患者は、入院した。  主要アウトカムは、30日以内の全死因死亡または心血管入院の複合アウトカム、および20ヵ月以内の同複合アウトカムだった。

いよいよRNAの薬の時代!(解説:後藤信哉氏)

生命機能を担うタンパク質の構造と機能はDNA配列により規定される。細胞におけるタンパク質の産生はDNA配列に基づいたRNAの配列の影響を受ける。分子生物学の黎明期に医学教育を受けた筆者には、ゲノム編集などのDNAを標的とする治療の論理を理解できても、低分子干渉RNAを薬にするとは想像したこともなかった。本研究は生命体に関する分子生物学的研究の進展が新規技術による革新的治療法を生み出す可能性を示唆した画期的研究である。心筋梗塞の発症とLDLコレステロールの関係が深いことは広く知られている。スタチン、PCSK9阻害薬などLDLコレステロールを十分に低下させる治療は広く普及した。それでも冠動脈疾患の再発を完全に予防できているわけではない。本研究では冠動脈疾患のリスク因子としてLDLコレステロールよりも複雑なリポ蛋白(a)を治療標的とした。

治療抵抗性高血圧、二重エンドセリン受容体拮抗薬が有効/Lancet

 エンドセリン経路の遮断による降圧作用が示唆されているが、現時点では治療標的とはなっていない。オーストラリア・西オーストラリア大学のMarkus P. Schlaich氏らは「PRECISION試験」において、二重エンドセリン受容体拮抗薬aprocitentanは治療抵抗性高血圧患者で良好な忍容性を示し、4週の時点での収縮期血圧(SBP)がプラセボに比べ有意に低下し、その効果は40週目まで持続したと報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月7日号に掲載された。  PRECISION試験は、欧州、北米、アジア、オーストラリアの22ヵ国193施設が参加した無作為化第III相試験であり、2018年6月~2022年4月の期間に参加者の登録が行われた(Idorsia PharmaceuticalsとJanssen Biotechの助成を受けた)。  対象は、利尿薬を含むクラスの異なる3種の降圧薬から成る標準化された基礎治療を受けたが、診察室での座位SBPが140mmHg以上の患者であった。  試験は連続する3部から成り、パート1は4週間の二重盲検無作為化プラセボ対照の期間で、患者は標準化基礎治療に加えaprocitentan 12.5mg、同25mg、プラセボの1日1回経口投与を受ける群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。パート2は32週間の単盲検(患者)の期間で、すべての患者がaprocitentan 25mgの投与を受けた。パート3は12週間の二重盲検無作為化プラセボ対照の投与中止期で、再度無作為化が行われ、患者はaprocitentan 25mg群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。  主要エンドポイントは、パート1のベースラインから4週目までの診察室座位SBP、主な副次エンドポイントはパート3のベースライン(36週目)から4週目(40週目)までの診察室座位SBPの変化であった。そのほか副次エンドポイントには、24時間時間自由行動下SBPの変化などが含まれた。

デルイソマルトース第二鉄、心不全入院/心血管死を抑制か/Lancet

 左室駆出率(LVEF)低下と鉄欠乏を伴う幅広い心不全患者において、デルイソマルトース第二鉄の静脈内投与は通常治療と比較して、心不全による入院および心血管死のリスクを低下させる可能性があり、重篤な心臓有害事象が少ないことが、英国・Portsmouth Hospitals University NHS TrustのPaul R. Kalra氏らが実施した「IRONMAN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年11月5日号で報告された。

極めて難しい妊婦・産婦の静脈血栓症に対して日本は世界の標準治療ができない?(解説:後藤信哉氏)

血栓症を専門とする医師として最も困難な臨床病態の一つが妊婦・産婦の静脈血栓症である。高齢者の心筋梗塞であれば死亡などの合併症を起こしても納得しやすい。多くの妊婦が安全に出産するなかで自分の家族が静脈血栓症に凶変すれば家族としては納得できない。血栓性素因などが同定されたら、血栓予防を行うことになる。数ヵ月の妊娠期間内、継続的に血栓予防を行うためにはどうしたらいいだろうか?経口抗凝固薬として長年のデータの蓄積のあるワルファリンは胎盤を通過する。催奇形性もあるため器官形成期には使用できない。選択的トロンビン、Xa阻害薬は心房細動の脳卒中予防などに広く使用されているが、妊婦への使用経験は少ない。低分子として胎盤を通過すれば胎児への影響も懸念される。

ヒドロクロロチアジド、アモキシシリンなどに「使用上の注意」改訂指示

 厚生労働省は11月16日付で、ヒドロクロロチアジド含有製剤、アモキシシリン水和物含有製剤などに対し、使用上の注意の改訂指示を発出した。  今回の改訂指示は、ヒドロクロロチアジド含有製剤4剤の「重大な副作用」の項に「急性呼吸窮迫症候群」を、アモキシシリン水和物含有製剤6剤の「重要な基本的注意」の項のショックに関する問診の注意喚起にアナフィラキシー・アレルギー反応に伴う急性冠症候群などを、ロキサデュスタットの「重要な基本的注意」の項に定期的に甲状腺機能検査を促す注意を、イマチニブメシル酸塩の「重大な副作用」の項「血栓性微小血管症」に関する注意喚起を、それぞれ追記する内容となっている。詳細は以下。

開発中のsiRNA治療薬、リポ蛋白(a)高値ASCVDに有効/NEJM

 リポ蛋白(a)値150nmol/L超のアテローム性心血管疾患(ASCVD)患者に対する、開発中の低分子干渉(si)RNA薬olpasiranの投与はプラセボと比較して、36週後のリポ蛋白(a)値を有意に低下したことが示された。米国・ハーバード大学医学大学院のMichelle L. O' Donoghue氏ら「OCEAN(a)-DOSE試験」研究チームが、281例を対象に行った第II相プラセボ対照無作為化用量設定試験の結果を報告した。36週後のリポ蛋白(a)値は用量に依存して70.5~101.1%低下したという。結果を踏まえて著者は、「今回の短期中規模試験では、olpasiranは安全であると思われた。また基礎的所見は、より大規模な評価を行い、ASCVDにおけるリポ蛋白(a)との因果関係を確認する必要があることを示すものであった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2022年11月6日号掲載の報告。  研究グループは、ASCVDでリポ蛋白(a)値150nmol/L超の18~80歳、281例を対象に試験を行った。  被験者を無作為に5群に割り付け、olpasiranを12週ごと10mg(10mg/12週群)、同75mg(75mg/12週群)、同225mg(225mg/12週群)、24週ごと225mg(225mg/24週群)、またはプラセボ(マッチングプラセボ群)をそれぞれ皮下投与した。  主要エンドポイントは、ベースラインから36週の、リポ蛋白(a)値のパーセント変化で、プラセボ補正後の平均%変化で報告した。安全性も評価した。