消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:18

深刻化が懸念される抗がん剤のドラッグ・ロスについて議論/日本臨床腫瘍学会

 日本の医療界にとって深刻な課題となりえるドラッグ・ロス。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、会長企画シンポジウムとして取り上げられ、各方面の専門家による議論が交わされた。  国立がん研究センター中央病院先端医療科長の山本 昇氏は、ドラッグ・ロス解消を目的に欧米のEBPと交渉した体験談を交え発表した。  EBPとの交渉では、薬価制度に対する苦言はなかったものの、日本の医療環境や開発環境は知られていないことが明らかになった。開発対象の患者数がわからず、日本で薬を開発したらどれだけ売れるかイメージできていない。日本のがん統計データは日本語表記という問題がある。それだけでなく、EBPが求めるのは特定の遺伝子異常のがん患者数など、現状のがん統計データよりも細かい情報である。一方、日本は承認されると一定期間内に必ず保険償還されるという特徴は好感触であった。

ピロリ除菌で大腸がんリスクも低減/JCO

 Helicobacter pylori(H. pylori)陽性で除菌治療を受けた場合、治療を受けなかった陽性者と比較して、大腸がんの発症リスクと死亡リスクの両方が有意に低減したことを、米国・VA San Diego Healthcare SystemのShailja C. Shah氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年3月1日号掲載の報告。  近年、H. pylori感染と大腸がんのリスクとの間に正の関連があることが報告されている1)。Shah氏らの研究グループは、H. pylori感染と陽性者における除菌治療が、大腸がんの発症と死亡に及ぼす影響を調査するためにコホート研究を行った。  解析には、1999~2018年に退役軍人健康管理局でH. pylori検査を行った退役軍人のデータが用いられた。追跡調査は、大腸がんの発症、大腸がんまたは他の要因による死亡、2019年12月31日のいずれか早い日まで継続した。主要評価項目は大腸がんの発症率と死亡率であった。

論文執筆における生成AIの利用範囲はどこまでか?(解説:折笠秀樹氏)

ChatGPTなどの生成AI(GAIと呼ぶ)に関する、指針に関する調査報告です。ChatGPTは2022年に生まれ、急拡大したのは周知のとおりです。英文校正や翻訳作業の利用にとどまらず、論文執筆や図表作成にも使われ始めたようです。こうした生成AIの利用に関する指針が出てきたのは見聞きしていましたが、それに関する大々的な調査結果です。当然ながら、著名な雑誌ほど投稿規定などにいち早く盛り込んでいました。トップジャーナルではすでに87%に及んでいますが、全体で見るとまだ24%しかないようです。生成AIを共著者とすることは、95%以上で禁止しているようです。しかし、生成AIを利用すること自体を禁止しているわけではありません。その範囲はどこまでにすべきかについて、雑誌ごとにばらばらのようです。コンセンサスが得られていないということなのでしょう。

トラスツズマブ デルクステカン胃がん全例調査の中間解析/日本胃癌学会

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の胃がんにおける製造販売後調査(PMS)の初回投与後4ヵ月の中間解析の結果を第96回日本胃癌学会総会において近畿大学の川上 尚人氏が発表した。この発表はASCO-GI2024のアンコール発表である。  T-DXdは胃がん3次治療以降に使用される一方、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されている。日本においては、ILDのリスクを評価するため、すべてのT-DXd投与胃がん患者を対象に観察期間12ヵ月の多施設観察研究が行われている。日本胃癌学会では観察期間12ヵ月のうち最初の4ヵ月の中間成績が発表された。

がん治療中のその輸液、本当に必要ですか?/日本臨床腫瘍学会

 がん患者、とくに終末期の患者において最適な輸液量はどの程度なのか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「その治療、やり過ぎじゃないですか?」の中で、猪狩 智生氏(東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野)が、終末期がん患者における輸液の適切な用い方について、ガイドラインでの推奨や近年のエビデンスを交え講演した。  猪狩氏はまず実際の症例として、70代の膵頭部がん(StageIV)患者の事例を紹介した:1次治療(GEM+nab-PTX)後にSDとなったものの、8ヵ月後に腹痛、吐き気で緊急入院し、がん性腹膜炎、麻痺性イレウスと診断。中心静脈確保、絶食補液管理(1日2,000mL)となり、腹痛に対しオピオイドを開始したものの症状コントロール困難となった。

日本人胃がんの薬物療法研究の最新情報/日本胃癌学会

 新薬の登場で変化する胃がん薬物療法の国内研究の最新情報が第96回日本胃癌学会総会で報告された。  ペムブロリズマブと化学療法の併用は日本人胃・食道胃接合部がんの1次治療においてもグローバルと同様の結果を示した。  切除不能または転移を有するHER2陰性の胃・食道胃接合部腺がん1次治療で良好な結果を示したペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-859試験における日本人サブセットの結果が示された。日本人サブセットは101例で、ペムブロリズマブ+化学療法群は48例、コントロールとなる化学療法群は53例であった。

認知症の診断、実は肝硬変の可能性も?

 高齢化した米国の退役軍人を対象とした新たな研究で、認知症と診断された人の10人に1人は、実際には肝硬変により脳に障害が生じている可能性のあることが示された。米リッチモンドVA医療センターのJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に1月31日掲載された。  肝硬変は、肝臓の肝組織が徐々に瘢痕化して機能障害を起こすもので、その発症要因には、年齢、男性の性別、アルコール性肝障害、肝炎ウイルス、うっ血性心不全など多数ある。肝硬変の症状の一つである肝性脳症は、本来、肝臓で分解されるはずのアンモニアが、肝硬変や肝臓がんなどによる肝機能の低下が原因で十分に分解されず、血液に蓄積して脳に達し、脳の機能が低下する病態を指す。

カペシタビンによる手足症候群は外用ジクロフェナクで予防?/JCO

 カペシタビンは、乳がんや消化管がんの治療に用いられるが、頻度の高い副作用の1つに手足症候群があり、減量が必要となることがある。ソラフェニブによる手足症候群の予防には尿素クリームが有用とされているが、カペシタビンによる手足症候群の予防への有用性は明らかになっていない。また、セレコキシブは手足症候群の予防効果があるが長期連用には副作用の懸念が存在する。そこで、全インド医科大学のAkhil Santhosh氏らが、外用ジクロフェナクの手足症候群予防効果を検証する第III相無作為化比較試験を実施した。その結果、外用ジクロフェナクはプラセボと比較して、カペシタビンによる手足症候群を有意に抑制することが示された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年2月27日号で報告された。

便潜血検査でのがん検診、有効性を評価~38万人を14年間追跡

 便潜血検査を用いた大腸がん定期検診で、大腸がん死亡率をどれくらい低下させられるのか。スウェーデン・SodersjukhusetのJohannes Blom氏らが、便潜血検査による大腸がん定期検診時期による大腸がん死亡率を、前向きコホート研究で検討した。その結果、60~69歳の検診対象住民のうち、最初の5年間に検診案内が届いた人は、それより遅く届いた人や届かなかった人に比べて、14年間の追跡期間において大腸がん死亡率が14%減少したことがわかった。JAMA Network Open誌2024年2月27日号に掲載。  本試験は、スウェーデン・ストックホルム-ゴットランド地域の1938~54年生まれの検診対象者(60~69歳)を対象に、2008年1月1日~2021年12月31日に実施された。住民は2年ごとの便潜血検査(グアヤック法)による大腸がん検診に早期(2008~12年)または後期(2013~15年)に案内されるか、またはまったく案内されておらず、早期に案内された大腸がん人を曝露群、後期に案内された人または案内されなかった人を対照群とした。主要評価項目は大腸がん死亡率とした。超過死亡数は、大腸がんに罹患した人の全死因死亡数から、CRCに罹患しなかった場合に予想される死亡数を引いた。また、死亡数と人年に基づくポアソン回帰分析を用いて、死亡の発生率比(RR)と95%信頼区間(CI)を追跡年数と到達年齢で調整し推定した。

医学生に腫瘍内科の魅力を!学会が教育プログラムを作成/日本臨床腫瘍学会

 国内における医師の診療科の偏在は長らく問題となっている。平均勤務時間が長い、訴訟リスクが高いなどの理由から、外科・産婦人科などが医学生・若手医師から敬遠されて減少傾向となり、その反面、形成外科・放射線科などが増加傾向にある。  腫瘍内科をはじめとするがん関連の診療科も、学生時代に接点が少ない、専門性やキャリアの描き方が見えづらいなどの理由から、入局者数、専門医数、学会会員数などの伸びに課題を抱えている。こうした状況を背景として、日本臨床腫瘍学会(JSMO)の教育企画部会は、全国の大学向けに腫瘍学の教育プログラムを提供するプロジェクトをスタートした。