消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:39

男性、ピロリ菌感染などの胆石リスク因子が明らかに―静岡県内60万人超の縦断的解析

 日本人を対象とする大規模な縦断的研究から、胆石のリスク因子が報告された。ピロリ菌感染などの従来あまり知られていなかった因子が、胆石発症に関連していることや、女性よりも男性の方がハイリスクであることなどが明らかになったという。静岡社会健康医学大学院大学の東園和哉氏、中谷英仁氏、藤本修平氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に12月30日掲載された。  胆のうや胆管にできる結石「胆石」は、詳しい検査をすると成人の10人に1人に見つかるとされるほど多いもので、大半は無症状。ただし、膵炎や胆道閉塞、胆のうがんのリスクと関連していることが知られており、また感染を引き起こして強い痛みや発熱が生じ緊急手術が必要になったり、時に命にかかわることもある。よって、仮に修正可能な胆石のリスク因子があるのなら、それらに対して予防的に介入することのメリットは少なくない。しかしこれまでのところ、胆石のリスク因子に関する日本人での大規模研究は実施されておらず詳細は不明であり、胆石予防のための積極的介入を行うという公衆衛生対策もなされていない。

潰瘍性大腸炎の寛解導入および維持療法におけるetrasimodの有用性(解説:上村直実氏)

潰瘍性大腸炎(UC)の治療に関して、基準薬である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤に変化はないが、有害事象が危惧されているステロイドは総使用量と使用期間が可能な限り控えられるようになり、新たな生物学的製剤や低分子化合物の分子標的治療が主流になりつつある。抗TNF-α抗体薬、インターロイキン阻害薬、インテグリン阻害薬、ヤヌスキナーゼ阻害薬などの開発により難治性のUCが次第に少なくなってきているものの、いまだに十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される重症患者も少なくなく、新たな治療薬の追加が求められている。

低炭水化物ダイエットはメタボになりやすい?

 炭水化物の摂取量について、推奨量を下回るとメタボリックシンドローム(MetS)の発症が低下するかどうか、現時点では関係性を示す一貫した証拠はない。今回、米国・オハイオ州立大学のDakota Dustin氏らが炭水化物の摂取量とMetSの有病率について研究した結果、炭水化物の推奨量を満たしている人よりも下回っている人のほうがMetSの発症率が高いことが明らかになった。Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics誌オンライン版2023年3月23日号掲載の報告。

ピロリ菌感染、がん治療には良い影響か~大幸研究

 Helicobacter pylori(HP)感染は胃がんの原因と考えられているが、逆にHP陽性の進行胃がん患者の生存率がHP陰性患者よりも高いことがさまざまな国の研究で報告されている。また以前の研究から、HP感染により潜在的な抗腫瘍免疫が維持されることにより、生存期間が延長する可能性が示唆されている。今回、岩手医科大学医歯薬総合研究所の西塚 哲氏らが大幸研究コホートの前向き研究で、すべてのがんの発生率および死亡率を検討した結果、HP陽性者の全がん発生率は陰性者より有意に高かったが、全がん死亡率は同等だった。著者らは、HP感染によるがん診断後の死亡リスク低下の可能性を考察している。PLOS Global Public Health誌2023年2月8日号に掲載。

最低価格制限で、飲酒による死亡・入院が減少/Lancet

 スコットランドで販売されるアルコール飲料は、2018年5月1日以降、法律で1単位(純アルコール10mLまたは8g)当たりの最低単位価格(MUP)が0.5ポンドに設定されている。これにより販売量が3%減少したことが先行研究で確認されているが、今回、英国・スコットランド公衆衛生局(Public Health Scotland)のGrant M. A. Wyper氏らは、MUP法の施行により、アルコール摂取に起因する死亡と入院が大幅に減少し、その効果はとくに社会経済的に最も恵まれない層で顕著に高いことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年3月21日号に掲載された。

アナモレリン投与、日本人5,000例のリアルワールドデータ/日本臨床腫瘍学会

 グレリン様作用薬アナモレリン(商品名:エドルミズ)は、2021年1月に非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がん、膵臓がん、大腸がんに伴う悪液質治療として国内で保険承認された。2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)において、室 圭氏 (愛知県がんセンター 副院長/薬物療法部長)が国内の患者約5,000例を対象とした市販後全例調査(PMS)の中間解析結果を発表した。

DEEPER試験の追加調査でm-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、本試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。

難治転移大腸がんへのfruquintinib、日本人患者にも有用/日本臨床腫瘍学会

 転移のある大腸がん患者に対する血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR) -1、2、3を標的とするfruquintinibの有効性を示したFRESCO-2試験。本試験における日本人サブグループの解析結果を、2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、国立がん研究センター東病院の小谷 大輔氏が発表した。  FRESCO-2試験は米国、欧州、オーストラリア、日本で実施された国際共同第III相試験であり、fruquintinib+最善の支持療法(BSC)またはプラセボ+BSCに2:1で無作為に割り付けられた。fruquintinib(F群)またはプラセボ(P群)を1日1回投与(5mgを28日周期で3週間投与し、1週間休薬)した。主要な患者選択基準には、標準化学療法が不応または不耐であること、抗VEGF 療法歴を有すること、RAS野生型の場合は抗EGFR療法歴を有すること、適応がある場合は免疫チェックポイント阻害薬またはBRAF阻害薬治療歴を有すること、またトリフルリジン/チピラシルとレゴラフェニブの両方もしくはいずれかの治療歴を有することが含まれた。

ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、ガイドライン(以下、GL)のポイントについて発表された。

HER2・リキッド検査追加「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス」改訂/日本臨床腫瘍学会

 2023年3月、「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス:第5版」が刊行され、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)上で改訂のポイントが発表された。  最初に坂東 英明氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科)が全体的な説明を行った。  大腸がんにおける遺伝子検査は2010年にKRAS変異検査が登場したことを契機に、2018年にはRASKET-B(RAS/BRAF変異検査)、2020年には血液を用いたRAS変異検査が保険適用となり、2022年にはHER2検査(免疫染色、FISH)、MMR検査(免疫染色)、そして2023年にはBRAF V600E検査(免疫染色)が保険適用となるなど、目まぐるしく新たな検査が登場している。