米国成人において、2007~08年から2017~18年の10年間で脂質値は改善しており、この傾向は非ヒスパニック系アジア人を除くすべての人種・民族のサブグループで一貫していたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らの解析で明らかとなった。脂質高値は、心血管疾患の修正可能なリスク因子であるが、米国成人における過去10年の脂質値および脂質コントロールの傾向や、性別や人種・民族別の差異はほとんど知られていなかった。JAMA誌2022年8月23・30日号掲載の報告。
2007~08年から2017~18年のNHANESから約3万3千人について分析
研究グループは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の2007~08年から2017~18年のデータを用い、米国成人を代表するよう重み付けされた20歳以上の米国成人3万3,040例を対象に、連続横断分析を行った。
主要評価項目は脂質値(総コレステロール、HDL-C、LDL-C、および中性脂肪[TG])、副次評価項目はスタチン治療を受けている成人における脂質コントロール率(総コレステロール200mg/dL以下を達成と定義)であった。
解析対象集団は、平均年齢47.4歳、女性51.4%、非ヒスパニック系黒人12.0%、メキシコ系アメリカ人10.3%、他のヒスパニック系アメリカ人6.4%、非ヒスパニック系白人62.7%、他の人種・民族(非ヒスパニック系アジア人など)8.5%であった。
脂質値は10年で改善も、スタチン服用者の脂質コントロール率には変化なし
米国成人の年齢調整総コレステロール値は、2007~08年の197mg/dLから、2017~18年には189mg/dLに有意に改善した(群間差:-8.6mg/dL、95%信頼区間[CI]:-12.2~-4.9mg/dL、傾向のp<0.001)。男女別でも同様の傾向であった。黒人、メキシコ系アメリカ人、他のヒスパニック系アメリカ人および白人では、総コレステロール値の有意な改善を認めたが、アジア人では有意な変化はみられなかった。
スタチン服用者における年齢調整脂質コントロール率は、2007~08年で78.5%、2017~18年で79.5%であり、有意な変化は認められなかった(群間差:1.1%、95%CI:-3.7~5.8、傾向のp=0.27)。この傾向は男女別でも類似していた。人種・民族別では、メキシコ系アメリカ人のみ有意な改善が確認された(2007~08年73.0%、2017~18年86.5%、群間差;13.5%、95%CI:-2.6%~29.6%、傾向のp=0.008)。
2015~18年の年齢調整脂質コントロール率は、男性より女性のほうが有意に低く(オッズ比[OR]:0.54、95%CI:0.40~0.72)、また、白人と比較して黒人(OR:0.66、95%CI:0.47~0.94)ならびに他のヒスパニック系(OR:0.59、95%CI:0.37~0.95)で有意に低かった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)