糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:36

LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!? 

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)高値であると、冠動脈疾患(CVD)の発症や死亡のリスクが高いことが知られている。しかし、急性冠症候群患者のLDL-C低値が死亡リスクを上昇させることを示唆する観察研究の結果が複数報告されており、「LDL-Cパラドックス」と呼ばれている。そこで、スウェーデン・ウプサラ大学のJessica Schubert氏らの研究グループは、初発の心筋梗塞で入院した患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象としたデータベース研究を実施した。その結果、LDL-C高値の患者は死亡リスクが低く、非心血管疾患による入院リスクも低かった。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2023年5月31日号に掲載された。

末梢性めまいで“最も頻度の高い”良性発作性頭位めまい症、診療ガイドライン改訂

 『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン』の初版が2009年に発刊されて以来、15年ぶりとなる改訂が行わた。今回、本ガイドライン(GL)の作成委員長を務めた今井 貴夫氏(ベルランド総合病院)に専門医が押さえておくべきClinical Question(CQ)やGLでは触れられていない一般内科医が良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo、以下BPPV)を疑う際に役立つ方法などについて話を聞いた。  BPPVは末梢性めまいのなかで最も頻度が高い疾患である。治療法は確立しており予後は良好であるが、日常動作によって強いめまいが発現したり、症状が週単位で持続したりする点で患者を不安に追い込むことがある。また、BPPVはCa代謝の異常により耳石器の耳石膜から耳石がはがれやすくなって症状が出現することから、加齢(50代~)、骨粗鬆症のようなCa代謝異常が生じる疾患への罹患、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、脳卒中、片頭痛などの既往により好発するため、さまざまな診療科の医師による理解が必要になる。

フォシーガ、心不全の罹患期間によらず、循環器・腎・代謝関連の併存疾患で一貫したベネフィット/AZ

 AstraZeneca(英国)は、チェコのプラハで開催された欧州心臓病学会の心不全2023年次総会において、第III相DELIVER試験の2つの新たな解析結果から、心不全(HF)の罹患期間にかかわらず、循環器・腎・代謝(CVRM)疾患のさまざまな併存状態におけるフォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の一貫したベネフィットが裏付けられたと発表した。  第III相DELIVER試験の事前規定された解析として、左室駆出率(LVEF)が40%超の心不全患者におけるフォシーガの治療効果を、HFの罹患期間(6ヵ月以内、6ヵ月超~12ヵ月以内、1年超~2年以内、2年超~5年以内、および5年超)別に検討した。その結果、フォシーガのベネフィットがHFの罹患期間にかかわらず一貫していることが示された。さらに、高齢かつ1つ以上の併存疾患を有し、HF悪化および死亡率の高い、罹患期間が長期にわたるHF患者において、絶対利益が増加した(治療必要数[NNT]:HF罹患期間5年超の患者と6ヵ月以内の患者との比較で24:32)。

7項目でメタボ発症を予測~日本人向けリスクスコア

 向こう5年間でのメタボリックシンドローム(MetS)発症リスクを、年齢や性別、BMIなど、わずか7項目で予測できるリスクスコアが開発された。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科のSalim Anwar氏、窪薗琢郎氏らの研究によるもので、論文が「PLOS ONE」に4月7日掲載された。  MetSの有病率は、人種/民族、および、その国で用いられているMetSの定義によって異なる。世界的には成人の20~25%との報告があり、日本では年齢調整有病率が19.3%と報告されている。これまでにMetSの発症を予測するためのいくつかのモデルが提案されてきているが、いずれも対象が日本人でない、開発に用いたサンプル数が少ない、検査値だけを検討していて生活習慣関連因子が考慮されていないなどの限界点がある。著者らはこれらの点を考慮し、日本人の大規模なサンプルのデータに基づく予測モデルの開発を試みた。

肥満NASH、減量・代謝改善手術が薬物療法より有効か/Lancet

 肥満を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の患者の治療において、減量・代謝改善手術は生活様式への介入+至適な薬物療法と比較して、1年後の肝線維化の悪化を伴わないNASHの組織学的消失の割合が有意に高く、安全性にもとくに問題はないことが、イタリア・サクロ・クオーレ・カトリック大学のOrnella Verrastro氏らが実施した「BRAVES試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2023年5月27日号に掲載された。  BRAVES試験は、イタリア・ローマ市の3つの主要病院が参加した52週の非盲検無作為化試験であり、2019年4月~2021年6月の期間に患者のスクリーニングが行われた(イタリア・Fondazione Policlinico Universitario A Gemelliの助成を受けた)。

週1回の基礎インスリンにより糖尿病治療は新時代へ(解説:小川大輔氏)

1型糖尿病のみならず、2型糖尿病でも経口血糖降下薬で血糖コントロール不良の場合はインスリン療法を行う必要がある。そして生理的なインスリン分泌を再現するために、基礎インスリンとして持効型インスリンを1日1回、追加インスリンとして超速効型インスリンを1日3回組み合わせる基礎・追加インスリン(Basal-Bolus)療法が用いられる。今回Basal-Bolus療法を行っている2型糖尿病患者を対象に、1日1回の持効型インスリンと週1回の持効型インスリンを比較したONWARDS 4試験の結果がLancet誌に発表された。

糖尿病患者の眼科受診率は半数以下/国立国際医療研究センター研究所

 糖尿病で重大な合併症に「糖尿病性網膜症」がある。治療の進歩もあり、減少しているとはいえ、本症の予防には定期的なスクリーニングが重要であり、糖尿病を主に診療する内科医と眼科医の間の連携はうまく機能しているのだろうか。この疑問に対し、井花 庸子氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター)らの研究グループは、ナショナルデータベースを用いたレトロスペクティブ横断コホート研究「わが国の糖尿病患者における糖尿病網膜症スクリーニングのための内科と眼科の受診間の患者紹介フロー」を行い、その結果を報告した。Journal of Diabetes Investigation誌5月2日オンライン掲載。

蛋白同化ステロイドは使用中止後も長期にわたり健康にダメージを及ぼす

 多くの副作用のあることが明らかであるにもかかわらず、筋肉量の増加やパフォーマンスの向上という誘惑を断ち切れずに、蛋白同化ステロイドを利用しているボディービルダーやアスリートが存在する。しかし、たとえ同薬の使用を中止しても、健康への悪影響は長期間続くことを示す2件の研究結果が、第25回欧州内分泌学会(ECE2023、5月13~16日、トルコ・イスタンブール)で報告された。いずれも、コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のYeliz Bulut氏が発表した。同氏は、「ドーピングを行っている人々へのメッセージは明らかであり、それをやめることだ」と語っている。

日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。

歯科治療の中断が全身性疾患の悪化と有意に関連

 歯科治療の中断と、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、心・脳血管疾患、喘息という全身性慢性疾患の病状の悪化が有意に関連しているとする研究結果が報告された。近畿大学医学部歯科口腔外科の榎本明史氏らの研究によるもので、詳細は「British Dental Journal」に4月11日掲載された。  近年、口腔疾患、特に歯周病が糖尿病と互いに悪影響を及ぼしあうことが注目されている。その対策のために、歯科と内科の診療連携が進められている。また、糖尿病との関連に比べるとエビデンスは少ないながら、心・脳血管疾患や高血圧症なども、歯周病と関連のあることが報告されている。歯周病とそれらの全身性疾患は、どちらも治療の継続が大切な疾患であり、通院治療の中断が状態の悪化(歯周病の進行、血糖値や血圧などのコントロール不良)につながりやすい。榎本氏らは、歯科治療を中断することが全身性疾患の病状に影響を及ぼす可能性を想定して、以下の横断的研究を行った。