糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:33

有病率の高い欧州で小児1型糖尿病発症とコロナ感染の関連を調査(解説:栗原宏氏)

本研究で対象となっている小児1型糖尿病は、発症率に人種差があり白人に非常に多い。欧州全般に発症者は多く、とくに多い北欧諸国、カナダ、イタリアのサルディニアでは年間約30/10万人と日本(1.4~2.2/10万人)に比して10倍以上の違いがある。1歳ごろに膵島細胞への自己抗体が発生するピークがあり、10年以内に臨床的な糖尿病を発症する。自己抗体の発生原因は不明ながら、呼吸器系ウイルス感染が関与している可能性があるとされている。

早期静脈栄養なしのICU患者、厳格な血糖コントロールは有用か?/NEJM

 集中治療室(ICU)に入室した早期静脈栄養を受けていない重症患者では、非制限的で寛容な血糖コントロールと比較して厳格な血糖コントロールは、ICUでの治療を要した期間や死亡率に影響を及ぼさないことが、ベルギー・ルーベン・カトリック大学病院のJan Gunst氏らが実施した「TGC-Fast試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号に掲載された。  TGC-Fast試験は、ベルギーの2つの大学病院と1つの地区病院の11のICUで実施された医師主導型の無作為化対照比較試験であり、2018年9月~2022年8月に参加者のスクリーニングを行った(Research Foundation-Flandersなどの助成を受けた)。

肥満を合併したEFの保たれた心不全に対するGLP-1受容体作動薬の効果―STEP-HFpEF試験(解説:加藤貴雄氏)

週1回、2.4mgのセマグルチド皮下注射(GLP-1受容体作動薬)は、長期体重管理薬として承認されており、過体重または肥満の患者において大幅な体重減少をもたらし、心代謝リスク因子に良好な影響を及ぼすことがこれまでに示されている(Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989-1002., Kosiborod MN, et al. Diabetes Obes Metab. 2023;25:468-478.)。今回、ESC2023で発表され、NEJM誌に掲載されたSTEP-HFpEF試験は、BMI≧30.0kg/m2で心不全症状(NYHA class II-IV)があり、かつ、左室駆出率(LVEF)≧45%で、糖尿病の既往がない患者を対象に、週1回のセマグルチド(2.4mg)またはプラセボを52週間投与した二重盲検無作為割り付け試験である。

体重維持には朝に運動するのがベスト

 スリムな体型を保つには、タイミングこそが全てかもしれない。日常的に早朝に中等度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行う成人は、遅い時間帯にMVPAを行う成人に比べて太り過ぎや肥満になる可能性の低いことが、新たな研究で示された。米フランクリン・ピアス大学運動生理学分野のTongyu Ma氏らによるこの研究の詳細は、「Obesity」に9月4日掲載された。  Ma氏らはこの研究で、2003〜2004年と2005〜2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した5,285人のデータを用いて、MVPAを行う時間帯(早朝、昼間、夕方)と肥満(BMI、腹囲)との関連を検討した。参加者は7日連続で、起きている時間帯に腰部加速度計を装着するよう指示されており、週末を1日以上含む4日間(1日の装着時間が10時間以上)のデータがそろった場合を有効データとして用いた。このデータを基に参加者の身体活動(PA)のパターンを「朝」(642人)、「昼」(2,456人)、「夕方」(2,187人)の3群に分類した。

胸が大きい女性は運動意欲が低下しやすい?

 乳房サイズの大きい女性は、運動をあまり行っていないことを示すデータが報告された。フリンダース医療センター(オーストラリア)で乳房再建手術を行っているClaire Baxter氏らの研究結果であり、詳細は「JPRAS Open」9月号に掲載された。同氏らは、胸の大きい女性の運動不足が乳房縮小手術によって改善する可能性があるとしている。  この研究は、一般市民が自由参加可能なウォーキングやランニングなどの大会を世界各地で開催している団体「parkrun」を通じて募集された、乳がんの既往のない18歳以上の女性に対するアンケート調査として実施された。解析対象は1,987人で、居住地は英国が43.1%、オーストラリアが41.5%、南アフリカが14.3%を占めていた。平均年齢は46.5±12.2歳であり、BMIは26.0±5.5で、56人(2.8%)が乳房縮小手術を受け、26人(1.3%)が豊胸手術を受けていた。

死亡率と相関する肥満の指標、BMIではなく…

 BMIとは、ご存じのとおり肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数1)である。しかし、同じBMIを持っていても体組成と脂肪分布によって個人間でばらつきがあるため、“死亡リスクが最も低いBMI”については議論の余地がある。そこで、カナダ・Vascular and Stroke Research InstituteのIrfan Khan氏らが死亡率に最も強く相関する肥満に関する指数を検証するため、全死因死亡および原因別(がん、心血管疾患[CVD]、呼吸器疾患、またはその他原因)の死亡率とBMI、FMI(脂肪量指数)、WHR(ウエスト/ヒップ比、体型を「洋なし型」「リンゴ型」と判断する際に用いられる)2)の関連性を調査した。その結果、WHRはBMIに関係なく、死亡率と最も一貫性を示した。ただし、研究者らは「臨床上の推奨としては、質量と比較した脂肪分布に焦点を当てることを考慮する必要がある」としている。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。

肥満につながる炭水化物の種類は?/BMJ

 長期的な体重管理において、とくに過体重や肥満の人では、摂取する炭水化物の品質と供給源が潜在的に重要であることが、大規模前向きコホート試験で浮き彫りにされたという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYi Wan氏らが報告した。一方で、添加糖、砂糖入り飲料、精製穀物、果物、非でんぷん質の野菜は、体重コントロールへの取り組みを後押しする可能性も示唆された。体重の増加および肥満に果たす炭水化物の役割については議論の的になっている。これまで、炭水化物の摂取量の経時的変化と体重の長期的変化との関連を評価した研究は、ほとんど行われていなかった。BMJ誌2023年9月27日号掲載の報告。

世界共通語「ダイアベティス」へ「糖尿病」の呼称変更を目指す/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会

 9月22日、日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所])と日本糖尿病協会(理事長:清野 裕氏[関西電力病院])は都内でメディアセミナーを合同で開催した。セミナーでは、以前から活動が続けられている糖尿病のアドボカシー活動の現状や今後の展望、新たな呼称候補の発表などが語られた。  門脇 孝氏(IDF-WPR議長[虎の門病院])は、「糖尿病医療におけるアドボカシーの重要性」をテーマに講演した。糖尿病の病態解明や治療が進んでいる一方で、過去の負のイメージが社会に定着し、患者の不利益になっていることを指摘。

日本人は肥満が重症コロナ転帰不良のリスク因子でない?

 アジア人の肥満は、人工呼吸器を要する重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、転帰不良のリスク因子ではないことを示唆するデータが、国内多施設共同研究の結果として報告された。東京医科大学病院救命救急センターの下山京一郎氏らによる論文が、「Scientific Reports」に7月24日掲載された。  COVID-19パンデミックの比較的初期の段階で、肥満が重症化リスク因子の一つであると報告された。しかし重症化して人工呼吸器を要した患者において、肥満が予後に影響を与えるのかは未解明であった。また、アジア人においては大規模なコホート研究がされておらず、知見がより少ない。これを背景として下山氏らは、国内のCOVID-19治療に関するレジストリである「J-RECOVER」のデータを用いた過去起点コホート研究により、ICUに収容され人工呼吸器を要した患者の転帰に肥満が関与しているか否かを検討した。J-RECOVERは国内66施設が参加して実施され、2020年1~9月に退院したCOVID-19症例4,700件の診療報酬包括評価(DPC)データや治療転帰などの情報が登録されている。

夜型生活は糖尿病リスクを高める

 生活パターンが夜型の女性は、糖尿病になりやすいことを示すデータが報告された。生活習慣関連リスク因子の影響を調整しても、有意な差が認められるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月12日掲載された。  この研究は、米国で行われている看護師対象研究(Nurses’ Health Study II)のデータを用いて行われた。2009年時点で、がん、心血管疾患、糖尿病の既往歴のなかった45~62歳の女性看護師6万3,676人を2017年まで追跡。アンケートで把握したクロノタイプは、35%が朝型、11%が夜型で、その他は朝型でも夜型でもないと判定されていた。