消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:36

γ-GTPが高い、アルコール性肝障害の可能性は?

 大塚製薬主催のプレスセミナー(5月22日開催)において、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授)が「肝機能異常を指摘されたときの対処法」について講演し、アルコール性肝障害を疑うポイントやかかりつけ患者に対する対応法ついて解説を行った。  肝機能障害は“人間ドック受診者の3人に1人が指摘を受ける項目”と言われており、臓器治療としては断酒治療が最も有効だが、ハードルが高い患者さんには「断酒をいきなり強く求めると治療が続かないことが多く、その場合まずは減酒から始める」と吉治氏は話した。医学界では各学会が「熊本宣言 HbA1c7%未満」「stop-CKD eGFR60未満」などのスローガンを掲げて市民に対して疾患啓発を行っている一方で、肝機能については提言が存在しなかった。そこで、日本肝臓学会は6月15、16日に開催される『第59回日本肝臓学会総会』にて“Stop CLD(Chronic liver disease) ALT over 30U/L”(ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診しましょう)を『奈良宣言』として掲げることにしたという。この数値の根拠ついて「この値は特定健診基準や日本人間ドック協会のALTの保健指導判定値であり、日本のみならず脂肪肝がとくに問題になっている米国でも医師への相談基準」とコメントした。

切除不能肝細胞がんの1次治療、STRIDEレジメンでOS延長/AZ

 2023年4月4日(木)にアストラゼネカ株式会社主催のプレスセミナーが開催され、肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる可能性について、千葉大学大学院医学研究院消化器内科学 教授の加藤 直也氏が語った。加藤氏は、「肝細胞がんは肝予備能を維持し、悪化させないことが大切。デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と2023年3月に薬価基準収載されたトレメリムマブ(製品名:イジュド)を併用するSTRIDEレジメンは肝臓に負担をかけにくく、理にかなっているのではないか」と述べた。外科的な治療が不可能なケースの多い肝細胞がんだが、薬物治療の新たな局面を迎え、長期生存率の向上が期待できそうだ。

局所進行直腸がん、術前FOLFOX単独は術前化学放射線療法に非劣性(PROSPECT)/ASCO2023

 局所進行直腸がんの標準治療は、術前の骨盤放射線照射とフッ化ピリミジン系抗がん剤による化学療法(化学放射線療法)である。PROSPECT(Alliance N1048)試験は、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンを用いた術前化学療法(FOLFOX)が術前化学放射線療法の代わりに使用できるかを検討した第III相試験。本試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションとして米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのDeborah Schrag氏が発表し、同日にNEJM誌に掲載された。

大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。  コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。

ウパダシチニブ、中等~重症クローン病に有効/NEJM

 中等症~重症のクローン病患者において、ウパダシチニブによる寛解導入療法および維持療法はプラセボと比較し優れることが、43ヵ国277施設で実施された第III相臨床開発プログラム(2件の寛解導入療法試験「U-EXCEL試験」「U-EXCEED試験」と1件の維持療法試験「U-ENDURE試験」)の結果で示された。米国・Mayo Clinic College of Medicine and ScienceのEdward V. Loftus氏らが報告した。ウパダシチニブは経口JAK阻害薬で、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、関節症性乾癬、アトピー性皮膚炎および強直性脊椎炎に対して承認されており、クローン病治療薬としても開発中であった。NEJM誌2023年5月25日号掲載の報告。

手術不能の胃がん・食道胃接合部がんに対する第1次選択療法の変革(解説:上村直実氏)

従来の標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬(PD-L1阻害薬)ニポルマブの併用療法がHER2陰性の進行胃がんと食道胃接合部がんに対する1次治療の有用性が2021年にLancet誌にて報告され、現在では保険収載されて医療現場で実際に使用されている。さらに、FOLFOX療法など従来の化学療法にPD-L1阻害薬のみでなく、さまざまな分子標的薬の上乗せ効果が注目されている。今回、HER2陰性かつタイトジャンクション分子の一部で胃粘膜上皮層のバリア機能や極性の調整に関与しているCLDN18.2陽性の切除不能な進行胃がんと食道胃接合部がんに対してCLDN18.2を標的としたモノクローナル抗体であるzolbetuximabをmFOLFOX6に追加した際の上乗せ効果を示した研究結果が2023年4月のLancet誌に報告された。この研究は日本を含む20ヵ国215施設が参画した国際共同RCTであり、論文の筆頭著者は日本の研究者である。

がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。  今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。

膵頭十二指腸切除後の手術部位感染予防、TAZ/PIPCが有用/JAMA

 適応症を問わず、開腹による膵頭十二指腸切除術後の手術部位感染(SSI)の予防において、セフォキシチン(国内販売中止)と比較して、広域スペクトラム抗菌薬ピペラシリン・タゾバクタムは、術後30日の時点でのSSIの発生率を有意に抑制し、術後の敗血症や膵液瘻の発生頻度も低いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMichael I. D'Angelica氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月9日号に掲載された。  本研究は、レジストリ連携の実践的な非盲検多施設無作為化第III相試験であり、2017年11月~2021年8月の期間に、米国とカナダの26施設(外科医86人)で患者の登録が行われた(米国NIH/NCIがんセンター研究支援助成などの助成を受けた)。

既治療大腸がん、FTD/TPIへのベバシズマブ上乗せでOS延長/NEJM

 切除不能な進行・再発大腸がん患者において、トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ併用療法はFTD/TPI単独療法と比較して、全生存期間(OS)を延長することが確認された。オーストリア・ウィーン医科大学のGerald W. Prager氏らが、13ヵ国87施設で実施された第III相無作為化非盲検実薬対照比較試験「SUNLIGHT試験」の結果を報告した。これまでの第III相試験において、FTD/TPIは転移のある大腸がん患者のOSを延長することが示されていた。また、第II相単群および無作為化試験の予備データから、ベバシズマブにFTD/TPIを追加することで生存期間が延長する可能性が示唆されていた。NEJM誌2023年5月4日号掲載の報告。

新型コロナとがん併発、死亡リスクに性差はあるか

 がん患者と非がん患者のCOVID-19による死亡リスクを比較した研究はあるが、そこに性差はあるのか。米国・南カリフォルニア大学・産婦人科腫瘍部門の松尾 高司氏らによる大規模コホート研究の結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。  研究者らは48州およびコロンビア特別区の参加病院によるHealthcare Cost and Utilization ProjectのNational Inpatient Sample(米国人口の95%以上の退院データをカバー)を用い、2020年4月~12月にCOVID-19感染の診断を受けて入院した患者を、世界保健機関(WHO)の分類コードによって特定した。データ解析は2022年11月~2023年1月にかけて行い、人口特性、併存疾患、および病院パラメータで層別化したうえで性別、がん種別にCOVID-19院内症例の死亡率を評価した。