循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:84

心臓手術後の急性腎障害、基礎代謝パネルで予測可能か/JAMA

 心臓手術を受ける患者において、周術期の基礎代謝パネル検査値に基づく予測モデルは、術後72時間以内および14日以内の中等症~重症急性腎障害(AKI)について、良好な予測精度を有することが、米国・クリーブランドクリニックのSevag Demirjian氏らによる検討で示された。AKIの治療は、タイムリーな診断に基づけば効果的である一方、腎障害後の血清クレアチニン値の上昇の遅れが治療開始を遅らせてしまう可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、リスク予測ツールの利用が臨床アウトカムを改善するかどうかを確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2022年3月8日号掲載の報告。

高感度トロポニンを歓迎している?(解説:後藤信哉氏)

過去の12誘導心電図のない症例の急性虚血性心疾患の入院の是非を決めるのは難しい。胸痛が微妙、心電図のST変化も微妙な場合には心筋ダメージのバイオマーカーが決め手になる。長年使用してきたCKは上昇までに3~4時間はかかる。外傷、筋トレなどにて骨格筋の成分が上がる場合もある。発症後早期に上昇し、心筋のみのダメージを反映するマーカーが必須であった。以前のトロポニンでは陽性・陰性の2択であった。急性虚血疑いでは陽性な入院、陰性なら帰宅と明確に使用できた。高感度トロポニンの時代になって急性虚血の現場では複雑性が増した。基準値より相当高くても、高齢、腎機能障害の影響で心筋虚血の反映でない場合もある。少なくとも2回計測して変化を見る必要ができた。高感度トロポニン値を規定する因子は虚血による心筋ダメージのみではないことがわかってきた。心筋由来ではあるが、産生速度と消失速度のバランスにて血中濃度が高い症例もあるのだ。複雑性を有するマーカーであるため、急性虚血以外の複雑性を有する病態の予後予測マーカーにもなる可能性がある。

日本人がん患者の心血管疾患、発生しやすいがん種などが明らかに/日本循環器学会

 近年、がん患者の生存率向上により治療の副作用の1つである心毒性が問題視されている。ところが、アジア圏のなかでもとくに日本国内のそのような研究報告が乏しい。今回、村田 峻輔氏(国立循環器病センター予防医学・疫学情報部)らが、国内がん生存者における心血管疾患の全国的な発生率に関する後ろ向きコホート研究を行い、不整脈、心不全(HF)、および急性冠症候群(ASC)の100人年当たりの発生率(IR)は、それぞれ2.26、2.08、0.54 で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高いことが明らかになった。本結果は2022年3月11~13日に開催された第86回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies2で報告された。  本研究では、がん患者の心血管疾患発症に関し「HBCR(Hospital-based cancer registry)を用いてがん患者における心血管疾患の発生状況を説明する」「年齢・性別による発症頻度の違いを比較」「がん患者の心不全予防調査」の3つを目的として、対象者を1年間追跡して各心血管疾患の年間発生率を調査した。2014~2015年のDPCデータから対象のがん患者(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)の心血管疾患発生状況を、HBCRデータからがん種、病期、1次治療に関する情報を抽出し、不整脈、HF、ASC、脳梗塞(CI)、脳出血(ICH)、静脈血栓塞栓症(VTE)の6つの発生率を調査した。各心血管疾患について、全がん患者、がん種別、年齢・性別のサブグループで100人年当たりのIRと95%信頼区間を算出した。また、各がん種で各心血管疾患のIRを比較、HF発生に対する潜在的な予測因子を調べるためにロジスティクス回帰分析を行った。

ゼロ・リスクか?ウィズ・リスクか?それが問題だ(解説:甲斐久史氏)

早いもので20年ほど前、外勤先の内科クリニックでの昼下がり。「今朝から、とくにどこというわけではないが、何となく全身がきつい」と20歳代後半の女性が来院した。熱も貧血もないのに脈拍が120前後。血圧はもともと低いそうだが収縮期血圧は80mmHg弱。心音・呼吸音に明らかな異常はないが、皮膚が何となくジトーッと冷たい気がする。聞いてみると先週、2〜3日間、風邪にかかったとのこと。心電図をとってみた。洞性頻脈。PQ延長(0.30秒くらいだったか?)。ドヨヨーンとした嫌な波形のwide QRS。どのように患者さんに説明し納得してもらったかは覚えていないが、ドクターヘリでK大学病院に搬送した。

AF患者の抗血栓療法、DOAC登場による10年間の変化(伏見AFレジストリ)/日本循環器学会

 日本のコミュニティベースの心房細動(AF)コホートである伏見AFレジストリは、京都市伏見区で2011年3月から実施されているAF患者の前向き観察研究で、患者登録は2017年5月まで行われた。今回、2022年2月までの追跡調査データを入手できた4,489例の抗血栓療法状況および主要有害イベントの発生を調査した結果を、第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11日~13日)で赤尾 昌治氏(国立病院機構京都医療センター循環器内科)が発表した。なお、本結果はCirculation Journal誌オンライン版2022年3月13日号に同時掲載された。

TAVR後の心房細動へのエドキサバン、日本人での解析(ENVISAGE-TAVI AF)/日本循環器学会

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)成功後の心房細動患者に対するエドキサバンとビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を比較したENVISAGE-TAVI AF試験の日本人サブ解析の結果、臨床アウトカムにおけるエドキサバンとビタミンK拮抗薬の違いはごくわずかだったことを、帝京大学の渡邊 雄介氏が第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)のLate Breaking Clinical Trialsで報告した。  ENVISAGE-TAVI AF試験は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化比較試験。TAVR成功後の心房細動患者においてエドキサバン(60mg/日もしくは30mg/日)とビタミンK拮抗薬の有効性と安全性を最大3年間比較した。有効性に関する主要アウトカムは有害臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性塞栓イベント、人工弁血栓症、大出血)の複合、安全性に関する主要アウトカムは大出血だった。全体集団ではエドキサバン群がビタミンK拮抗薬群に対し非劣性を示すこと、および大出血発生率が高いことが報告されているが、わが国ではTAVRを受ける患者は小柄な女性が多く、抗血栓療法による出血リスクに影響する可能性がある。そこで、日本人においても全体の結果と一致するか評価するべくサブ解析を実施した。

高感度トロポニンI、心臓術後1日以内の測定値は閾値の200倍!?/NEJM

 心臓手術を受けた患者において、30日死亡率が高いことと関連する術後の高感度トロポニンIの閾値は、予後に重大な影響を及ぼす周術期の心筋損傷の同定のために推奨されている値(基準値上限[26ng/L]の>10~≧70倍)よりもはるかに高く、単独冠動脈バイパス術(CABG)または単独大動脈弁置換術・形成術(AVR)を受けた患者の術後1日以内の測定値は、この推奨閾値の200倍以上に達することが、カナダ・マクマスター大学のP.J. Devereaux氏らが実施した「VISION Cardiac Surgery試験」で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2022年3月3日号に掲載された。  本研究は、心臓手術後の30日死亡の予測における高感度トロポニンIの推奨閾値の検証を目的とする国際的な前向きコホート研究であり、2013年5月~2019年4月の期間に12ヵ国24病院で患者の募集が行われた(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。  対象は、年齢18歳以上の心臓手術(単独心膜開窓術、心膜切除術、ペースメーカー・除細動器の留置術を除く)を受けた患者であった。術前と、術後3~12時間および1、2、3日に、高感度トロポニンIの測定が行われた。患者、医療提供者、データ収集者には、高感度トロポニンI検査の結果は知らされなかった。  主要アウトカムは術後30日以内の死亡とされた。高感度トロポニンIの頂値と、欧州心臓手術リスク評価システムII(EuroSCORE II)のスコアで補正した30日死亡率との関連を評価する回帰スプラインを用いてCox解析が行われた。EuroSCORE IIは、心臓手術後の死亡リスクを年齢や性別などの18の変数に基づいて推定するものである。

HFpEFに対する左心房の負荷を軽減する心房間シャントデバイスの経カテーテル留置の第III相試験では有意な臨床効果が示されなかった(解説:原田和昌氏)

駆出率が保持された心不全(HFpEF)に対して有効な薬物療法がないなかで、左心房の負荷を軽減する心房間シャントデバイス(IASD System II、Corvia Medical)の留置がHFpEF患者の運動時のPCWPを有意に低下し、1年後の心不全入院を減らす傾向(p=0.06)があることがHasenfuβらのREDUCE LAP-HF I試験により示され、にわかに注目を集めることとなった。しかしながら、LVEF≧40%の心不全626例に対する無作為化第III相試験であるREDUCE LAP-HF II試験において、同デバイスの経カテーテル的留置を受けた群は、対照群と比較し有意な臨床効果が示されなかった。本試験は89施設による国際共同試験で、スクリーニング時に心エコーと運動時の血行動態検査(PCWPなど)を行い、対照群はシャム手技を受け最大24ヵ月の観察が行われた。主要エンドポイントとして、心血管死、非致死性虚血性脳卒中、心不全イベント、KCCQサマリースコアの変化を用いて、重要なものから階層的に検定していくFinkelstein-Schoenfeld法(WIN比)にて統計解析が行われた。シャム群と比較した心房間シャント療法群のWIN比は1.0で有意差はなく、主要評価項目の個別の要素にも有意差はなかった。本試験は多大な労力をかけたわりに非常に残念な結果となってしまった。

学問的に新しい知見はあるのか?(解説:野間重孝氏)

 WellsスコアはWells PSにより2007年にまとめられた深部静脈血栓症のスクリーニングスコアで(Wells PS, et al. JAMA. 2006;295:199-207.)、これと血中D-ダイマー値を組み合わせることにより相当程度確実に深部静脈血栓症のスクリーニングを行うことができる。この有用性は2014年にオランダのGreersing GJらのメタ解析により確かめられた。これは以前ジャーナル四天王でも取り上げられたので、ご覧になった方も多いのではないかと思う(「深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ」)。少し注意を要するとするのは、Wellsスコアの項目については施設により一部改変されている場合があること、判定法には2段階法と3段階法があることであるが、本論文ではWellsスコア原法の3段階解釈+D-ダイマー値という最もオーソドックスな方法を採用している。今回の研究は、その方法により安全に深部静脈血栓症のスクリーニングが可能であること、かつそれにより下肢静脈エコー検査の施行率を47%減らすことができることを前向き試験で示したものである。

難治性院外心停止、体外心肺蘇生法vs.標準的蘇生法/JAMA

 難治性院外心停止(OHCA)患者において、心停止状態での早期搬送/体外循環式心肺蘇生法(ECPR)/侵襲的診断と治療から成るケアバンドルは、標準的な蘇生法と比較して、180日後の神経学的アウトカム良好での生存率を改善しないことが、チェコ・カレル大学のJan Belohlavek氏らが実施した単施設無作為化臨床試験「Prague OHCA試験」の結果、示された。OHCAはアウトカムが不良であり、心停止状態での搬送/ECPR/即時侵襲的戦略の有益性については不明であった。JAMA誌2022年2月22日号掲載の報告。