糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:34

減量効果が大きいのは?時間制限食vs.カロリー制限食

 摂取カロリーを制限しない時間制限食は、人気のある減量法となっているが、その有効性のエビデンスは限られている。とくに、長期の影響については明らかになっていない。そこで、米国・イリノイ大学シカゴ校のShuhao Lin氏らは無作為化比較試験を実施し、時間制限食の効果について、カロリー制限食や食事制限なしと比較した。その結果、時間制限食とカロリー制限食はいずれも体重を減少させたが、両者に有意差は認められなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年6月27日号で報告された。

2型糖尿病の運動療法に最適な時間帯は?

 運動を午後の時間帯に行っている2型糖尿病患者は血糖コントロールがより良好になる可能性を示す、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJingyi Qian氏らの研究結果が、「Diabetes Care」に5月25日掲載された。ただし研究者らは、この結果のみでは午後の運動を推奨することはできないと述べている。  この研究は、運動を行う時間帯を変えるという介入によって、血糖管理状態が変化するか否かを検証可能なデザインでは行われていない。それでも、午後に運動することで血糖コントロールがより良好になる機序についてQian氏は、「運動による血糖管理状態への影響は、絶食状態で行うよりも食後に行った方が大きい可能性があり、午後に運動をしている人の多くが食後に運動をしているのではないか。それに対して朝に運動をしている人は、運動をしてから朝食を食べることが多いと考えられる」との推論を述べている。とはいえ、「午後に運動をする時間を取れないからといって運動をすべきでないという意味ではない」とし、「時間帯や場所にとらわれず、運動をできるタイミングですべきだ」と同氏は推奨する。

脳卒中後の血糖管理が認知機能低下抑止の鍵となる可能性

 脳卒中を発症後に血糖値が高い状態で推移していると、認知機能の低下が速くなる可能性が報告された。一方、血圧やLDL-コレステロール(LDL-C)が高いことに関しては、そのような関連は認められないという。米ミシガン大学のDeborah Levine氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月17日掲載された。  Levine氏によると、「脳卒中の発症後は認知症のリスクが最大50倍増加するが、これまで、脳卒中の再発を防ぐこと以外に、そのリスクを抑制する治療アプローチはなかった」という。そのような状況で明らかになった今回の研究結果は、「脳卒中後に血糖値の高い状態が続いていることが、認知機能の低下を速めることを示唆しており、糖尿病に該当するか否かにかかわりなく、脳卒中後の慢性高血糖が認知機能低下を抑制するための潜在的な治療標的である可能性を示唆している」と話している。

経口セマグルチド50mg、肥満非2型糖尿病の体重減を確認/Lancet

 2型糖尿病を伴わない過体重または肥満の成人において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチド50mgの68週間の1日1回経口投与は、平均15%の体重減少をもたらし、参加者の85%で臨床的に意義のある体重減少(5%以上)を達成し、安全性プロファイルは同薬2.4mgの皮下投与やGLP-1受容体作動薬クラス全体のデータとほぼ一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学のFilip K. Knop氏らが実施した「OASIS 1試験」で示された。

肥満2型DMへの経口セマグルチド、最適な用量・期間は?/Lancet

 十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病成人患者において、経口セマグルチド25mgおよび50mgは糖化ヘモグロビン(HbA1c)値低下および体重減少に関して、同14mgに対する優越性が確認され、安全性に関して新たな懸念は認められなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、14ヵ国177施設で実施された第IIIb相多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PIONEER PLUS試験」の結果を報告した。セマグルチド1日1回経口投与は2型糖尿病の有効な治療法であり、セマグルチドの経口投与および皮下投与試験の曝露-反応解析では、曝露量の増加に伴いHbA1c値の低下および体重減少が大きくなることが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年6月26日号掲載の報告。

1日1回の経口orforglipron、肥満成人の体重減少に有効/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、1日1回の経口剤である非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、体重減少と関連することが示された。orforglipronに関して報告された有害事象は、GLP-1受容体作動薬の注射製剤と類似したものだったという。カナダ・マクマスター大学のSean Wharton氏らが、272例を対象に行った第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群比較試験の結果を報告した。肥満は、世界中で疾患および死亡に結びつく重大リスク因子となっており、1日1回の経口orforglipronの肥満成人における体重減少の有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月23日号掲載の報告。

スタチンで肝疾患を予防できる可能性の高い人は

 スタチン服用が肝疾患を予防する可能性が示唆されている。今回、ドイツ・University Hospital RWTH AachenのMara Sophie Vell氏らは、肝疾患・肝細胞がん発症の減少、および肝臓関連死亡の減少と関連するかどうかを3つのコホートで検討した。その結果、スタチン服用者は非服用者に比べ、肝疾患発症リスクが15%低く、肝細胞がん発症リスクについては最大74%低かった。また、このスタチンのベネフィットは、とくに男性、糖尿病患者、肝疾患の遺伝的リスクがある人で得られる可能性が高いことが示唆された。JAMA Network Open誌2023年6月26日号に掲載。

大量飲酒は後年の筋肉量減少のリスクを高める

 中年期や老年初期における大量の飲酒は、骨格筋量が減少するサルコペニアやフレイル(虚弱)のリスク増加をもたらす可能性のあることが、新たな研究で示唆された。英イースト・アングリア大学(UEA)ノリッジ医学部教授のAilsa Welch氏らによる研究で、「Calcified Tissue International」に5月25日掲載された。  Welch氏はこの研究の実施に至った背景について、「加齢に伴う骨格筋量の減少は、後年の筋力低下やフレイルの問題につながる。アルコール摂取は、多くの疾患において修正可能な主要リスク因子であることから、われわれは、飲酒と加齢に伴う筋肉の健康との関係について調べようと考えた」と振り返る。

高齢者糖尿病診療ガイドライン、薬物療法のエビデンス増え7年ぶりに改訂

 日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同編集である『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が5月に発刊された。2017年時にはなかった高齢者糖尿病における認知症、サルコペニア、併存疾患、糖尿病治療薬などのエビデンスが集積したことで7年ぶりの改訂に至った。今回、日本老年医学会の編集委員を務めた荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科)に改訂点について話を聞いた。  高齢者糖尿病とは、「65歳以上の糖尿病」と定義されるが、医学的な観点や治療、介護上でとくに注意すべき糖尿病高齢者として「75歳以上の高齢者と、身体機能や認知機能の低下がある65~74歳の糖尿病」と、より具体的な定義付けもなされている。

認知症リスクが高まるHbA1c値は?

 高血糖状態が続くと、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」が溜まりやすくなり、認知症発症リスクが高まるとされる。糖尿病患者が認知症リスクを減らすために目標とすべき血糖コントロールはどの程度か。オーストラリア・National Centre for Healthy AgeingのChris Moran氏らの研究がJAMA neurology誌2023年6月1日号に掲載された。  1996年1月1日~2015年9月30日の期間中、50歳以上の2型糖尿病を有するKaiser Permanente Northern California統合医療システムの会員を対象とした。期間中のHbA1c測定が2回未満、ベースライン時の認知症有病者、追跡期間3年未満の者は除外した。データは2020年2月~2023年1月に解析された。