総合診療科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

高齢がん患者、米国における診療の工夫

 マサチューセッツ総合病院緩和老年医療科の樋口 雅也氏がナビゲーターとなり、医師、薬剤師、看護師などさまざまな職種と意見交換をしながら臨床に直結する高齢者診療の知識を学べる「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」。がんと老年医学をテーマにした回では、ゲストとしてダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐氏が参加し、米国における高齢者のがん診療の実際について紹介した。

小児の急性副鼻腔炎、鼻汁の色で判断せず細菌検査を/JAMA

 急性副鼻腔炎の小児において、鼻咽頭から細菌が検出されなかった患児は検出された患児に比べ抗菌薬による治療効果が有意に低く、その有意差を鼻汁の色では認められなかったことが、米国・ピッツバーグ大学のNader Shaikh氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で示された。急性副鼻腔炎とウイルス性上気道感染症の症状の大半は見分けることができない。そのため小児の中には、急性副鼻腔炎と診断されて抗菌薬による治療を受けても有益性がない集団が存在することが示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「診察時に特異的な細菌検査をすることが、急性副鼻腔炎の小児における抗菌薬の不適切使用を減らす戦略となりうる」とまとめている。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。

医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に

 肝機能検査として血液検査で汎用されるALT値。今後、これが30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要となる―。6月に開催された第59回日本肝臓学会総会にて、ALT>30を指標とする『奈良宣言』が公表された。これは、かかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に、さまざまなエビデンスに基づいて設定された。記者会見では吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授/日本肝臓学会理事)らが本宣言の背景や目的を説明しており、今回ケアネットでは日本肝臓学会理事で本宣言での特別広報委員を務める江口 有一郎氏(江口病院 ロコメディカル総合研究所 所長)に独自取材を行った。

ワインは心血管に良い影響?22試験のメタ解析

 アルコール摂取と心血管イベントにはJ字型、U字型の関連があるという報告もあり、多量のアルコール摂取は心血管に悪影響を及ぼす一方、少量であれば心血管に良い影響を及ぼす可能性が指摘されているが、結果は一貫していない。また、ワインの摂取が心血管の健康に及ぼす効果についても、意見が分かれている。そこで、スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らは、ワインの摂取量と心血管イベントとの関連について、システマティックレビューおよび22試験のメタ解析を実施した。その結果、ワインの摂取は、心血管イベントのリスク低下と関連していた。また、年齢や性別、追跡期間、喫煙の有無はこの関連に影響を及ぼさなかった。Nutrients誌2023年6月17日号の報告。

減量効果が大きいのは?時間制限食vs.カロリー制限食

 摂取カロリーを制限しない時間制限食は、人気のある減量法となっているが、その有効性のエビデンスは限られている。とくに、長期の影響については明らかになっていない。そこで、米国・イリノイ大学シカゴ校のShuhao Lin氏らは無作為化比較試験を実施し、時間制限食の効果について、カロリー制限食や食事制限なしと比較した。その結果、時間制限食とカロリー制限食はいずれも体重を減少させたが、両者に有意差は認められなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年6月27日号で報告された。

筋肉の霜降り化は死亡リスクを上昇させる?

 内臓脂肪が健康に良くないのは周知の事実だが、それよりもたちが悪い脂肪があるようだ。それは、筋肉内に蓄積する脂肪(筋内脂肪)だ。本来なら脂肪が蓄積されないはずの筋内に脂肪が蓄積している状態〔myosteatosis(骨格筋異所性脂肪化)〕の人では、死亡リスクが上昇し、その上昇の程度は内臓脂肪型肥満や脂肪肝の人でのリスク上昇よりも大きいとの研究結果が報告された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部の消化器画像診断主任であるPerry Pickhardt氏らによる研究で、「Radiology」に5月16日掲載された。

日本人の炭水化物摂取量と死亡リスクは男女で逆の関係に~J-MICC研究

 これまで、炭水化物や脂質の摂取量と死亡リスクの関連を検討した研究において、一貫した結果が得られていない。そこで、田村 高志氏(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野 講師)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)に参加した8万1,333人を対象として、炭水化物、脂質の摂取量と死亡との長期的な関連について検討した。その結果、男性では炭水化物の摂取量が少ないと死亡リスクが高くなり、女性では炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高くなる傾向がみられた。本研究結果は、The Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月2日号に掲載された。

LDL-Cが高い人ほど心筋梗塞の予後良好!? 

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)高値であると、冠動脈疾患(CVD)の発症や死亡のリスクが高いことが知られている。しかし、急性冠症候群患者のLDL-C低値が死亡リスクを上昇させることを示唆する観察研究の結果が複数報告されており、「LDL-Cパラドックス」と呼ばれている。そこで、スウェーデン・ウプサラ大学のJessica Schubert氏らの研究グループは、初発の心筋梗塞で入院した患者のうち、スタチン未使用であった6万3,168例を対象としたデータベース研究を実施した。その結果、LDL-C高値の患者は死亡リスクが低く、非心血管疾患による入院リスクも低かった。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2023年5月31日号に掲載された。

γ-GTPが高い、アルコール性肝障害の可能性は?

 大塚製薬主催のプレスセミナー(5月22日開催)において、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授)が「肝機能異常を指摘されたときの対処法」について講演し、アルコール性肝障害を疑うポイントやかかりつけ患者に対する対応法ついて解説を行った。  肝機能障害は“人間ドック受診者の3人に1人が指摘を受ける項目”と言われており、臓器治療としては断酒治療が最も有効だが、ハードルが高い患者さんには「断酒をいきなり強く求めると治療が続かないことが多く、その場合まずは減酒から始める」と吉治氏は話した。医学界では各学会が「熊本宣言 HbA1c7%未満」「stop-CKD eGFR60未満」などのスローガンを掲げて市民に対して疾患啓発を行っている一方で、肝機能については提言が存在しなかった。そこで、日本肝臓学会は6月15、16日に開催される『第59回日本肝臓学会総会』にて“Stop CLD(Chronic liver disease) ALT over 30U/L”(ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診しましょう)を『奈良宣言』として掲げることにしたという。この数値の根拠ついて「この値は特定健診基準や日本人間ドック協会のALTの保健指導判定値であり、日本のみならず脂肪肝がとくに問題になっている米国でも医師への相談基準」とコメントした。

日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。