循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:87

遺伝子操作したブタの心臓をヒトに移植、米国で世界初

 米国・メリーランド大学医学部は1月10日付のリリースで、重度の心疾患を有する男性患者(57歳)に、遺伝子操作したブタの心臓を世界で初めて移植したと発表した。移植手術は7日に実施され、術後3日時点における患者の経過は順調という。今後、数週間にわたって慎重に経過観察される。今回の執刀医を務めたBartley Griffith氏は、「この画期的な手術は、臓器不足の危機の解決に一歩近づくものだ」と述べ、前例のない試みに対する手応えを示した。

新型コロナウイルス感染におけるDOACの意味:ランダム化比較試験か観察研究か?(解説:後藤信哉氏)

観察研究にて、新型コロナウイルス感染による入院中の血栓イベント予防におけるDOACの価値は限定的とされた。血栓イベントリスクは退院後も高いと想定される。退院後の低分子ヘパリンの継続の根拠も確立されていない。本研究ではVTE risk 2~3以上、あるはD-dimer 500以上の症例を対象として抗凝固療法なしと1日10mgのrivaroxabanを比較するオープンラベルのランダム化比較試験である。退院後の抗凝固薬として標準治療は確立されていない。しかし、無治療と10mg rivaroxabanの比較試験の施行根拠を明確に説明することも難しい。本研究はブラジルの14の施設にて施行された。

尽きることのない話題PCI vs.CABG、FAME 3試験をめぐって(解説:中川義久氏)

虚血性心疾患の治療において、PCI vs.CABGは尽きることのない話題である。欧米などの48施設で実施したFractional Flow Reserve versus Angiography for Multivessel Evaluation(FAME)3試験の結果を米国Stanford大学の Fearon氏がTCT 2021で発表した。その結果は、NEJM誌オンライン版2021年11月4日号に報告された(Fearon WF, et.al. N Engl J Med. 2021 Nov 4. [Epub ahead of print])。3枝冠動脈疾患患者においてPCIの適応を判断するにあたり、冠血流予備量比(FFR)のガイド下とすることで予後が改善し、PCIがCABGに劣らない成績を達成することが期待されていた。つまりPCIがCABGに劣っていないことを証明しようという非劣性試験である。結果は、1年時点の死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建術の複合イベントの発生で、FFRガイド下のPCIは、CABGに対する非劣性を示すことができなかった。3枝冠動脈疾患患者においてはCABGが依然として最適な治療法といえることが再確認されたのである。

「誤解を招く医療略語」の解決に役立つアプリ、ポケットブレインとは?

 電子カルテの普及により多職種間で患者情報を共有しやすくなり、紙カルテ時代とは比にならないくらい業務効率は改善したー。はずだったのだが、今度は医療略語の利用頻度の増加による『カルテの読みにくさ』という新たな課題が浮上している。  医療略語は忙しい臨床現場で入力者の負担軽減に寄与する一方で、略語の多用や種類の増加が、職種間での情報共有における新たな弊害になっている可能性がある。また、診療科や職種により医療略語の意味が異なるため、“医療事故”のリスク因子にもなりかねない。増加の一途をたどる医療略語に、医療現場はどう対処していけばよいのだろうか。

コンセンサスベースとエビデンスベース診療ガイドラインの比較(解説:折笠秀樹氏)

診療ガイドラインの質に関する調査結果である。エビデンスベースの土俵で比較したら、エビデンスベースの診療ガイドライン(GL)のほうがコンセンサスベースGLよりも良かった、という当然の結果であった。循環器関係のACC/AHAガイドラインが12本(1,434推奨)、がん関係のASCOガイドラインが69本(1,094推奨)、合計2,528推奨を研究対象とした。各推奨について、著者の2人がペアとなり、次のことを調べた。コンセンサスベースGLかエビデンスベースGLかの別、用いたグレーディングシステム、推奨度(強・弱)、エビデンスの質(高・中・低)である。推奨度の付け方としては、GRADEシステムというのが有名である。日本の診療ガイドラインは、近年では、ほぼそれに準拠して作られているのではないかと思う。

うつ病患者にみられる併存疾患~ネットワークメタ解析

 うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。  本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。

高齢AF患者、リバーロキサバンvs.アピキサバン/JAMA

 65歳以上の心房細動患者に対し、リバーロキサバンはアピキサバンに比べて、主要な虚血性または出血性イベントリスクを有意に増大することが、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが米国のメディケア加入者約58万例について行った後ろ向きコホート試験の結果、示された。リバーロキサバンとアピキサバンは、心房細動患者の虚血性脳卒中予防のために最も頻繁に処方される経口抗凝固薬だが、有効性の比較については不明であった。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。

心肺停止時にカルシウム投与は無効(解説:香坂俊氏)

ACLSのプロトコールには「低カルシウム血症や高カリウム血症、さらにカルシウム拮抗薬のoverdose」といった、ごく限られた状況でカルシウム製剤の静注投与が推奨されている。今回デンマークで行われたRCTでは、このカルシウム製剤の有効性をより広範囲の一般的な院外心肺停止症例で検証したが、残念ながらその結果はカルシウム製剤側に害がある可能性が高いということで(ROSC[return of spontaneous circulation]がカルシウム製剤投与群で19%であったのに対し、プラセボ群で27%[リスク比:0.72、p=0.09])、途中で試験中止が勧告されるという結果となった。

モデルナ製とファイザー製、それぞれの心筋炎・心膜炎リスク因子/BMJ

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnders Husby氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種と心筋炎/心膜炎との関連を調査する目的で、デンマーク住民を対象にコホート研究を行った。その結果、ワクチン未接種者と比較して、mRNA-1273(Moderna製)ワクチンは心筋炎/心膜炎の有意なリスク増加と関連しており、とくに12~39歳でリスクが高いこと、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)ワクチンは女性においてのみ有意なリスク増加が認められたことが示された。ただし、絶対発症率は若年層でも低いことから、著者は「今回の知見の解釈には、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の利点を考慮すべきであり、少数のサブグループ内でのワクチン接種後の心筋炎/心膜炎のリスクを評価するには、より大規模な国際的研究が必要である」と述べている。BMJ誌2021年12月16日号掲載の報告。

心血管疾患2次予防にインフルエンザワクチンは必要か

 急性冠症候群の治療期間中における早期のインフルエンザワクチン接種によって、12ヵ月後の心血管イベント転帰改善が示唆された。本研究は、スウェーデン・Orebro UniversityのOle Frobert氏らにより欧州心臓病学会(ESC 2021)にて報告された。Circulation誌2021年11月2日号に掲載。  実施された国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験(IAMI trial)は、2016年10月1日~20年3月1日の4シーズンに8ヵ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ラトビア、英国、チェコ、バングラデシュ、オーストラリア)30施設で参加者を登録。急性心筋梗塞(MI)または高リスクの冠動脈疾患患者を対象に、入院から72時間以内にインフルエンザワクチンまたはプラセボを接種する群に1:1でランダムに割り付けた。  なお、過去12ヵ月間にインフルエンザワクチン接種を受けた者、入院したシーズン中にワクチン接種を受ける意思がある者は除外された。