2型糖尿病を伴わない過体重または肥満の成人において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチド50mgの68週間の1日1回経口投与は、平均15%の体重減少をもたらし、参加者の85%で臨床的に意義のある体重減少(5%以上)を達成し、安全性プロファイルは同薬2.4mgの皮下投与やGLP-1受容体作動薬クラス全体のデータとほぼ一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学のFilip K. Knop氏らが実施した「OASIS 1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月25日号に掲載された。
9ヵ国50施設の無作為化プラセボ対照比較試験
OASIS 1試験は、日本を含む9ヵ国50施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年9月13日~11月22日の期間に参加者の登録が行われた(Novo Nordiskの助成を受けた)。
対象は、年齢18歳以上(日本では20歳以上)、BMI値が30以上、またはBMI値27以上で少なくとも1つの体重関連の合併症または併存疾患(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症、心血管疾患)を有し、2型糖尿病のない患者であった。
被験者は、生活様式への介入に加え、セマグルチド(3mgから開始し、16週で維持用量の50mgまで増量)またはプラセボを、68週間1日1回経口投与する群に無作為に割り付けられた。治療終了後は7週間のフォローアップが行われた。
複合主要エンドポイントは、68週時の体重の変化率と5%以上の体重減少の達成であった。
3分の2で10%以上、半数で15%以上、3分の1で20%以上の減量
667例が登録され、セマグルチド群に334例、プラセボ群に333例が割り付けられた。全体の平均年齢は50(SD 13)歳で、485例(73%)が女性であった。平均体重は105.4kg、BMI値37.5、ウエスト周囲長113.6cmであり、494例(74%)が白人だった。
ベースラインから68週までの体重の平均変化率は、プラセボ群が-2.4%(平均変化値[SE]:0.5)であったのに対し、セマグルチド群は-15.1%(SE:0.5)と、減量効果が有意に優れた(推定治療群間差:-12.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-14.2~-11.3、p<0.0001)。
また、68週時における5%以上の体重減少の達成割合は、セマグルチド群が85%(269/317例)、プラセボ群は26%(76/295例)であり、セマグルチド群で有意に優れた(オッズ比[OR]:12.6、95%CI:8.5~18.7、p<0.0001)。
同様に、10%以上の体重減少はセマグルチド群が69%(220例)、プラセボ群は12%(35例)(OR:14.7、95%CI:9.6~22.6、p<0.0001)、15%以上はそれぞれ54%(170例)、6%(17例)(17.9、10.4~30.7、p<0.0001)、20%以上は34%(107例)、3%(8例)(18.5、8.8~38.9、p<0.0001)で達成され、いずれもセマグルチド群で良好だった。
有害事象は、セマグルチド群が92%(307/334例)、プラセボ群は86%(285/333例)で発現した。重篤な有害事象は、それぞれ10%(32例)、9%(29例)で、試験薬の投与中止をもたらした有害事象は、6%(19例)、4%(12例)で報告された。消化器系の有害事象(ほとんどが軽度または中等度)は、80%(268例)、46%(154例)で認められた。
著者は、「セマグルチド50mgの経口投与により、多くの参加者で臨床的に意義のある体重減少が誘導され、これに伴い心代謝リスク因子が改善することが示された。したがって、セマグルチド50mgの経口投与は、肥満治療の有効な選択肢となる可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)